モンキーボーン(2001年アメリカ)

Monkeybone

うわっ、こりゃ見事なまでに悪ノリ映画ですな(笑)。

精神的に悩みを抱えていた青年スチュが、一人の素敵な女医から
「イラストを右手ではなく、左手で書いてみたら?」とのアドバイスを得た結果、
彼が考案した“モンキーボーン”と呼ばれるキャラクターを主人公としたアニメーションが大当たり。

ところがお披露目パーティーで不運な事故を起こし昏睡状態となったスチュが
死の入口の世界で葛藤した挙句、悪ノリばかりを続ける“モンキーボーン”が昏睡から覚めた
スチュの肉体を利用して、現実世界で大暴れする姿を描いたファンタジー・コメディ。

まぁストーリーそのものは気軽に観れるファンタジー映画なのですが、
映画も終盤に近づくと、かなりブラックな本性が露わになり、映画は暴走します。

とは言え、許される範疇での暴走ではあります。
しっかし、この映画、冒頭のアニメーションからしてそうなのですが、映画全体が随分とブラックですね。
事故死した体操選手の肉体を使って“モンキーボーン”を追跡するシーンで、
彼の傷口から次から次へと内臓が飛び出し、それらを医師たちが拾っていくエピソードなど、
かなりブラックなジョークがあって、おそらくこの辺は賛否両論あるでしょうね。

確かにブラックなジョークなんですが...
このシーンこそが本作の真髄と言っても過言ではなく、僕は寛容的に観てあげて欲しいと思いますね。

キャスティングも地味に豪華で、当時、『ハムナプトラ』シリーズでスターダムを駆け上がっていた
ブレンダン・フレーザーは勿論のこと、ヒロインのブリジット・フォンダが相変わらず良いですね。
個人的に僕は彼女のファンなので、もっと彼女に多くの出番を与えてあげて欲しかったですね(笑)。

監督は『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』のヘンリー・セリックなのですが、
このディレクターはなかなか面白いですねぇ〜。もっともっと数多くの映画を撮って欲しいと思います。
アニメーションで表現していた世界観を見事に実写の世界でも表現できており、
これこそ彼にしか出来ない映像表現といった感じで、僕は凄く感心させられましたね。

悪ノリ映画と前述しましたが、本作はそれだけではなくって、
キチッとした画面設計を感じさせる映像表現で、おそらくこれからも活躍していけると思います。

もっとも、ティム・バートンの後ろ盾があって、本作の映画化を実現させられたようですが、
本作なんかはティム・バートンの映画なんかよりも、ずっとブッ飛んでて、ずっとブラックで...
なんか観ていると、“ホントは観てはいけないものを観てしまった”ような美徳があるような気になりますね(笑)。

スチュが頭を悩ませる“モンキーボーン”が暴れ回るのですが、
この“モンキーボーン”の性格はスチュが想像の世界で作り出したキャラクターであり、
スチュが自分自身に無いものを寄せ集め、潜在的な自分の相棒として構築したキャラクターだ。
そして彼がアニメとして発表することで、莫大な名声と富をもたらしたキャラクターなはずなのに、
いざスチュの精神的な内面が露になる死の入口の世界では、トンデモない本性を見せ、大暴れする。

このスチュが意図しない方向に悪さばかりするキャラクターに転じてしまうあたりにも、強い皮肉を感じますねぇ。

個人的には死の入口の世界での奇怪な描写は良いにしても、
どことなくスチュに同情するバーの女の子の扱いはイマイチ上手くないし、
何故かウーピー・ゴールドバーグが演じた“死の仕分け人”の存在も中途半端で、不満に思った部分もある。
(彼女はブレンダン・フレーザーのお尻を蹴っ飛ばすためだけに登場してきたと言っても過言ではない...)

それと、“モンキーボーン”が乗り移ったスチュがパーティーで企んでいた
ガス入りの人形をバラ撒くという発想も、いくらコメディ映画とは言え、かなり雑な展開と言わざるをえない。

最後にもう一点、これは技術的な問題もあるので仕方ないけど...
最初に“モンキーボーン”が反抗して、スチュが捕まえようとするシーンなんかでは、
スチュが完全に“モンキーボーン”に遊ばれるのですが、視覚的な違和感は否めないかな。
特にブレンダン・フレーザーの芝居の問題でもあるけど、少し映画的ではない部分があったのは気になった。
それでもかなりの技術力だとは思うけど、もっと実写の部分でカバーして欲しかったですね。

そういう意味では、残念ながら詰めが甘い映画と言わざるをえないのですが、
とは言え、本作の見事なまでにブラックなアプローチは必見に値すると言っても過言ではないと思う。
個人的にはファンタジー映画というよりも、ブラックなコメディ映画が好きな人にはオススメしたい一本ですね。

案の定、この手の映画の宿命とも言えるのですが...
本作も日本で劇場公開されたものの、短期間で上映終了という扱いになり、
今となっては、「あれ? こんなの劇場公開されてたっけ?」と言われてしまう始末だ(笑)。
(そんなことを恥ずかしげもなく、口走ってしまうのは僕だけだろうか?)

僕は本作のようなタイプの映画も、スポットライトを当てられる時代が来ることを切に願っております。

これは言いすぎかもしれませんが...
ひょっとしたら本作は50年後には、2000年代前半を代表するカルト映画になっているかもしれませんね。

(上映時間92分)

私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点

監督 ヘンリー・セリック
製作 マイケル・バーナサン
    マーク・ラドクリフ
脚本 サム・ハム
撮影 アンドリュー・ダン
音楽 アン・ダッドリー
出演 ブレンダン・フレーザー
    ブリジット・フォンダ
    ウーピー・ゴールドバーグ
    デビッド・フォーリー
    ジャンカルロ・エスポジート
    ローズ・マッゴーワン