ウェディング宣言(2005年アメリカ・ドイツ合作)

Monster−InーLaw

21世紀に入った頃ぐらいまでは、全米を代表する人気女優と呼んでいい勢いがあったジェニファー・ロペスと、
60年代〜70年代にわたり、2世スターとは呼ばれながらも演技派女優として一時代を築いたジェーン・フォンダ。

この2人が結婚を契機に、義理の母親、義理の娘として壮絶なバトルを展開するラブ・コメディ。

小麦色の肌で開放的なファッションを身にまとい、義理の母に果敢に挑戦するジェニファー・ロペスに対し、
溺愛する息子を守るためと、絵に描いたように義理の娘に嫌がらせをするジェーン・フォンダの圧倒的な怪演が、
映画にとびきりの楽しさを与えているのですが、何故か日本では劇場未公開作という不遇な扱い・・・。

あんまり売れ線の内容ではないと判断されたのかなぁ?
勿体ない、これはなかなか楽しい映画に仕上がっているのに。。。

監督は『キューティ・ブロンド』のロバート・ルケティックですが、
ひょっとしたら映画の語り口としては『キューティ・ブロンド』より本作の方が良かったかもしれません。
コメディのエッセンスとして、“妄想”を上手く取り入れることにより、映画にブラックな要素を加味させている。
そうすることによって、2人の心理が上手く表現されるようになったと思いますね。
(まぁ・・・昔からよくある手法ではあるのですが。。。)

ジェーン・フォンダは90年の『アイリスからの手紙』以来、15年ぶりの映画出演ということで話題となりましたが、
そんなブランクを感じさせぬ、ジェニファー・ロペスを完全に喰ってしまうぐらいの勢いの怪演で圧倒的。
これは良い意味で、ジェーン・フォンダの映画と言っていいと思いますね。それぐらい強烈な存在感です。
おそらく彼女の怪演は作り手たちにとっても、予想外の産物だったでしょうね。

日本では嫁、姑の争いを描いたドラマというのは数多くありますが、
ハリウッドに目をやると、一転して義理の父と義理の息子の葛藤を描いたドラマの方が多くなります。

まぁ本作でもそのニュアンスが込められているのですが、
嫁、姑の争いとなると、それに近接する形で存在するのがマザコンという問題ですね。
僕は「男なら誰しもマザコンは抱えているもの」と勝手に思っておりますが(笑)、要は程度問題。
それが日常生活を阻害する因子となっていたり、母親を自分の嫁さんに重ねるようになったら、それは問題。
或いは、人生の大きな岐路で母親の存在を云々するようになったら、それは度を超えたマザコンだと思いますね。

本作でも息子である医師ケビンがマザコンであるファクターがあり、
この問題は万国共通なんだと、改めて実感させられますね(笑)。おそらくこの問題は永久に無くなりませんね。

まぁナッツ・アレルギーであるチャーリーにナッツを混ぜたソースをかけた料理を食べさせるシーンは、
さすがに倫理的にどうかと思いますが、これ以外のバトルはまずまずの面白さだと思います。

ところでケビンを演じたマイケル・ヴァルタンって、歌手のシルヴィ・ヴァルタンの甥とのことですが、
01年からの人気TVシリーズ『エイリアス』に出演した際、共演していたジェニファー・ガーナーと交際していました。
ところがジェニファー・ガーナーは05年に俳優ベン・アフレックの子を妊娠し、アッサリと結婚してしまいました。
(ちなみにジェニファー・ガーナーって04年に別の男性と離婚している)
んでもって、ベン・アフレックって02年から04年までジェニファー・ロペスと結婚していたわけで、
本作でカップルとして共演した2人って、共にベン・アフレックとジェニファー・ガーナーに因縁があるわけですね。

ゴシップ的な下世話な話しではありますが、この映画で共演しているときって、
マイケル・ヴァルタンにとっては、ジェニファー・ガーナーがベン・アフレックと親密な関係になった頃で、
ジェニファー・ロペスにとっては、ベン・アフレックと離婚した直後という頃。何だか複雑だなぁ(笑)。

それにしても、あり得ない状況を説得力を持たせて描けてしまうのが凄いなぁ。
というのも、そもそもジェニファー・ロペスがしばらく彼氏がいなくて悩んでしまうという状況があり得ないし(笑)、
そこに有能でイケメンな医者が結婚相手を心で求めながらすぐにデートを申し込んでくるという状況があり得ない。

それでも映画は腐っていないことを考えるに、作り方を間違えてなかったということだと思うんですよね。
どんなにあり得ない状況を重ねて映画を構成したとしても、ある程度の説得力が映画を支えています。

えてしてこの手の映画って、「そりゃないだろ〜」と観客に突っ込まれてしまうことがあるのですが、
それでは映画としてダメだと思いますね。そういった穴がある分だけ、作り込めていない証拠です。
本作はまだそういったツッコミを許してしまうほど、作りの甘さは感じられません。
それなのに日本劇場未公開とは、あまりに不当な扱いと言っても過言ではないと思いますね。

もう一つ注文すれば、この適当な邦題があまりに可哀想だ。
もうチョット考えて、邦題を付けてあげて欲しいですね。原題の意味も反映されていないし。
そりゃ確かに映画の内容と照らし合わせると間違ってないけれども、もっと良い邦題があったでしょ(苦笑)。

あと、ジェーン・フォンダが久しぶりにスクリーンで元気な姿を披露していて嬉しいですね。
最近はワークアウト・ビジネスに精を出して有名になりましたけど、まだまだ女優として活躍できます。
撮影当時67歳とは思えぬ元気さ、若々しさでこれからも活躍を期待できますね。

コメディ映画が不遇な時代に突入したことを改めて実感させられますが、
何とか本作のような秀作も評価されるような、前向きなスタンスを求めていきたいですね。

(上映時間101分)

私の採点★★★★★★★★★☆〜9点

監督 ロバート・ルケティック
製作 クリス・ベンダー
    J・C・スピンク
    ポーラ・ワインスタイン
脚本 アーニャ・コショフ
撮影 ラッセル・カーペンター
編集 スコット・ヒル
    ケビン・テント
音楽 デビッド・ニューマン
出演 ジェニファー・ロペス
    ジェーン・フォンダ
    マイケル・ヴァルタン
    ワンダ・サイクス
    アダム・スコット
    モネット・メイザー
    アニー・パリッセ