マイアミ・バイス(2006年アメリカ)

Miami Vice

80年代に全米で放送され、やがては世界的に人気を博した同名TVシリーズに於いて、
演出家の中心的存在として参加し、92年の『ラスト・オブ・モヒカン』で本格的に映画界へと進出してきた、
マイケル・マンが自身の手によって、劇場公開用に焼き直して描いたクライム・サスペンス。
(ちなみに同テレビ・シリーズは日本では『特捜刑事マイアミ・バイス』というタイトルで放送されている)

本音を言うと...分からない、とにかく僕にはこの映画が分からない(苦笑)。。。

いや、良い部分がゼロってわけでもないんです。
特に僕は映画のクライマックスの銃撃戦なんか、撮影も含めて、とても真に迫って描けていると思う。
これはマイケル・マンならではの力強い描写で、ちなみに今回は女性キャラクターの扱いも上手い(笑)。

でも、一つだけ知りたいんだけど...
ドン・ジョンソンが出演していた往年のテレビ・シリーズのファンなんかは特に...
本作って、実際に観てみて面白いと感じているのでしょうかねぇ?

実は僕、オリジナルのテレビ・シリーズを今まで一度も観たことがない愚か者ですから、
あまり大きなことは言えませんが...僕は正直言って、本作の2時間10分は結構な修行でしたよ(笑)。

まぁぶっちゃけ・・・マイケル・マンの監督作ですから、2時間以内にタイトにまとまっているわけがないと、
僕は勝手に予想していたので、あまり驚きではなかったけれども(笑)、まぁ・・・とにかく長く感じました(涙)。
本作の前に撮った04年の『コラテラル』は凄く良かっただけに、なんか本作は回り道しているように感じますね。

確かに往年のヒット・シリーズの反省を活かして、セルフ・リメークしたいという気持ちは分かるし、
テレビ・シリーズでは不可能だった表現も、劇場用映画なら可能になるというのもメリットだろう。
しかし、制約が無くなった代わりに、失ってしまったものが意外に多くて(笑)、かえって逆効果かもしれません。

これで、超カッコいいヤン・ハマーのテーマ曲を流していたら、
まだカッコいい映画になっていたのだろうけれども、せっかくの海もマイアミも全然、映えていない。
いつもながらマイケル・マンが撮る都市の表情は魅力的だとは思うが、本作なんかはもっと磨くべきでした。

映画の舞台となるマイアミは、灼熱のリゾート都市。
昼の開放的な街の雰囲気にしても、夜の陰気臭い街の雰囲気にしても、いずれもマイアミの表情なのです。
僕はできることならば、もっとマイアミでのロケ撮影を増やした方が良かったと思うし、
かつて『ヒート』でロサンゼルスを描いたように、マイケル・マンの映像感覚で街を磨いて欲しかったですね。

それと、もう一つ言えるのは、コリン・ファレル演じる潜入捜査官と
コン・リー演じる仲介者の女性とのロマンスにまるで説得力が感じられない点で、これは致命的ですらある。

やはり同じ、マイケル・マンの映画という意味では、
『ヒート』から続く『インサイダー』にしても、『ALI −アリ−』にしても、『コラテラル』にしても、
いずれも魅力的なフィルムに感じられたのは、何より画面に研ぎ澄まされた緊張感があったから。
それが本作になると、潜入捜査官の物語だというのに、まるで緩慢な空気しか流れていない。

かつてテレビ・シリーズでドン・ジョンソンが演じていた刑事像と照らし合わせても、
やっぱり合わない部分があって、どうしてもコリン・ファレルだとゴージャス感に欠けますね(苦笑)。

あと、観る前に予想していた以上にジェイミー・フォックスが目立たないことにもビックリだ。
当時、『RAY/レイ』でオスカーを受賞したり話題の役者だったし、マイケル・マンも『コラテラル』で
彼を起用した過去があっただけに、もっとクローズアップして描くのかと思いきや、少し扱いが小さいですね。
個人的にはもっと存在感をアップさせて、バディ・ムービーみたくしても良かったと思うのですが。。。

ひょっとしたら、往年のTVシリーズのファンはむしろ、そのイメージを消し去って観た方がいいかもしれません。
やはりTVシリーズとは別物であり、映画の趣向自体が大きくかけ離れていると感じますね。
そういう意味では、TVシリーズの先入観があると、それは邪魔になってしまうだけかもしれません。

でも、おそらくマイケル・マンは往年のTVシリーズのセルフ・リメークをしたかったのだろうから、
往年のTVシリーズのファンを喜ばすために映画を作ったと考えられるだけに、これは複雑な結果ですね。

従って、僕が思うのは...映画の企画としては見事な失敗です。
肝心かなめのマイケル・マンが映画の企画の方向性を決め切れずに撮ってしまった感があります。
少なくともTVシリーズの良さを正確におさらいできていれば、こんな中途半端な出来にはならなかったはず。
せっかくのアジア代表、コン・リーもこんな使われ方をされてしまうのは、何だか勿体ないですね。

もっとエキサイティングな作りになっていれば、TVシリーズのファンにも支持されただろうし、
ひょっとしたら世界的な大ヒットになり、映画もシリーズ化された可能性はあると思います。
(まぁ・・・ひょっとしたら、この後、第2作が製作されるかもしれないけど・・・)

ただ、ひ弱な僕でも(笑)、この映画を観て憧れるシーンがあって...
やっぱり酒を飲みに行くというだけで、遠く離れた集落までクルーザーを飛ばし、
ガンガン、スピード出しながら疾走するシーンは何度観ても、カッコいいですね。
TVシリーズにも、ああいうシーンがあったはずですが、是非ともああいうことやってみたいかも(笑)。

(上映時間131分)

私の採点★★★★★☆☆☆☆☆〜5点

監督 マイケル・マン
製作 ピーター・ジャン・ブルージ
    マイケル・マン
脚本 マイケル・マン
撮影 ディオン・ビーブ
編集 ウィリアム・ゴールデンバーグ
    ポール・ルベル
音楽 ジョン・マーフィ
出演 コリン・ファレル
    ジェイミー・フォックス
    コン・リー
    ナオミ・ハリス
    エリザベス・ロドリゲス
    ジョン・オーティス
    ルイス・トサル
    バリー・シャバカ・ヘンリー
    ジャスティン・セロー