外人部隊フォスター少佐の栄光(1977年イギリス)

March Or Die

20世紀初めのモロッコの砂漠地帯を舞台に、
フランスの富のためと現地に派遣されたフォスター少佐率いる外人部隊。
彼らの任務はエルフードの遺跡採掘作業を妨害しようとするモロッコ人たちの襲撃から、作業員を守ること。
フォスターは半ば泥棒行為である採掘作業に対して反感を覚えながらも、部隊を厳しく率いていく。

映画はそんなフォスターの複雑な心理状態をメインに、
過酷な部隊の活動に対して敢えて反抗的な姿勢を持つマルコの存在を対照的に描いています。

特にクライマックスのモロッコ人たちとの壮絶な戦闘シーンが圧巻の出来だ。
フォスターは敢えて破滅的な闘いへと導いていくのですが、覚悟を決めたようにギリギリのラインまで
モロッコ人たちの群集の最前ラインをひきつけるシーンには、異様な緊張感が漂っている。

接近戦になって、次から次へと部隊がダメージを受けていく姿には悲壮感すら漂っていますが、
この映画の苦しいところとして、一連の戦闘シーンの迫力はあるのにも関わらず、
演じる大勢のエキストラたちが鬼気迫る感じで攻め入ってこないから、どうもノリ切れません(笑)。

銃撃シーンや爆発シーンにやたらと力が入ってるなぁと思ったら、
ジェリー・ブラッカイマーのプロダクションで作った映画でしたね。
アクション・シーンの見せ方が後年のブラッカイマーのスタンスがもう既に出ていますね。

ひたすら寡黙で頑固な軍人を演じたジーン・ハックマンも『クリムゾン・タイド』の原形がここにある。
おそらく『クリムソン・タイド』をプロデュースした時も、ブラッカイマーは本作での彼をイメージしていたでしょうね。

部隊に同行する未亡人を演じたカトリーヌ・ドヌーブが相変わらずキレイですね。
撮影当時、まだ彼女は34歳だったのですが、こういった難しい役どころを巧みにこなしています。
特に映画の序盤、ナンパにやってきたマルコに戸惑いながらも、彼に同情的な視線を送ったり、
実に複雑な感情を巧みに表現できています。さすがはフランスの大女優ですね。

監督は75年に『さらば愛しき女よ』を撮ったディック・リチャーズですが、
やっぱり演出面ではイマイチですね。もっと工夫が必要なところはあるし、
何処か品を感じさせるカメラにはなっている一方で、画面に緊張感が欠け、刺激的な映画になっていない。

これならば、『さらば愛しき女よ』の方が魅力的なフィルムだったと僕は思うなぁ。
素材が凄く良いのに、それらがかなり無駄に消費されているかのような作品なんですよねぇ。
何故、これだけスケールの大きな作品が日本劇場未公開作で終わったのか、なんとなく分かる気がしますね。

フォスター少佐が率いる部隊はハッキリ言って、フランスにとっては捨て駒である。
フランスの理論では「自国民よりも外人の方が死を伴う戦いにおいては、好ましい」というのだ。

フォスターの人間性が強調されるのは、彼の中で繰り返される葛藤によるものである。
彼は次から次へと任務を送るフランス政府に対して反感を強めていきます。
しかし、彼は部隊の前で露骨にフランス政府批判はできないわけです。
何故なら、その謀反こそが部隊の士気を乱すものであることは、彼が一番よく分かっているからである。

しかし、いくら外人部隊と言っても人間の命の問題である。
それぞれに家族があり、それぞれの人生がある。だからこそフォスターは悩みます。

しかし、この映画のクライマックスでグッと来るのは、
そんなフォスターがあくまで軍人としての最期を選択し、自身の生き方を貫く点である。
正直言って、僕にはそんな彼の生き方を完全には理解できない。
しかしこの映画のジーン・ハックマンの芝居からは、そんなフォスターの頑固な生き方がにじみ出ている。
不器用とも言える、そんな彼の生き方は誰も止めることができないのだ。

多少のムラが無くもないが、映画の後半に差し掛かるとジョン・オルコットのカメラの良さが際立ちますね。
特に砂漠地帯でのロケはなかり過酷だったのではないかと予想されますが、
彼の気品のあるカメラが映画のグレードを上げている気がしますね。

欲を言えば、ディック・リチャーズにもっと器用さがあれば映画は変わっていただろうけれども、
何となく主人公と同じように融通の利かない映画作りになってしまっているのが残念ですね。

前述のスタッフやキャストは良いし、ストーリー上の着眼点も悪くないだけに、
良い映画を撮る土台は揃っており、こういう結果になってしまって実に勿体ないですね。

まぁジーン・ハックマンの名演技とカトリーヌ・ドヌーブの美貌を拝むためには最適の作品ですが、
戦争映画としてはあまり過度に期待しない方が無難かとは思います。
キツい言い方をすれば、所詮は日本劇場未公開作です。
残念ながら、僕の中では本作が日本劇場未公開作の隠れた傑作とまでは言えませんね。

それにしても、マルコを演じたテレンス・ヒル。彼は良い役者だなぁ〜。なんでブレイクしなかったんだろ?

(上映時間104分)

私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点

監督 ディック・リチャーズ
製作 ディック・リチャーズ
    ジェリー・ブラッカイマー
    ルー・グレイド
原案 ディック・リチャーズ
脚本 デビッド・ゼラッグ・グッドマン
撮影 ジョン・オルコット
音楽 モーリス・ジャール
出演 ジーン・ハックマン
    テレンス・ヒル
    カトリーヌ・ドヌーブ
    マックス・フォン・シドー
    イアン・ホルム
    マルセル・ボズフィ
    ジャック・オハローラン