ベスト・フレンズ・ウェディング(1997年アメリカ)

My Best Friend's Wedding

かつて付き合っていた恋人が、大富豪の若い娘と結婚することになったことをキッカケに、
彼らの結婚式の付添人に指名された雑誌社勤務のヒロインが、なんとしてでも結婚を阻止しようとしながらも、
様々な心の揺れ動きがある中で、ゲイの友人も絡んでドタバタ騒動に発展する様子を描いたラブ・コメディ。

当時、ハリウッドでも最高クラスのギャラを受け取っていたほど、
人気絶頂にあったジュリア・ロバーツと、ハリウッドでも人気急上昇の期待される存在だった、
キャメロン・ディアスが共演したことで大きな話題となった作品で、日本でもそこそこヒットしていたはずです。

まぁ、そこまで悪い出来の映画ではないけれども・・・
どこか食い足りないところがあるというか、どこか物足りない部分が残る映画になっている気がします。

確かにまだ20代の若々しさを残すジュリア・ロバーツと、若さ全開でぶつかってくるキャメロン・ディアスの
“対決”は悪くないし、見応えもあるんだけれども、正直言って、やりようによっては、もっと面白くできたと思うのです。

ルパート・エベレット演じるヒロインのゲイの友人の存在なんかは強烈だし、
映画の中盤にもあるように、ヒロインを救いに結婚式前々日に開いているパーティーに飛び入り参加して、
ヒロインの婚約者のフリをして振る舞う姿なんかも面白くて、おそらく本作の中では最もインパクトある存在だろう。
彼があまりに強烈なインパクトであったために、ヒロインが狙う男であるダーモット・マローニーが完全に霞んでいる。

そう、ダーモット・マローニーにしても、とっても大きな役回りで、
本来的にはもっと目立つべき役柄だったんだけれども、何故か光り輝く存在というほどではなかった。
それはダーモット・マローニー自身にも問題がなかったわけでもないのだろうけど、これはディレクターも悪い。

本来なら、もっと彼を磨き上げなければならなかったと思うし、
もっとキチッと見せ場を作ってあげて欲しかったですね。これでは、まるでジュリア・ロバーツの引き立て役のようだ。

いや、事実、そうだったのかもしれません。あくまでジュリア・ロバーツの方が実績はありましたから。
しかしながら、そういう風に彼を引き立て役に回してしまったがために、視点含めて画一的な映画になっています。
そのせいか、恋愛映画として見てしまうと、どうにも魅力に欠ける内容になっていると言っても過言ではありません。
クドいようですが...映画の出来は酷く悪いというほどではないのですが、本来的な目的を見失ったようでした。

監督のP・J・ホーガンはオーストラリア出身の映像作家で、
94年に『ミュリエルの結婚』を故国オーストラリアで撮って、これが全世界的に高く評価されて、
ハリウッドに渡ってきて、いきなり本作のような規模の大きな企画を与えられただけに、
おそらく評価は高かったと思われるのですが、この手のジャンルのノウハウがあるブレーンを付けるべきでしたね。

P・J・ホーガンもよく頑張っているとは思うのですが、これは完全にキャストに助けられた映画だと思う。
勿論、映画に於いてキャスティングって凄く重要なのですが、作り手としてはこれに助けられてはいけない。
そういった“土台”に最高の仕事をしてもらうために、どう工夫するかがディレクターの最も大きな仕事なのだから。

P・J・ホーガンは本作以降もハリウッドで仕事しているようですが、寡作な人になっているのが気がかりですね。

ちなみに、おそらく本作で最も有名なシーンだと思いますが、
ヒロインと花婿を取り合う若い富豪の娘を演じたキャメロン・ディアスがヒロインの嫌がらせに近い“振り”で、
音痴でカラオケ嫌いだというのに、半ば強制的にカラオケを歌わなければならなくなって、
大勢の前で歌うシーンがあって、これが“地”でやっているのか、芝居なのかよく分からないけど、ホントに強烈(笑)。

この時期のキャメロン・ディアスも、まるでハリウッド女優の世代交代と言わんばかりに、
ジュリア・ロバーツに対抗しているかのようなぐらい、勢いがあって良かったですね。
以前、何かのインタビューで似たようなことを言っていたのを読んだ記憶がありますが、
やはり彼女自身、当時、モデルから女優デビューを果たして、容姿だけで見られたくないという意地があったのだろう。

こういうラブコメでは、やはり女優としての力量が求められる面がありますからねぇ。
当時のキャメロン・ディアスにとって本作への出演は、とても大きな挑戦であったことは否めなかったはず。
それを考慮すると、本作でのキャメロン・ディアスの奮闘というのは、色々な意味でポイントであったと思いますね。

彼女が頑張ったというのもありますけど、
結果的には本作がジュリア・ロバーツとキャメロン・ディアスの世代交代を象徴する一作だったと思う。
キャメロン・ディアスはラブコメに注力していたわけではないけれども、ジュリア・ロバーツは明らかに
女優として新たな境地を開拓したがっていたし、本作あたりを境にそういった作品への出演を減らしていきました。
対照的にキャメロン・ディアスはハリウッド女優として世界的に人気が出て、スターダムを駆け上がっていきます。

ちなみにヒロインの友人でゲイのジョージを演じたルパート・エベレットは
イギリス出身の役者さんですが、彼は実生活でもゲイであることをカミングアウトしています。

まぁ、よくあるタイプのストーリーではあったけど、
強いて言えば、映画の終盤に逃げる花嫁を追いかける花婿、そしてその花婿を追いかけるヒロインという
複雑な構図をホントに真正面から描いたというのは面白い。こういうことをストレートに描いた映画は、ありそうで無い。

本音を言えば、こういうシーンこそ、もっとコミカルに描いてドタバタ劇にしても良かったと思う。
本作の作り手は、映画の基本をあくまで恋愛映画というところに重きを置き過ぎたようで、
もう一つの側面となるべきコメディ映画としての魅力に欠ける内容になってしまったのが物足りない。
結婚をテーマにした映画でありがちな、親戚とのトラブルを一切描こうとしなかっただけに、
ヒロインと彼女のゲイの友人ジョージの存在や、こういったドタバタ劇にできそうなところで、観客の笑いをとらないと
コメディ映画として全く盛り上がる部分なく映画が終わってしまったのが、とっても勿体ないと思いますね。

おそらく本作の物足りなさとは、そういったコメディ部分でのイマイチさが
完全に足を引っ張ってしまったことに原因があるのではないかと思いますね。

(上映時間104分)

私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点

監督 P・J・ホーガン
製作 ジェリー・ザッカー
    ロナルド・バス
脚本 ロナルド・バス
撮影 ラズロ・コヴァックス
音楽 ジェームズ・ニュートン・ハワード
出演 ジュリア・ロバーツ
    ダーモット・マローニー
    キャメロン・ディアス
    ルパート・エベレット
    フィリップ・ボスコ
    スーザン・サリバン
    M・エメット・ウォルシュ
    レイチェル・グリフィス
    キャリー・プレストン
    クリス・マスターソン
    ポール・ジアマッティ

1997年度アカデミー音楽賞<オリジナル・ミュージカル/コメディ部門>(ジェームズ・ニュートン・ハワード) ノミネート