リトル★ニッキー(2000年アメリカ)

Little Nicky

これはいわゆる“お●カ映画”の典型ではありますが、
ハリウッドもたまにこういうのを許容して製作するのだから、実にユニークですね。

キャスティングも含めて、おそらく本作はかなりの予算を要した企画だと思うのですが、
当時は人気コメディアンから映画スターに転身した、アダム・サンドラーの全米では人気が凄かったので、
彼の勢いにノッて実現した企画という感じで、いつものように彼自身もプロデュースで参加しており、
豪華なゲスト出演にも恵まれたものの、予想していたほどの興行収入を得られませんでした。

あまりにくだらない笑いで覆われた映画なのですが、
正直に言うと、日本人とアメリカ人の笑いのツボは異なるので、本作を観る前には
予めアダム・サンドラーの笑いのツボを知っておいた方がいいような気がします。
それでイケそうだと思ったら、本作を観た方が良いですね。かなり個性的で独特な世界観があるので。

映画の出来自体はそんなに悪いとは思わないし、
アダム・サンドラーの笑いとしては、これはそんない“外した”ギャグを連発した映画というわけではないだろう。

実は僕は本作を内容を忘れかけた頃に3回ぐらい観ているのですが(笑)、
観るたびに印象は良くなりつつある作品の一つで、ある意味では“スルメイカ”のような作品かもしれません。
そういう意味で、アダム・サンドラーの笑いのツボを知っておいた方が、ずっと楽しめるタイプの映画なんです。

洋楽も詳しいと、確かに楽しめるようになっていて、
映画のクライマックスでゲスト出演したオジー・オズボーンが登場するというサプライズもそうだし、
地獄を崇拝する男2人と酒盛りをしていたときに、一人の男がオジー・オズボーンを主人公に聴かせようとするも、
「いやいや、違うんだ」と言わんばかりにシカゴ≠フレコードを逆回転させる裏技を使うと、
実は悪魔のメッセージが聴こえるという小さなギャグが、洋楽好きなら可笑しく思えるでしょうね。

それと、映画好きも思わずニヤリとさせられてしまうのは、
兄貴が悪知恵をはたらかせて、刑事に乗り移ったときに記者会見を開いて、
「あの男はヒーローでもなんでもありません。昨日のバスケの試合の後の映像をご覧ください」と言って、
何故か83年の映画『スカーフェイス』でアル・パチーノがライフルをブッ放すシーンで、
全てアル・パチーノの顔がアダム・サンドラーの顔に合成されているのは、可笑しかったですね。

僕は映画を観始めた頃に、何故か『スカーフェイス』を観てしまい、
トラウマになるのではないかというぐらいの衝撃を受けたので(笑)、これはツボでしたね。

普通に主人公のニッキーが「アル・パチーノの顔がオレに変わっただけじゃねぇーかよ!」と
テレビに向かって冷静にツッコミを入れているあたりも、何故か妙に面白かったですね。

映画は地獄の帝王を父に持つ主人公ニッキーが、
2人の兄にイジめられており、それを見かねた父が「次の1万年の帝王は私だ」と宣言したことから、
2人の兄は反発し、下界へと飛び込んでしまい、それによって父の命があと僅かという状況に陥り、
ニッキーが下界で暴れ回る2人の兄を捕獲するため、初めて下界へと行き、様々なギャップに悩まされながらも、
一目惚れした女性バレリーらの協力を得ながら、兄2人の捕獲に奔走する姿を描いています。

まぁこの帝王サタンを演じたハーベイ・カイテルが珍しくコミカルな芝居を披露しており、
『バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト』などでブッ飛んだ芝居をしていたのとはまた別な意味で、
従来のイメージを覆して、コメディ演技も十分にできることを証明した一本になっていますねぇ。

主人公の父親は映画の最初から登場していますが、
主人公の母親は映画の後半に、少しだけ登場してきます。この母親役をリース・ウィザースプーンが
ウキウキ楽しそうに演じていましたが、ハーベイ・カイテルが父で彼女が母親という設定が凄い(笑)。
(ちなみにリース・ウィザースプ−ンはゲスト出演という扱いのようです)

映画のエンド・クレジットまでも悪趣味な感じで、
脇役キャラクターとして登場した犬のビーフィが、ドブネズミの恋人ヘザーと再会して、
5ツ子が生まれたというのを、合成映像でワザワザ見せるという懲りっぷりで、この徹底ぶりが良い(笑)。
(まるでコラージュのように、犬とネズミを足して2で割ったようなデザインなので、結構グロテスク・・・)

製作当時はコメディ映画として異例な規模の予算だったと聞いていますが、
そんな高額な予算を要してまでも、ここまで悪趣味なギャグを行うという余裕が、ある意味で凄いですね。
この企画、「9・11」以降のハリウッドではしばらく通らなかった類いの企画ではないでしょうか。

しばらくアダム・サンドラーの人気はアメリカでは衰えませんでしたが、
日本では相変わらず映画スターとしても、知名度が上がらない状態で、本作もヒットしませんでした。

00年代に入ると、急激にシリアスな映画への出演が増え始め、
新境地を開拓した感があるアダム・サンドラーではありますが、たまには本作みたいなのも観たいなぁ。
最近は本作の頃ほどの勢いもありませんから、製作される映画自体がおとなしいのですが、
本来的にはこういう“おバ●映画”で大暴れするというのが、アダム・サンドラーの姿なのでしょうし。

とまぁ・・・やや映画の方から、観客を選ぶタイプの映画になってしまっているあたりは残念ではありますが、
これはアダム・サンドラーのハチャメチャぶりが好きな人には、是非ともオススメしたい作品で
贅沢に贅沢の限りを尽くした“お●カ映画”であります。その面白さを理解できる人は、是非。

(上映時間90分)

私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点

監督 スティーブン・ブリル
製作 ジャック・ジャラプト
    ロバート・シモンズ
脚本 ティム・ハーリヒー
    アダム・サンドラー
    スティーブン・ブリル
撮影 テディ・カステルッチ
    テオ・ヴァン・デ・サンデ
出演 アダム・サンドラー
    パトリシア・アークエット
    ハーベイ・カイテル
    リス・エバンス
    トム・“タイニー”・リスターJr
    ケビン・ニーロン
    ジョン・ロビッツ
    ルイス・アークエット
    リース・ウィザースプーン
    ダナ・カービー
    ロドニー・デンジャーフィールド
    オジー・オズボーン
    ヘンリー・ウィンクラー
    クエンティン・タランティーノ
    マイケル・マッキーン

2000年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト作品賞 ノミネート
2000年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト監督賞(スティーブン・ブリル) ノミネート
2000年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト主演男優賞(アダム・サンドラー) ノミネート
2000年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト助演女優賞(パトリシア・アークエット) ノミモート
2000年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト脚本賞(ティム・ハーリヒー、アダム・サンドラー、スティーブン・ブリル) ノミネート