ミート・ザ・ペアレンツ(2000年アメリカ)

Meet The Parents

一風変わったコメディ映画として、全米で大ヒットしたコメディ・シリーズの第1弾。

映画はタイトル通り、結婚するにあたって、
田舎暮らしする花嫁の両親に、週末休暇を利用して挨拶に訪れる、
新米花婿が相次いで受ける受難と、元CIAという経歴を持ち、異常なまでに娘のボーイフレンドの
身辺調査に執着し、欠点を粗探しする花嫁の父との攻防を描いた万国共通の悲喜劇だ。

おりしも本作が公開された頃のハリウッドは、
従来の観点とは異なる映画が数多く公開され、小さいながらも新たなムーブメントの胎動を感じていた頃で、
本作なんかも従来のコメディ映画とは、微妙に異なるフィーリングを持った作品という位置づけでいいだろう。

まぁ派手に笑えるタイプの作品とまではいきませんが、
ほど良いアメリカン・ジョークと、バランス感覚に優れた映画であり、それなりに安定感があります。

特に映画の中盤、トコトン上手く物事が運ばないベン・スティラー演じるグレッグが、
屋根に上った愛猫のジンクスを捕まえようと孤軍奮闘するものの、うっかりタバコで不審火を起こし、
更にうっかり屋根に接続する電線を切断してしまったことから、庭にセッティングされた結婚式の会場が
一面“火の海”になってしまうシークエンスが、まるでオカルト映画のような仕掛けで面白かったですね。

デ・ニーロが好んでコメディ映画に出演することを悪く言うファンもいるのですが、
僕が観た中では、近年、デ・ニーロが出演したコメディ映画としては本作が一番、出来が良いですね。

本作なんかはデ・ニーロ自身がプロデュースに参加しており、
かなり積極的に企画を進めていたようで、おそらく製作当時からシリーズ化も視野にあっただろう。
と考えれば、デ・ニーロ自身、そうとうノリノリな作品であることは間違いなく、楽しんで仕事しているようですね。

半分、この映画はベン・スティラーをキャスティングできたことによって、
成功が約束されたようなもので、やはり映画におけるキャスティングの重要性を改めて実感しますね。

クライマックスの空港でのグレッグの尋問で、
突如としてジャックが登場して尋問するシーンなんかの“かけ合い”の面白さは、
ベン・スティラーだったからこそ達した域であり、このシーンなんかはデ・ニーロが助けられている。

が、日本であまりウケなかったのは、あまりにストレート過ぎたせいだろう。
確かにハリウッド映画という枠組みで考えれば、かなり変わった作品ではあるのですが、
日本ではかつてから、よく題材として挙げられていたわけで、花婿の立場の厳しさというのは、
国民的な『サザエさん』があって、マスオさんが有名であることから、使い古されたネタでしたね。

監督のジェイ・ローチは当時、まだ『オースティン・パワーズ』の監督というイメージが強かったですから、
ここまで人物描写に長けたディレクターだったとは新鮮な驚きであり、本作は価値ある一本になりましたね。

但し、ベン・スティラー演じるグレッグ、決して完璧な男ではない。
これがこの映画の大きな強みになっているのですが、グレッグにも弱みがあるのは上手かったですねぇ。
「ポルノを観たことがある」、「マリファナを吸ったことがある」など、過去に色々と弱みがあるのですが(笑)、
現状のグレッグという意味で、最も大きな弱みだったのは、気に入られるために嘘をついてしまうということだ。

気に入られたい一心とは言え、デトロイトの家庭で育ったのに、
農場で育てられたと小さな嘘をついてしまったことを皮切りに、やがて彼が積み重ねる嘘は肥大化し、
致命的とも言える偽装工作に至るまで、彼の嘘は留まらず、結果として彼自身で自分の首を絞めてしまいます。

この映画、半分は“身から出た錆”と言えるところを前提としているせいか、
観客が過度にグレッグに同情しないような配慮があって、映画が偏らないところは良いですね。
その分だけ、ジャックとグレッグのバトルが強調されるのですが、チョット残念だったのはバトル一辺倒なところ。
できることならばパムの母親を演じるプライス・ダナーが良かっただけに、彼女にもフォーカスして欲しかった。

まぁ食い足りない部分は続編で補う気でいたのかもしれませんが、
せっかくタイトルが“parents”になっているのですから、これは中途半端だと思う。
別に彼女が障害になる必要はありませんが、もっと大きな存在であって欲しかったと思いますね。

この映画、少しずつチープなところがあって、
映画の中で何度か映される写真の数々が、ほとんど合成写真だとすぐ分かるあたりも何故か面白かった。
(ほとんどヤッツケ仕事みたいな出来ですが、ここまで適当なのはほぼ確信犯だろう・・・)

日本でも晩婚化が進み、おそらくこれからは生涯、未婚の人も増えるだろう。
夫婦別姓という選択肢も増えたし、徐々に日本人の結婚観に変化が生じたのかもしれません。
当然、女性の社会進出も一般化されてきましたし、仕事と育児の両立もよくある話しです。
これからは男性が育児休暇を取得することが、おそらく10年後はもっと浸透しているだろうし、
あくまで制度的には潤滑な結婚生活を社会的に推進しているというのは、否定できないと思う。

ただ、一つだけ言えるのは、
結婚することにも、子育てにも経済的負担が大きいということが不変的問題として存在します。

これからは晩婚化が進んでしまう問題の根本なんかを鋭く指摘する映画なんてのも、
あってもいいかもしれませんが...いずれにしても、僕には身に詰まされる話しになるだろうなぁ(苦笑)。

(上映時間107分)

私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点

監督 ジェイ・ローチ
製作 ロバート・デ・ニーロ
    ジェイ・ローチ
    ジェーン・ローゼンタール
    ナンシー・テネンバーム
原作 グレッグ・グリエンナ
    メアリー・ルース・クラーク
脚本 ジェームズ・ハーツフェルド
    ジョン・ハンバーグ
撮影 ピーター・ジェームズ
音楽 ランディ・ニューマン
出演 ロバート・デ・ニーロ
    ベン・スティラー
    テリー・ポロ
    ブライス・ダナー
    ニコール・デハッフ
    オーウェン・ウィルソン
    ジェームズ・レブホーン

2000年度アカデミー主題歌賞(ランディ・ニューマン) ノミネート