ラッキーナンバー7(2006年アメリカ)

Lucky Number Slevin

「映画は少しクドいぐらいが、丁度良い」と僕はずっと思っていたのですが、
本作を観ると、チョット...その持論(?)も変わってしまうかもしれません(苦笑)。。。

いや、何が言いたいかって言うと...
本作は人違いから、ギャングと無関係な青年が敵対する2つのギャングの抗争に巻き込まれ、
身に覚えのない借金から彼らに脅迫され、片方のボスの同性愛の息子を殺害するように指示を受け、
アパートの隣家に住むリンジーという女性が、2つのギャングの謎をかぎ回る様子を描いているのですが、
まぁ多くの観客が予想されるように、当然、このストーリーには大きな秘密があります。

それが映画の後半になって明らかになるのですが、
いずれの謎解きも、やや説明的になり過ぎる傾向があり、もっと省略してもいい部分が多くあったと思う。
それと併せて、映像上のリフレイン(繰り返し)も少々クドい。これらは考え直した方がいいと思いますね。

確かにただただ不親切な映画よりも、親切な映画の方が好感は持てるのですが、
本作のように全体的に説明的になり過ぎる傾向が散見されるとなると、“無駄”が多い映画に感じられますね。

あと、これをスタイリッシュな映像と言うのかもしれないけど、
小ざかしい編集が過ぎたせいか、随分と落ち着きのない映画に感じられて、急ぎ足に感じますね。
これは決して演出のテンポが良いというわけではなくって、なんか作り手が焦ってる感じなんですよね。
結果、ドタバタとして忙しない映画になってしまって、観ていてもなんか落ち着かない。

確かに映画の表現技法は変わりゆくものであることは認識しておりますが、
本作のようなスタンスがどうしても僕には映画的なものとは捉えられませんね。
じゃあ何かと聞かれると...強いて言えば、PV(プロモーション・ビデオ)のような感覚ですね。
僕は映画のPV化というのは、映画の醍醐味を失することの原因となるので根本的に反対なんですよね。
おそらくこれが決定的な要因になって、僕はどうしても本作に感心することはできなかったんですよね。

あと、これだけの豪華キャストを集めながら、こんな内容にしかできなかったのも残念。
特にお互いに敵対するギャングの2人のボスとして、モーガン・フリーマンとベン・キングズレーが出演して、
堂々と渡り合う駆け引きと期待していたのですが、この2人がまるで期待ハズレな結果でしかありません。
せっかくのキャスティングを、全く活かせていない好例となってしまったような感がありますね。

但し、しっかりとした手順を踏んで、破綻した映画にはしたくないとする、
作り手の意図は汲み取れる内容ではあるかな。だからこそ、ここまで説明的になったのでしょう。
それがこの映画の良いところになっていて、真相を明かすエピソードに無理は感じさせられません。

だからこそ思うのですが、ドンデン返しのサスペンス映画と思われたら、
ひょっとしたらこの映画は楽しめないかもしれませんね。思いのほか、早い時間からタネ明かしが始まって、
映画の後半の大半をタネ明かしに費やしますので、別にアッ!と驚くラストというわけではありません。
この時点で、本作の作り手がドンデン返しに主眼を置いていないことは明らかなのです。

あたかもギャンブル的な駆け引きを描いた映画であるかのように宣伝されていますが、
決して本作はそうではありません。”ラッキナンバー”が7だった男の物語というわけではありません。
個人的にはどうしてこんな邦題を付けたのだろうかと疑問に思えて仕方がありませんね。

まぁ正直言って、これだけのキャストを集めた豪華な映画であるにも関わらず、
日本ではあまり大きな話題とならずに劇場公開が終了してしまった理由が何となく分かる出来かな。
駄作とまでは断言できないが、あまり痛快に楽しめる内容とは呼べないのが残念ですね。

個人的には拉致した子供を殺せなかったブルース・ウィリス演じる殺し屋が
どのように生きてきたかをもっと詳細に描いた方が、ずっと映画は良くなったと思いますね。

このエピソードを割愛しなければ、もっと映画に納得性は増したであろうし、
もっとブルース・ウィリス演じる殺し屋を掘り下げることができたでしょうね。
と言うのも、彼のキャラクターを掘り下げなかっただけに、この映画を観る限りでは躊躇なく人殺しができる
自称“最高の殺し屋”なだけに、ラストシーンでは再び銃を取り出す方が、ずっと自然に思えてならないのです。
そういう意味では、このラストにもっと納得性を持たせるために、彼の情に厚い部分は描いておくべきなのです。

ちなみにアパートの隣人の女性リンジーを演じたルーシー・リューは、
00年代前半はハリウッドで活躍するアジア人女優として注目されていましたけど、
最近はあまり大きな役が回ってこなかっただけに、本作では久しぶりに目立っていて嬉しかったですね。
ジョシュ・ハートネットとの10歳の年の差も、あまり気にならない活き活きとしたヒロインで悪くないですね。

まぁポール・マクギガンはまだまだこれからの映像作家ですし、
これからも期待していきたい映像作家の一人ですね。面白い着眼点を持ったディレクターだと思います。

ただ、僕がニブいせいなのは重々承知なのですが...
映画の冒頭で登場した空港のロビーに座る若者がブルース・ウィリス演じる殺し屋と話すシーンから、
最後に「死体が必要だったんだ」という台詞が登場する一連のシークエンスって、
一体どんな意味があるのだろうか? 恥ずかしながら、映画を最後まで観ても、よく分からなかった(恥)。。。

とまぁ・・・この映画を楽しめなかったのは、僕のニブさにも問題があるのかもしれません(涙)。

(上映時間110分)

私の採点★★★★★☆☆☆☆☆〜5点

日本公開時[R−15]

監督 ポール・マクギガン
製作 クリストファー・エバーツ
    アンディ・グロッシュ
    キア・ジャム
    ロバート・S・クラビス
    タイラー・ミッチェル
    アンソニー・ルーレン
    クリス・ロバーツ
脚本 ジェイソン・スマイロヴィック
撮影 ピーター・ソーヴァ
編集 アンドリュー・ヒューム
音楽 ジョシュア・ラルフ
出演 ジョシュ・ハートネット
    ブルース・ウィリス
    ルーシー・リュー
    モーガン・フリーマン
    ベン・キングズレー
    スタンリー・トゥッチ
    ピーター・アウターブリッジ
    マイケル・ルーベンフェルト
    ミケルティ・ウィリアムソン
    ダニー・アイエロ