ミッション:インポッシブル2(2000年アメリカ)
Mission : Impossible 2
この映画、実は映画館で観ました。
劇場公開前から大きな話題となっていたこともあり、鳴り物入りで日本でも劇場公開となっていたことから、
自分もかなり観る前から期待値を高めて映画館へ足を運びましたが、当時は十分に満足するエンターテイメントでした。
監督は97年に『フェイス/オフ』でしっかりハリウッドで地位を確立していたジョン・ウーで、
全世界で5億ドル以上ものの興行収入となり、文句なしにこの年の最高収入を記録した作品となりました。
前作は職人監督ブライアン・デ・パルマが監督してましたが、今回はこちらも個性的なジョン・ウー。
ジョン・ウーと言えば、二丁拳銃に鳩にスローモーション。本作でもバリバリ多用していて、チョット笑えます。
いやはや第1作ではデ・パルマはTVシリーズへのリスペクトもあってか、かなり遠慮していたように思いましたが、
本作のジョン・ウーは全くと言っていいほど、遠慮してません(笑)。まるで「これが観たいんだろ?」とでも言わんばかり。
多少なりともスパイっぽさを描こうとはしていた第1作から打って変わって、
この第2作では一気に最初っから最後までエンターテイメントに徹する感じで、終始、サービス精神しかない映画。
ですので、第1作にあった中途半端な感じというのは、本作には全く感じられず、作り手がしっかり振り切っています。
そのおかげ(?)なのか、当時の映画館も満員の上映が続出して、すぐに観れる状況ではなかったです。
(当時、既にシネコンが幅を利かせる時代になっていて、昔のように立ち見はできなかった)
超人的な活躍をする主人公イーサンは、映画の冒頭からオーストラリアの断崖絶壁を
相変わらず素手でロッククライミングに興じているというオープニングで、いきなり手に汗握るスリルから始まります。
僕は高所恐怖症なので、こういうのは観ていられないと思っちゃうのですが、CGも上手く融合し臨場感たっぷりです。
そこからサングラスをかけて今回の任務を聞くイーサンですが、今回は細菌なのかウイルスなのか、
何なのかよく分からないですが(苦笑)、“キメラ”という致死性のある微生物をテロ集団に奪われてしまい、
それを奪還する任務にあたるということで、テロ組織のボスのガールフレンドであるナイアと接触することで
テロ組織の内部情報を取り、“キメラ”を奪い取れということ。アッサリとナイアと接触して、彼女と恋仲になるのですが、
さながら“007シリーズ”であるかのように、このイーサンも女性にモテまくる。この辺はセオリーなんですかねぇ。
欲を言えば、今回のヒロインを演じたタンディ・ニュートンをもっと磨いて欲しかったですね。
犠牲的な心は尊いですが、元来、泥棒であったはずのナイアが何故にイーサンに尽くそうと思い始めたのか分からず、
いきなり病原体を含む液体を自分に注射しだしたときには、なんだか不可解で思わず僕はビックリさせられました。
この病原体となる細菌やウイルスを発見して、それに対する抗生物質やワクチンを独占的に開発するというのは、
現実にも無くはない話しかもしれない。先般の新型コロナウイルスでもそんな陰謀論が飛び交ったこともありました。
しかも、その研究施設で誤って研究者自身が感染してしまうというのは、外にウイルスや細菌を漏らす構図を
暗に示唆するような描き方をして、何気に本作で描かれたことは20年後の社会への警鐘だったのかもしれません。
まぁ、ジョン・ウーにはそんな社会的なテーマを内包させた映画との意識はなかったとは思います。
なんせ、前述したように往年の人気TVシリーズ『スパイ大作戦』の映画化だというのに、二丁拳銃も鳩も登場し、
しつこいくらいスローモーションを多用するアクションに、バイクを使ったアクションに至っては、まるでヒーロー戦隊もの。
この完全に振り切ったスタンスに、オールドなファンも含めて否定的な見解も多く聞かれましたが、
僕は逆に本作を違ったスタンスを持った、異質な作品としてこれはこれで魅力的で有りって思っちゃいますねぇ。
しかし、第1作では控え目に使われていたはずのマスクを使った変装をやたらと乱発するのはマイナス。
本作は事ある毎に、このマスク変装を乱用させてしまっていて、何もかもがウソ臭く見えてしまうのが悪目立ちする。
映画の冒頭のハイジャックから始まり、ナイアの裏切りを試すためにも使い、劇中何度も何度も使いまくる。
結局、このマスク変装を使えるなら、作劇としては「何でもアリ」なんですよね。映画が安っぽくなってしまいます。
ダグレイ・スコット演じるテロ組織のリーダーも、なかなか憎たらしい存在感で悪くないのですが、
この敵役もマスク変装をやたらと使っていて、イーサンも使うものだから、変装の応酬になってしまうのが謎。
もはや自分と話している相手の正体が全くアテにならないという状況で、見破れないクオリティなので質(タチ)が悪い。
前作ではあくまで匂わせるだけで、イーサンの恋愛を具体的に描くことはなかったのですが、
本作ではイーサンはナイアと接触するところか、既に二人の間に恋心が芽生えたかのような一目惚れっぽく、
二人のロマンスが描かれており、実はナイアはテロ組織のリーダーとガールフレンドであったのだから、
イーサンと取り合うという構図になるのですが、少し興味深いのは第1作ではイーサンがフェルプスの妻に操られる、
