ふたりの男とひとりの女(2000年アメリカ)

Me, Myself & Irene

まぁブラック・ユーモアというか、ハッキリ言って不道徳な映画ですが(笑)、
『メリーに首ったけ』で評価されたファレリー兄弟の作品としては、期待通りの出来と言っていいでしょう。

相変わらずの過激なネタが満載な映画ではありますが、
ジム・キャリーの奮闘の成果か、映画はまずまず面白かったと思いますね。そう、悪い出来ではないと思います。

シナリオもしっかり書けているようで、僕はそんなに映画のテンポもそんなに悪いように感じませんでしたね。
そのせいか、ギャグ一つ一つを見れば、正直、空振りしているものもあるにはあるのですが、
映画全体で考えると、そこまで映画の流れが悪い部分はないため、そう悪い仕事ではないでしょう。

映画はお人好しのハイウェイ・パトロール警官のチャーリーが主人公で、
彼は順風満帆の人生を歩んできたものの、理想的で運命の女性と信じていたフィアンセに裏切られ、
彼女が産んだ3人の黒人の子供を引き取ったことをキッカケに、それまで彼が無意識的に貯め込んできた、
猛烈なまでのフラストレーションが爆発し、彼が潜在的に作り出した、もう一人の凶暴な人格ハンクが暴れだし、
彼が命を受けた、一人のゴルフ場経営者の女性アイリーンを護送する任務の中で、騒動に巻き込まれるも、
ハンクの人格と闘いながら、悪巧みをする悪党連中からアイリーンを守る奮闘を描いたコメディというわけです。

日本では『メリーに首ったけ』の大ヒットの影響もあってか、
映画ファンの間ではファレリー兄弟の新作ということで、劇場公開当時、期待値はかなり高かったと記憶してます。
映画の内容としては、その期待に応える面白さだと思うのですが、やはりかなり個性的な内容のせいか、
さすがに“映画の方から、観客を選んでしまうタイプの作品”と言うほかないぐらい、異彩を放つ作品です。

まぁ同じコメディ映画でも、下ネタ横行、タブーとされるネタは次から次へとギャグにしていく姿勢に、
共感できない人には、正直言って、オススメすることはどうしてもできない作品の一つです。

本作での共演がキッカケで、主演のジム・キャリーとヒロインを演じたレニー・ゼルウィガーが意気投合、
その後、私生活でホントに1年間に及ぶ熱愛関係に発展するゴシップが今となっては懐かしいですが、
当時、ハリウッドでも新進若手女優の一人であったレニー・ゼルウィガーもホントによく頑張りましたね(笑)。

本作への出演も評価されたようで、01年の『ブリジット・ジョーンズの日記』の大ヒットで、
彼女は完全にハリウッドでもトップクラスの女優の仲間入りを果たしましたが、その過程で本作のような
過激なギャグを主体としたコメディ映画に出演していたなんて、チョット意外なような気もしますね。
(まぁ・・・キャメロン・ディアスが『メリーに首ったけ』のヒロインを演じたことを考えれば、そうでもないか?)

ただ、そんな彼女をも凌ぐ暴走演技に徹したのがジム・キャリーで、
チョットやり過ぎなぐらいの暴走ぶりで、彼ならではの芝居ではありますが、これは賛否両論かも(笑)。

あと、個人的にはチャーリーとアイリーンが長距離列車に乗って移動するシーンから、
クライマックスに至るまでのシークエンスには、今一つノレずに楽しめなかったかなぁ。
特にクリス・クーパー演じるガーキ、リチャード・ジェンキンス演じるボシェーンが悪役的存在なのですが、
この2人が弱すぎて、何とも中途半端な形で映画から退場してしまうことが、あまりに勿体ない。
特にクリス・クーパーは、この手の映画になかなか出演しないだけに、もうチョット上手くやって欲しかったなぁ。

ファレリー兄弟って、意外に可愛らしい恋愛を映画の中で描くことが好きらしく、
本作も基本は、『メリーに首ったけ』とほぼ同じなのですが、ギャグに関してはある意味でパワーアップしたかも。
(とは言え、そのギャグの大半が徹底して下ネタではあったのですが・・・)

まぁ下ネタもそうですが、障害者や人種問題をネタにするなど、
波紋を呼びそうなタブーに敢えて挑戦している感じで、ファレリー兄弟のスタンスは相変わらずなのですが、
本作が全米で大ウケだったということは、この内容を寛容的に観ることができていたということなんですね。

黒人の運転手に関するエピソードや、町で赤ん坊に授乳しているところを主人公が通りかかるエピソード、
道路で死んでいるかのように見える牛に関するエピソードなど、倫理的にもキワどいギャグが多いので、
アメリカでも議論を呼びそうな感じがするのですが、これでお咎めなしというのは、少々、意外な感じも・・・。

この映画でジム・キャリー演じるチャーリーは二重人格という設定で、
妻に浮気されて逃げられても正気を保っていたぐらいのお人好しの警察官だったのに、
もう一つの人格ハンクにいたっては、とても凶暴でやりたい放題な破天荒さという人格で、
現実にやりたい放題だったのに、ハンクがやったことはチャーリーは何も覚えていないという設定で、
ハンクが暴れまくった後始末にチャーリーが追われるというのもユニークな設定ですが、
それでもチャーリーがハンクの人格を追い出そうとして、ハンクに人格が乗っ取られるのを防ぐという展開が面白い。

最後の最後で、ホントにチャーリーの二重人格が解消されたのか、
この映画は少し不透明な部分を残したままなのですが、ひょっとしたら続編を考えていたのかもしれませんね。

事実、妻が浮気したときの子供であることが明白なチャーリーの3人の子供ですが、
この3人の子供たちのキャラクターなんかも面白くて、スピンオフ企画なんかも実現できそうなぐらい、
脇役キャラクターも印象的で、こういう作り手の映画に対する姿勢には好感が持てましたね。

まぁ・・・おそらく、この手の映画を受け付けない人もいるでしょうが、できることであれば、
こういう映画も寛容的に観てあげてもらいたい(笑)。あまり子供たちに見せたい内容ではないので、
個人的にレイティング対象となっても良かったような気がするんですが、ヤンチャなジム・キャリーが好きな人には
是非ともオススメした作品であり、確かにやり過ぎなギャグもあるけど、本作だけは大目に見てあげて欲しい(笑)。

まぁジム・キャリーは一時期、ヒューマン・ドラマ路線にシフトしていた時期があって、その反動もあってか、
こういう映画に出演したのかもしれませんねぇ。そういう意味では、彼の中でも闘っていたのかも。

まぁ僕はジム・キャリーのシリアス路線も決して嫌いにはなれないので、
これはこれで支持しているのですが、彼がホントに解き放たれるのは、本作のようなタイプの作品なのかも。
そういう意味では、喜劇俳優としてのジム・キャリーが好きなファンの方なら外せない作品でしょうね。

(上映時間116分)

私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点

監督 ボビー・ファレリー
    ピーター・ファレリー
製作 ブラッドリー・トーマス
    ボビー・ファレリー
    ピーター・ファレリー
脚本 ピーター・ファレリー
    マイク・セローン
    ボビー・ファレリー
撮影 マーク・アーウィン
音楽 ピート・ヨーン
    リー・スコット
出演 ジム・キャリー
    レニー・ゼルウィガー
    クリス・クーパー
    リチャード・ジェンキンス
    ロバート・フォスター
    アンソニー・アンダーソン
    ダニエル・グリーン
    モンゴ・ブラウンリー