マゴリアムおじさんの不思議なおもちゃ屋(2007年アメリカ)

Mr.Magorium's Wonder Emporium

まぁ・・・確かにこれは大人の視点から言えば、退屈な内容かもしれませんね。
いや、それでいながら、子供向けの内容かと言われると、子供にも正直、分かりにくい内容かと思う。

市街地に位置するマゴリアムおじさんが経営する魔法が溢れるオモチャ屋。
そこでレジ係を勤める大学を出たばかりのモリーは、幼い頃から有望なピアニストとして期待されながらも、
その能力を伸ばし切れず、本人も思い悩みながら、ピアニストとしての道を閉ざしていました。

そんなある日、マゴリアムおじさんから突然の引退宣言。
マゴリアムおじさんは会計監査人を雇い、モリーへ全財産を譲渡すると言い出すのです。
その上、彼は243歳になり、健康上どこにも問題はないのに、もうこの世を旅立つとも言っているのです・・・。

そんなまるで非現実的な設定ではありますが、
さすがに突然、マゴリアムおじさんにそんなことを言われてはモリーが困ります。
そんな中、徐々にオモチャ屋に異変が生じます。マゴリアムおじさんの突然の引退宣言に反旗を掲げるように、
店に陳列されるオモチャたちがまるで意思を持つかのように、“反乱”を起こし始めるのです・・・。

あくまで資金や技術を投入した映像作品としてであれば、
僕はひじょうに良く出来ていると思うし、十分にファンタジーな空気を堪能できると思う。

また、マゴリアムおじさん自身とマゴリアムおじさんのオモチャ屋は現実離れした描写だが、
それ以外の部分は思いっきり現代社会の水準で、それでも人々はオモチャ屋に違和感を感じないという、
「現実」の中に「非現実」を堂々と当てはめるというシュールな描写は、予想以上に良く出来ていると思う。

しかし、この映画の場合、選んだストーリーが悪かったような気がする。

と言うのも、この映画はある種の成長物語であり、端的に言ってしまえば、世代交代を描いているわけである。
マゴリアムおじさん自身が自らの最期について言及するように、彼自身、少なからずとも死を悟っているのです。

別にこの映画は露骨に観客を泣かせにかかっている類いの作品ではありませんが、
それにしても映画の雰囲気として、やや深刻な空気に傾倒し過ぎた感があるかな。
こうしてしまうことによって、あくまでファンタジーな世界という映画のカラーを統一し切れなかったと感じます。

監督のザック・ヘルムは06年の『主人公は僕だった』の脚本家で、本作が監督デビュー作らしい。
第一回監督作品として良く出来ているのですが、この映画で一番の成功はキャスティングだろう。
何と言っても、マゴリアムおじさんを演じたダスティン・ホフマンに大きく助けられている。
彼は撮影当時70歳弱だったかとは思いますが、何と言っても彼は相変わらず若いですね。
かつての70歳の役者って、もっとヨボヨボの爺さんってイメージだったのですが、彼は若いです。
そりゃ役作りのために爺さんらしい風貌にしてはいますが、まだまだ活躍してくれそうな感じで良かったですね。

それと、モリーを演じたのは『レオン』のナタリー・ポートマン。
彼女って、本作撮影当時、25歳ぐらいだったと思うのですが、なんかティーン・アイドルみたい(笑)。
いや、それは僕の勝手なイメージなのかもしれませんが、本作では特に若々しく映っていましたね。

意外にナタリー・ポートマンとダスティン・ホフマンの顔合わせって、悪くはなかったですね。
(2人とも個性的な俳優なので、観る前は少し不安だったのですが・・・)

マゴリアムおじさんの魔法を幾つか描写していますが、
個人的には視覚的に劇的に変化させる魔法よりも、いつまでも飛び続ける紙飛行機の描写が良かったなぁ。
それまでは画面の奥行きなどを上手く使えていなかった感じですが、このシ−ンでようやっと使えています。

まぁどうやら実際の撮影完了から全米公開まで時間を要していることから、
ひょっとしたらオモチャ屋での映像表現のために、かなりの時間を要したのかもしれませんね。

劇場公開当時、木村 カエラとかもプロモーションに参加していて、
かなり配給会社も力を入れていたように記憶しているのですが、結果的に大ヒットには至りませんでした。
これで内容がもっと良ければ、おそらく口コミでヒットにつなげられたように思うのですが、
劇場公開時の評判が芳しくなかったのは、映像表現が映画の世界観を作り切れなかったからだと思いますね。

結局、作り切れなかった要因を作った一つはストーリーだったのではないかと思います。
この辺はザック・ヘルムの次回作以降への、一つの課題だと思いますね。

別に脚本の出来が映画の出来に大きく影響するとまでは言いませんが、
目的とする映画の世界観に合っていなければ、いくら素晴らしい脚本を書いていても意味がありません。
脚本あっての映画化だったかとは思いますが、僕は本作の場合、例えば善悪の対決のような、
単純明快な構図を描いた内容で十分だったと思いますね。その方がずっと魔法も活きたと思います。

全く本作の主旨とは違いますが、いっそのこと、アドベンチャー映画にしてしまった方が面白かったかな。
おそらくファミリー映画を目指して作ったのではなかろうかと思えるのですが、それならば大人も子供も一緒に
楽しめる可能性の高い冒険性のある内容にシフトすれば、映画はもっと評価されたでしょうね。
映像表現自体はひじょうに凝っているだけに、この中途半端さが勿体ない作品です。

全然関係ない話しですが...なんとなく、これ観ちゃったら、オモチャ屋へ行きたくなっちゃいましたね。

(上映時間93分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 ザック・ヘルム
製作 ジェームズ・カラヴェンテ
    リチャード・M・グラッドスタイン
脚本 ザック・ヘルム
撮影 ロマン・オーシン
編集 サブリナ・プリスコ
    スティーブン・ワイズバーグ
音楽 アレクサンドル・デスプラ
    アーロン・ジグマン
出演 ダスティン・ホフマン
    ナタリー・ポートマン
    ジェイソン・ベイトマン
    ザック・ミルズ
    デッド・ルジック
    マイク・リアルバ
    スティーブ・ホイットマイア