という関係性だったのですが本作はどちらかと言えば、イーサンがナイアを操ってテロ組織の情報を取る逆転した構図。
まぁ、少々、イーサンにとって都合の良過ぎるストーリー展開とも思えなくはないのですが、
ジョン・ウーも開き直って自分のアクションを表現し易いように、良い意味で都合良く物語をいじったような印象だ。
そして、本作からはトム・クルーズ自身も開き直ったかのようにセルフ・プロデュースの色合いが強くなる。
甘いマスクに良い具合に筋肉が付いているのは分かるけど、少々ロン毛気味のトム・クルーズは正直ビミョー(笑)。
個人的にはあくまで原型は『スパイ大作戦』なので、イーサン・ハントのシルエットにロン毛はマッチしないと感じた。
ここだけはチョット失敗だったのではないかと思いますが、もはや“チームリーダー”なのでオーラが必要だったのかな。
そう、第1作では有能ながらも、まだチームの下っ端だったイーサンでしたが第2作からは
ほぼほぼ彼単独で行動して、彼の独断で動くようになっています。これはもう立派に彼が出世した証拠ですね(笑)。
とは言え、まだイーサンには任務を指令する上司がいて、その役をアンソニー・ホプキンスが演じているのも意外。
(正直、アンソニー・ホプキンスはこういう映画に好んで出演するようなタイプの役者には見えなかった・・・)
ただ、ジョン・ウーのような強い個性を持ったディレクターが本シリーズの監督に起用されることは
本作以降はありませんでした。あくまで本作はトム・クルーズが目立ってナンボのシリーズだということなのでしょう。
さすがにイーサン・ハントに二丁拳銃に鳩というのは、不釣り合いというか、似合わないと思われたのかもしれません。
如何にもジョン・ウーっぽい表現のあるアクション映画にはなっていて、僕はこれはこれで支持してるんだけど、
第1作で展開されたようなCIA本部でNOCリストを盗むシーンとか、TGVのトンネルにヘリごと突入するシーンとか、
映画のハイライトとも言うべき見せ場として、本作にはこれといったシーン演出をできていないのは気になりますね。
アクション映画としてのインパクトよりもジョン・ウーのカラーを『スパイ大作戦』の中に加えることを優先した感じだ。
強いて言えば、映画の冒頭のハイジャックのシーンは悪くないのだけれども、
敢えてこういうスリリングなオープニングにしたのだろう。しかし、この後、このハイジャック・シーンを超えるものが無い。
結果的にこのペース配分が悪い意味で、映画の最後の最後まで引っ張り続けてしまった感じがしますね。
この辺は特にオールドなファンからすれば、強烈な違和感を感じずにはいられない部分なのでしょう。
まぁ、本シリーズはトム・クルーズの意見力が強いシリーズでしょうから、当時のトム・クルーズが
どうしてもハリウッド進出してきたばかりのジョン・ウーと一緒に仕事をやりたかっただけなのかもしれませんがね。
まだ当時は97年の『フェイス/オフ』の成功で名高かったジョン・ウーですから、スローモーションを多用するだけで
ジョン・ウーの映画のファンは大喜びでしたから、本作のメガヒットはそういったファン層に支えられた面は大きいと思う。
それと、第1作ではチョイチョイ、イーサンは独自のアイテムを繰り出していたと思うのですが、
本作は変装用のマスクぐらいなもので、イーサンが持つ小道具の魅力は全く活かされてねなかったのは残念。
ヒロインのナイア役を演じたタンディ・ニュートン、僕は本作を映画館で観た時、
もっと派手にスターダムを駆け上がるものかと思ったんだけどなぁ。勿論、彼女の出世作にはなりましたけど、
05年の『クラッシュ』などに出演してキャリアは積み重ねていったものの、ブレイクしたというほどにはなりませんでした。
明らかに本作はシリーズの中でも異質な作品ですので、単純なアクション映画として観た方が楽しめます。
ジョン・ウーも『スパイ大作戦』のリブート作品だという意識は薄いような気がしますし、スパイ映画ではありません。
これが否定的な意見を生む原因の一つかと思いますが、僕は開き直って観るしかない作品だと思っています。
しかしね...イーサンも言っていますが、休暇での旅行先を所属企業に伝えなければならない、
というのは...現代ではなかなか言われないことですが、拘束されているようで休暇にならないですよね・・・(苦笑)。
(上映時間124分)
私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点
監督 ジョン・ウー
製作 テレンス・チャン
トム・クルーズ
ポール・ヒッチコック
ポーラ・ワグナー
原作 ブルース・ゲラー
原案 ロナルド・D・ムーア
ブラノン・ブラーガ
脚本 ロバート・タウン
撮影 ジェフリー・L・キンボール
編集 スティーブン・ケンパー
クリスチャン・ワグナー
音楽 BT
出演 トム・クルーズ
ダグレイ・スコット
タンディ・ニュートン
ビング・レイムス
リチャード・ロクスバーグ
ジョン・ポルソン
ブレンダン・グリーソン
リード・セルベッジア
アンソニー・ホプキンス
2000年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト助演女優賞(タンディ・ニュートン) ノミネート
2000年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト・リメーク・続編賞 ノミネート