メジャーリーグ(1989年アメリカ)

Major League

今は“クリーブランド・ガーディアンズ”というチーム名に改称しましたが、
かつての“クリーブランド・インディアンズ”が地元からもソッポを向かれ、成績も低迷している弱小球団として描かれ、
球団オーナーが徹底して成績を悪くして、チームをマイアミに移転して、メンバーを総入れ替えしようと画策するも、
集められた最弱メンバーだと思われたロートル選手が奮起して、リーグ優勝を目指す姿を描いた野球映画。

劇場公開当時も大ヒットしたことが物語るように、確かにこの映画は面白いと思う。
野球大国のアメリカなだけあって、かつて何本の野球映画が撮られましたが、その中でも本作は有数の出来でしょう。

実際、当時の“クリーブランド・インディアンズ”はチーム成績が長年低迷していて、
地元の都市であるクリーブランド市民の人気もイマイチで、それを盛り上げる意図もあったようだ。
野球が下手な僕が言うのもナンですが...お世辞にもキャストたちは野球が上手くは見えないが、
作り手が如何にも野球好きなのだろうなと思わせる作りで、上手くカバーしているのが逆に好印象でしたね。

本作が大ヒットしたおかげで、続編が3本製作されましたが、やはり第1作のインパクトが最も大きく、
続編はほぼヒットしなかった記憶があります。日本人としては、石橋 貴明の出演が嬉しかったですけどね・・・。

スタジアムの興奮を収めたような臨場感はなかなかの迫力で、
映画の冒頭で描かれた不人気なガラガラのスタジアムの空気感とは好対照で、かつて日本でも同じようなことがあった。
やはり90年代初頭までの日本のプロ野球で言えば、川崎球場時代の“ロッテ・オリオンズ”の閑散ぶりは凄まじかった。
今や、千葉の幕張に本拠地を移して、サッカーのサポーターみたいな熱狂的な応援が有名にはなりましたが、
川崎球場時代は観客動員が真剣に数え切れるくらいしかいないとか、暇つぶしに来ている人しかいないとか、
半ば2人っきりの時間を過ごすために来ているカップルとか、そんな感じでしかなかったという時代がありました。

それがチーム成績が上がれば、一気に地元も応援し始めるという展開であって、
これは現実的にもそうだと思う。だから、プロ野球球団って、まずは勝つために最善の策を撃たなければならないわけ。

“ロッテ・オリオンズ”の例で言えば、観客動員不振で千葉に本拠地を移して、
“千葉ロッテ・マリーンズ”というチーム名に改称して、ボビー・バレンタインを監督に招聘したりして、
今で言う地域密着のスタイルをとって、徐々に人気を集めていったという事例であって、球団も相当に苦労したと思う。

どちらが先なのか、という議論もあるけど、一般的にはチーム成績と観客動員は比例していくわけで、
チームが上位争いすれば、地元の人々も見に行こうかという話しになるし、メディアの注目度も高まる。

最近、“北海道日本ハムファイターズ”がエスコンフィールド北海道を開場させて、
いろいろと話題になりましたが、あれはあれで新しいチャレンジで単なるボールパークに留まらない構想で、
野球以外のエンターテイメントを提供することで、オールシーズン楽しめる娯楽施設にしたいというコンセプトだ。
北海道へ旅行したついでに、観光地の一つとして見に来て欲しいという意図があるようで、大きな挑戦だと思う。

勿論、チーム成績が良いことに越したことはないが、エスコンフィールド北海道の場合は
球団の野球だけに依存しない経営を目指しているようにも聞こえ、賛否両論なことは分かるが、
野球観戦する上では、どの位置から観易いとか、フィールドレベルが近いとか、基本的なことはクリアしているので、
今後、この施設がどう運営できるか、数年後にどうなっているかということで、日本の球団経営が変わっていくかも。

本作でも語られていますが、プロ野球球団の経営というのはマネーボールそのものなので、
特にアメリカはメジャーリーグは必要な契約は結ぶものの、その後もとてもドライなところがあると言われる。
実際に経験したプレーヤーからは、意外に家庭的かつ温かいところがあるとも言われていますが、
戦力をどう評価するかという観点では、数値化して管理することで選手の契約をどうするか、大きく左右するわけです。

春季キャンプで描かれていますが、本作は練習後の自分のロッカーに
赤紙が貼られていれば、事実上の契約終了(解雇)を意味するというエピソードがとても興味深かった。
まるで日本の戦争のような話しではありますが、これは確かに毎日のようにロッカーを開けるのが怖いですよね。

