恋するための3つのルール(1999年アメリカ)

Mickey Blue Eyes

こういう映画と出会うたびに思いますが、
映画に於けるキャスティングの重要性って、ひじょうに高いものなんですよねぇ〜。

別に「キャスティングが全ての映画」だなんて言うつもりはありませんが...
この映画の場合は、主人公のマイケルにヒュー・グラントがキャスティングされず、
加えて、花嫁ジーナの父をジェームズ・カーンが演じていなければ、映画はここまで面白くならなかっただろう。

まぁギャング映画をモチーフにした恋愛映画というのは、
別に珍しいものではないとは思いますが、本作の場合は上手くバランスが取れていますね。
どういったバランスかと言うと、映画のテンポが良く、コメディ・シーンの配分も丁度良い。
派手なギャグはないのですが、ヒュー・グラントのキャラクターも上手く活かせていると思います。
ヒュー・グラントとジェームズ・カーンという異色な取り合わせも、こういった形であればシックリ来ますねぇ。

ジーナを演じたジーン・トリプルホーンもラブコメのヒロインとしては、
観る前は微妙な感じでしたが、その心配も取り越し苦労したね(笑)。決して悪くはないです。

映画は絵画オークション業者に勤めるイギリス人マイケルが、
交際3ヶ月というスピードで教師のガールフレンド、ジーナにプロポーズしますが、
何一つ不足がないと思われたマイケルのプロポーズでしたが、ジーナは「イエス」と答えません。

何故、彼女が「イエス」と言えないかというと、
ジーナの父親はギャングの一味で、彼女の結婚相手はすぐにギャング組織に巻き込まれるからです。
ところが真相を聞かされたマイケルは彼女に嫌われたくない一心で、「頑張るよ」なんて言っちゃうもんだから、
いざ結婚するとなったら、マイケルはアッという間にジーナの父親に気に入られ、
案の定、組織はマイケルの職業を利用して、資金洗浄(マネー・ロンダリング)を行います。

作り手のビジョンもハッキリしているせいか、
前述したように映画のテンポが良く、映画の緩急や起伏といったものがキチッと付いていますね。

本作のプロデューサーとしてエリザベス・ハーレーが参加しておりますので、
おそらくヒュー・グラントが主演を務めることを想定した企画だったのでしょうね。
ひょっとしたらシナリオを書いた時点で、マイケル役は彼を想定してしながら書いていたのかもしれません。

ギャグ一つ一つにしても、ギャング流の英語の発音を覚えたり、
ギャングっぽい荒っぽい振る舞いをしたり、FBIから仕込まれた仕掛けを誤発したり、
まぁ言ってしまえばヒュー・グラントの孤軍奮闘なのですが、まずまず面白い。
FBI主導で仕込んだ仕掛けに関してはクライマックスに入る前に、ネタバラしするもんだから
個人的には「どう使うんだろ?」と疑問だったのですが、これは観て納得しました。

残念ながら、本作は全米では少しヒットしたのですが、
日本ではほとんど話題にならずに劇場公開が終わってしまいましたねぇ。
近年のラブコメとしては、かなり良く出来た映画だと思えるだけに、この扱いは残念ですね。

ジェームズ・カーン演じるジーナの父がどれぐらい悪い男なのか、よく分からないところは難点ですが、
映画は彼の好演にも助けられて、まずまず魅力的な内容に仕上がっていますね。
やっぱりこういう映画を観るたびに思いますが、ラブコメは映画のテンポに大きく左右されますね。
本作のように企画やキャストの良さにも助けられて、作り手が観客に見せたいものがハッキリしていて、
演出上の主張が明確な状態であるがために、テンポ良く構成できたのでしょうね。

ギャングの描写が若干、ステレオタイプな気もしますけど、
ギャングのボスを演じたバート・ヤングの圧倒的な存在感もあって、それなりに上手く作り込めてますね。
やっぱり、こうして観ると、キャスティングの効用って映画に於いては、凄く重要なんですよね。

まぁこういう映画が幅を利かせるというのは、
如何に世の男が情けないかということを強調しているのかもしれませんね。
主人公のマイケルにしても、ジーナに嫌われまいと何とかして頑張ろうと必死です。
別にギャングの要請を断る強さもなく、ギャングとの付き合い方のノウハウを知っているわけでもないのに、
ジーナと結婚するために「頑張るよ」なんて言っちゃうし、常に破局することを恐れている感じだ。

こういうのを観ると、情けない男を描いた映画というのも、一つの地位を確立したと思いますね(笑)。

まぁそんな情けなさを演じさせたら天下一品なヒュー・グラントですから(笑)、
日本でも十分にヒットする要素があったと思うんですがねぇ。あまり当時の配給会社が売る気が無かったのか、
結局、中途半端な扱いで終わってしまいましたねぇ。これは是非とも、再評価を促したい一本です。
(まぁ本作が製作された頃は、ヒュー・グラントの日本での知名度はイマイチだったから仕方ないが・・・)

それと地味ではありますが、酔っ払ったらメチャクチャになってしまうマイケルの上司の存在が利いてる。
特に映画の後半のレストランでのシーンや、クライマックスでの結婚式のシーンは見事に機能しましたねぇ。

映画のドタバタ劇を盛り上げる役割に徹しており、少しイギリス風味を加味することもできています。

ところで邦題に“3つのルール”ってあるんだけど...
僕がトロいせいか、この“3つのルール”とやらが全くよく分からなかったけど、“3つのルール”って何?

(上映時間101分)

私の採点★★★★★★★★★☆〜9点

監督 ケリー・メイキン
製作 エリザベス・ハーレー
    チャールズ・マルヴェヒル
脚本 アダム・シェインマン
    ロバート・カーン
撮影 ドナルド・E・ソーリン
音楽 ベイジル・ポールドゥリス
出演 ヒュー・グラント
    ジーン・トリプルホーン
    ジェームズ・カーン
    バート・ヤング
    ジェームズ・フォックス
    ジョー・ヴィテレッリ
    ジェリー・ベッカー
    マディ・コーマン