マネキン(1987年アメリカ)

Mannequin

まぁ映画としての出来はたいしたことないのだが・・・

この際は堅苦しい意見は抜きにして、僕はこの映画が大好きだ(笑)。
いや、何故、こんなに好きなのか分からないけど、80年代のバブリーな空気丸出しの作風と、
スターシップ≠フキャッチーな主題歌のおかげなのかもしれません。

映画は芸術家気取りの若者が、どんな職業に就いてもクビになり続けるのですが、
偶然、職にあり就いた経営不振に悩むデパートで在庫係を担当することになり、
気に入っていたショーウインドウのマネキンを着飾ってウインドウを作成したら、
たちまちそのウインドウが話題となるものの、そこにはチョットした秘密があったというお話し。

エピソードの入れ替わりなど、お世辞にも映画的とは言えないし、
演出も全体的に軽い傾向があって、どうしても感心はできないのですが、
僕はこういう遊び心のある映画ってのは、大切にすべきだと思いますね。

かなりカルトな題材と言えば、それまでですが、
マネキンに恋するなんて、かなり変態じみたネタですが(笑)、まぁいいじゃないですか、可愛らしくて(笑)。

映画は全体的にPOPな感じで、前述したようにかなりバブリーな感じ。
映画が悪い意味でトレンディ化していたことが顕著に表れており、確かに傑作とは言えない。
しかしながら、何より出演者はじめスタッフも楽しみながら映画を撮っているかのようで、
また同時にほとんど無駄のない映画であり、語り口も悪くなく、コメディ・パートも安定感がある。
(ひじょうに充実した内容だと思うのですが、これで89分という時間的なタイトさが素晴らしい)

僕はあまりマイケル・ゴットリーブというディレクターのことは知りませんが、
それぞれのシーンに創意工夫が感じられて、全てが成功していないにはしろ、よく健闘していると思います。

最近はもっぱら、テレビ映画での活動が中心で日本では目立たないアンドリュー・マッカーシーが
芸術家気取りの主人公に扮し、マネキン相手に真面目に恋愛するという変態チックな行動に出るのですが、
撮影当時、25歳とは言え、童顔俳優とも言える利点を活かして、嫌味にならない好演だと思う。

相手役のキム・キャトラルは最近、TVシリーズ『セックス・アンド・ザ・シティ』に出演して、
復活してきた女優さんですが、アンドリュー・マッカーシーより6歳年上とは言え、
一度観たら忘れられないぐらいのキュートさが炸裂し、ひじょうにバランスが良い。

ストーリー自体は、少しカルトだけど、十分にエンターテイメントとしての魅力を残しており、
かなりキワどい内容をも、サラッと描き切ってしまう上手さがこの映画にはあると思いますね。

これは映画のラストシーンに流れる、前述した発売当時、
大ヒットしたスターシップ≠フ主題歌『Nothing's Gonna Stop Us Now』(愛はとまらない)が
あまりに良過ぎる楽曲であったということもありますが、キャラクターを大切にしたことに勝因があると思います。
確かに前述したように映画としては邪道だとは思うんです。半分オモチャにした節(ふし)は感じます。
だけど、こういう登場人物を大切にしたことには、ひじょうに大きな価値があったと思うんですよね。

映画史に残る名作ではないにしろ、今でも本作を愛する人が多いからこそなのか、
本作のDVD化が実現したものの、短期間で販売終了となってしまったため、
今となっては入手困難なソフトの一本として、中古ソフトにしても高値で取引されているようです。
(実は僕も“喉から手が出るほど”欲しいソフトの一本なんです・・・)

また、徹底して嫌がらせをするデパートの若手役員を演じたジェームズ・スペイダーがベタだけど、上手い(笑)。
彼はこの時期、数多くの映画に出演しておりますが、ここまでのコミカルさを見せたのは貴重かもしれません。
走って主人公を追いながらも、グリースでベッタリのヘアスタイルを気にする芝居の細かさが抜群に良い(笑)。

まぁ80年代の映画ファンなら、ストライクゾーンな人も多いでしょう。
昨今の映画界も、こういった映画の作りをマネする必要はないけれども(笑)、
登場人物のキャラクター造詣を大切にする姿勢というのは、見習って欲しいと思いますね。
やっぱり、こういう姿勢というのは、作り手が如何に愛着を持って映画を作っているかが分かりますね。

ラストはややご都合主義的なニュアンスにはなりますが、これは許容範囲でしょう。
特にエンド・クレジット直前、ショーウインドウでのラストシーンの爽快さは抜群に素晴らしい。

しかしながら、その分だけ映画の前半に若干の甘さがあることは否めない。
それはヒロインの古代エジプトに関するエピソードの弱さ、そして主人公がデパートで働くこととなった
キッカケであるデパートの看板を使ったドンチャン騒ぎで、これらがあまりに軽過ぎるのが勿体ない。

元々、コミカルな映画ですから、こういった軽さがあるのは仕方がないことではあるのですが、
要所ではポイントを押さえた演出ができていれば、もっと映画は良い方向へと変わっていたでしょうね。
こういった部分はディレクターの経験値の差が出てしまうところで、ターニング・ポイントだと思いますね。

前述したように、この映画はDVD発売されたものの、
アッという間に終売となってしまったようです。僕は今、必死になって探しています(笑)。

そりゃお金を出せば、中古で買えるようだけど、定価で手に入れたいので、
できれば今一度、メーカーさん、頼むから再発売して!(笑)

(上映時間89分)

私の採点★★★★★★★★★☆〜9点

監督 マイケル・ゴットリーブ
製作 アート・レビンソン
脚本 エドワード・ルゴフ
    マイケル・ゴットリーブ
撮影 ティム・サーステッド
編集 リチャード・ハルシー
音楽 シルベスター・リベイ
出演 アンドリュー・マッカーシー
    キム・キャトラル
    ジェームズ・スペイダー
    G・W・ベイリー
    エステル・ゲティ
    キャロル・デービス

1987年度アカデミー主題歌賞(スターシップ) ノミネート