理想の恋人.com(2005年アメリカ)

Must Love Dogs

02年に『運命の女』で再びブレイクしたダイアン・レインを主演に据えた、
中年期を迎えたバツイチ女性が、諦めずに再び恋愛しようとする姿を描いたラブ・コメディ。

正直言って、そこまで楽しい映画というわけではなかったのですが、
相変わらずダイアン・レインとジョン・キューザックは上手いですね。実に安定感ある良い芝居です。
ハッキリ言って、この映画はこの2人をキャスティングできた時点で、ある程度の出来は確約されたようなもの。
残りは、本作の作り手の仕事だったと思うのですが、本作は残念ながら作り手の仕事がイマイチだったかな。

監督のゲイリー・デビッド・ゴールドバーグは89年にジャック・レモン主演で『晩秋』を撮った映像作家ですが、
『晩秋』ではもうチョット上手い映画に仕立てることができていたのですが、本作はそこまで上手くありませんね。

映画はバツイチ女性が、家族から何とか再婚するように仕向けられ、
何故か出会い系サイトに勝手に自分の情報を登録され、そこで申し込みがあった、
複数の男性とデートするうちに、犬好きな素敵なバツイチ男性と出会い、幾多の困難を乗り越えて、
再び幸せをつかもうとする姿を描いておりますが、ダイアン・レインが珍しく“負け組”を演じています。

チョット気になるのは、この役柄にダイアン・レインが微妙だったことですかね。
そりゃ、前述したようにダイアン・レインは良い女優さんで、キャスティングの勝利な映画なんですよ。

この時期は『運命の女』での好評を経て、ダイアン・レインがハリウッド女優として再評価される
気運が高まっていた時期でしたから、本作のような企画も数多く存在していたようなのですが、
個人的には『運命の女』では、中年女性の危うい浮気心を持ち前のセクシーな魅力を活かした作品だっただけに、
確かに浮気は良くないけれども、自分よりもかなり若い男と浮気を楽しめるという、ある種、“勝ち組”になったような
気分でいる中年女性を演じていただけに、本作のように“負け組”であることを自認して開き直った役柄とは、
あまりに不釣合いな気がして、どうも僕にはシックリ来なかった部分があるのは、事実ですね。

まぁこの映画では、何故か出会い系サイトが美化されて描かれているのですが、
お世辞にも出会い系サイトには、当然、様々な危険が伴い、過去にも数多くの犯罪が発生しておりますから、
現実世界では、本作のように甘い話しはありませんし、こういう時代だからこそ、僕は美化すべきではないと思う。

おそらく、この映画のヒロインはそれだけ焦っていたことは否定できないと思うのですが、
家族が勝手に出会い系サイトに自分の情報を登録していたことを知って激怒することなく、
易々とデートに行ってしまうあたり、彼女自身もまんざらではなかったということなのでしょうが(笑)、
そう思ってみると、出会い系サイトの落とし穴を疑いもせず、一喜一憂しちゃうなんて、ティーンみたいだ(笑)。
(この映画が公開された、05年にあっても、出会い系サイトの危険性は問題視されていたはずだが・・・)

少しだけではありますが、本作でもストッカード・チャニング演じるヒロインの父親のガールフレンドが
実は複数の出会い系サイトに登録していて、年齢を偽って登録していたことにより、
10代の少年が実際に家に来てしまったという、ある意味で驚愕のエピソードも紹介されておりますが、
これはこれで出会い系サイトのような、お手軽な出会いの場の落とし穴を描いていると言っていいのかもしれません。

まぁ良く解釈すれば、それだけヒロインが自分の年齢も考えて、
新たな恋愛に踏み出せない現状に焦り、いち早く幸せを取り戻すことに必死だったわけで、
そういう愛に必死な中年女性をダイアン・レインは実に活き活きと演じていると言っていいのかもしれません。

クレア・クックの原作は全米でベストセラーだったそうなのですが、
原作ではこの出会い系サイトのことを、どう扱っていたのか気になる部分ではありますがね。。。

映画の前半で描かれるのですが、散々、出会い系サイトで自分のことをPRして、
良さそうな男性とデートすることになったのに、いざ約束のレストランへ行ってみたら父親だったというのは面白い。
(ちなみにヒロインの父親を演じたクリストファー・プラマーは、出番は少ないけど、印象的な好演と言っていい)

それまでは想像もつかなかったし、まったく見たことがないぐらい、
母を失った父親が、新たな恋愛を見つけるのに、積極的な姿勢にヒロインが刺激を受けるというのもユニークだし、
その父親も何人も女性をクドいて、実は女性にモテモテだったというのも、なかなか面白い。

まぁ『晩秋』と本作に共通して言えるように感じるのですが、
ゲイリー・デビッド・ゴールドバーグにとっては、老年期の生き方というのが一つのテーマなのかもしれませんね。

できることであれば、もう少し主人公カップルの恋愛はジックリ描いて欲しかったなぁ。
上映時間が短い作品であるがゆえ、ある程度の制約を強いられた企画だったのかもしれませんが、
やはり男女の恋愛が成就するまでを描いた映画であるからには、ある程度の納得性が必要なわけで、
その割には、主人公カップルが2人の距離を縮めていく過程を、あまり丁寧に描けていないのですよね。

これは原作やシナリオに問題があったのかもしれませんが、
やはりゲイリー・デビッド・ゴールドバーグがある程度はコントロールすべきだったと思いますけどね。
どうやら彼は凄く寡作な映像作家であり、『晩秋』と本作しかメガホンを取っていませんが、
15年以上ものブランクを経て、何故、彼が本作を撮ろうと思ったのか、もっと明確な理由付けが欲しかったなぁ。

これだけ恋愛映画が飽和状態になってしまった昨今の映画界に於いては、
僕は常々思っているのですが、やはりこれだけオーソドックスな恋愛映画を撮ることも、そこそこ難しいですからね。
(ゲイリー・マーシャルとか、もっと他に適役な映像作家がいたようにも思いますが・・・)

映画の出来自体は、平均レヴェルをやや下回る出来かな。
前述したようにキャストにかなり助けられた作品であることは否定できず、
逆に地味に豪華なこのキャスティングを実現できなかったら、映画にここまでの魅力は生まれなかっただろう。

もう少しコミカルなエピソードについては、しっかり作りこんで欲しかったなぁ〜。

(上映時間97分)

私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点

監督 ゲイリー・デビッド・ゴールドバーグ
製作 ゲイリー・デビッド・ゴールドバーグ
    ジェニファー・トッド
    スザンヌ・トッド
原作 クレア・クック
脚本 ゲイリー・デビッド・ゴールドバーグ
撮影 ジョン・ベイリー
編集 エリック・A・シアーズ
    ロジャー・ボンデッリ
音楽 クレイグ・アームストロング
出演 ダイアン・レイン
    ジョン・キューザック
    エリザベス・パーキンス
    クリストファー・プラマー
    ストッカード・チャニング
    ダーモット・マローニー
    アリ・ヒルズ
    ブラッド・ウィリアム・ヘンケ