チームの中心メンバーはロートル選手ばかりですが、見た目、40歳過ぎてそうな人ばかりというのがツラい(笑)。
主演のトム・ベレンジャーにしてもアスリートの体型してないですよね。できれば、もう少し“作って”きて欲しかった。
そういう意味では、足がやたらと速いウィリーを演じたウェズリー・スナイプスは、本作が出世作になりましたねぇ。
後にB級アクションばかりに出演するようになってしまいましたが、本作の頃はブレイクしそうな雰囲気が漂っている。

しかも、主人公ジェイクのかつての恋人リンを演じたのがレネ・ルッソだというのも、チョット驚いた。
最初に観たときはそこまで目立っていたわけではなかったのですが、本作が彼女のデビュー作だったんですね。

とは言え、野球映画としてほぼ結末が見えているような内容になっているのは賛否が分かれるな。
ウィリーの離塁を表現するアングルであったり、ホームラン打って大歓声のスタジアムの大観衆に応えるために
ベンチからもう一度出てくるシーンなど、作り手が野球が大好きで“クリーブランド・インディアンズ”に愛着があるのは
映画を観ていて、よく分かるのだけれども細部の作りが甘いのと、結末が見えていて、そのまま終わるのは難点かな。

同じ結末であったとしても、あまりにトントン拍子に行き過ぎるので、
このロートル選手の集まりが、どのようにして技術的かつ肉体的な限界を乗り越えて奮起するのか、
もっと丁寧に描いて欲しかったし、これだけの快進撃を突然展開し始めるというには、少々説得力が弱い。
キャストが揃いの揃ってメジャーリーガーの体や動きをしているわけではないので、それは尚更のことだったと思う。

そういう意味では、チャーリー・シーン演じる刑務所にいた球が速いだけのヴォーンが
実は視力が悪いことだ原因の制球難というのも弱い。これはピッチングフォームから見直すとか、
そういった技術的な側面から描いた方が、“本物っぽい”。細部の粗さをカバーするものが、必要だったと思います。

よくメジャーリーグとマイナーリーグの扱いの差が大きいことが語られることありますが、
本作で描かれる“クリーブランド・インディアンズ”は球団経営が大赤字なせいか、スゴい選手の扱いが悪い。
マイナーリーグのように全てが高速バス移動というわけではなさそうだけど、球団がチャーターする飛行機は
なんだか不安にさせられるような小さなプロペラ機だし、お世辞にも乗り心地が良くなさそうなキツい移動を強いられる。

ここまでではないにしろ、日本でも所属球団による格差はあるわけで、マスコミの注目度も多少なりとも違う。

ちなみにトム・ベレンジャーとチャーリー・シーンは86年の『プラトーン』でも共演していて、
『プラトーン』では険悪な関係として演じていましたが、本作では一転してバッテリーを組んでいて、
ベテラン捕手のトム・ベレンジャー演じるジェイクが、新人投手のチャーリー・シーンを導くという構図が面白い。

日本でも“恋女房”と言われるくらい、ピッチャーとキャッチャーの関係は繊細なものですからね。
まぁ、アスリート体型ではないとは言え、トム・ベレンジャーくらいドシッと構えてくれたら、投手は投げやすいでしょう。

本作の熱狂ぶり、劇場公開当時のヒットを思うと、やはりアメリカにとって野球とは特別な存在なのだろう。
NBAやアメフトも熱狂的なファンが多いですけど、野球のスケールの大きさも桁違いにスゴいですね。
これだけの熱狂ぶりだと、やっぱりグラウンドに立つ選手たちの興奮や高揚感は筆舌し難いものでしょうね。
本作はそういった現場の興奮を画面に吹き込めることができただけで成功だったと言っていいと思います。

実際に“クリーブランド・インディアンズ”は本作の製作をキッカケにしたように奮起し、
95年以降は地区優勝の常連チームになり、リーグ優勝も果たすなど、弱小チームを卒業することになりました。
(2022年から時代の流れもあって、チーム名を“クリーブランド・ガーディアンズ”に改称することになりましたが)

(上映時間106分)

私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点

監督 デビッド・S・ウォード
製作 クリス・チェサー
   アービー・スミス
脚本 デビッド・S・ウォード
撮影 レイナルド・ヴィラロボス
音楽 ジェームズ・ニュートン・ハワード
出演 トム・ベレンジャー
   チャーリー・シーン
   コービン・バーンセン
   マーガレット・ホイットン
   ジェームズ・ギャモン
   レネ・ルッソ
   ウェズリー・スナイプス
   デニス・ヘイズバート
   ボブ・ウェッカー