リーサル・ウェポン4(1998年アメリカ)

Lethal Weapon 4

第1作から10年以上が経過し、前作から6年経ってから製作された第4作。
現時点でのシリーズ最終章ですが、幾度となく第5作の製作の情報が流れている人気作です。

僕はこの第4作を、劇場公開当時、映画館で観ましたが、
当時は結構なヒットで、映画館も混んでいた記憶があり、それだけ待望の第4作でした。
リアルタイムで観た当時も感じていましたが、この第4作は完全に失速したと言ってもいい内容でした。

相変わらずのアクションとコメディの配分ですが、
正直言って、第3作と比較すると映画のテンション含めて、あらゆる面で見劣りします。
第3作では、映画の冒頭からいきなりビル1棟を爆破してしまいましたが、
今回はロサンゼルスの市街地で、火炎放射して暴れるターミネーターのような犯罪者を
マータフがパンツ一丁になって興味を引き付けている間に、燃料タンクに被弾させるというところから始まっていて、
これが作り手の狙いに反して、すべてが空振りに終わってしまった感じで、どうにもリズムに乗り切れない。

リッグス演じるメル・ギブソンも年をとったような印象がありますが、
香港から来た、チャイニーズ・マフィアを演じたジェット・リーの素早いカンフー・アクションに
ひたすら「オレたちは年をとったんだ」とお互いに労わりながら、老体に鞭打つように闘うリッグスとマータフの姿に、
このシリーズを続けていくことの限界を感じるというか、ハードなアクションが似合わなくなっていきます。

撮影現場はそうとうにアットホームな雰囲気だったようで、
映画のエンド・クレジットは、まるでこれまでのシリーズの総集編とも言うべき雰囲気で、
この作品を撮影完了させ、編集していた段階では、ほぼ間違いなくリチャード・ドナーは本作で
この『リーサル・ウェポン』シリーズを終わらせるつもりだったのでしょう。如何にも、そんな雰囲気漂う内容です。

しかし、21世紀に入って、何故かTVドラマでシリーズ化され、
高視聴率を叩き出したり、ハリウッドのプロダクションもなかなか安定した人気アクション・シリーズというのを
生み出せなくなってしまっていたことから、いつまでも第5作の誕生を待望する声が絶えません。

しかし、この第4作の時点でリッグスとマータフが加齢と闘いながらの内容なので、
これが20年以上も経っての第5作なんて、一体どんな内容になるのかと、疑問は尽きません。

ところで、今回の敵となるのは香港からやって来たチャイニーズ・マフィアを演じるジェット・リー。
アメリカで偽札を作るために、偽造技術の高い多くの中国系移民を密入国させ、アメリカで労働させながらも、
自分は生き別れた兄弟との再会を果たすという目的があるのですが、今回はやたらと格闘シーンが多い。
ほとんどがカンフー・アクションなのですが、そういう点では今回のジェット・リーはシリーズ最強でしょう。

前作ではビル1棟を吹っ飛ばしたり、ハリウッドの威信をかけるかのように
莫大な予算を投じて、豪快な演出を見せてくれていたのですが、本作ではどちらかと言えば、
派手な演出よりも、カンフー・アクションの方が目立ちます。リッグスもマータフもアクションの速さについていけません。

強いて言えば、カー・チェイスの途中で高速道路からオフィス・ビルのド真ん中に突っ込んで、
オフィス内を車で荒らしながら、通り抜けるという豪快なシーンがあるにはあるのですが、
前作でのインパクトに比べたら、本作のそれはそこまでインパクトが強くはないですね。

本作で登場してきたのは、心理学の学位を持った刑事バターズを演じたクリス・ロックで、
彼はスタンダップ・コメディアンとして活躍していて、当時、全米では大人気の存在でした。
日本での知名度はイマイチだったのですが、本作に出演したことで、当時は日本でも知名度は上がったはずです。
でも、映画を観ていても、どこか噛み合っていないというか、悪い意味で“浮いた存在”になってしまっている。
そもそも、どこか中途半端と言うか、作り手が彼に何をさせたくて登場させたのか、よく分からなかったですね。

ジョー・ペシ演じるレオ・ゲッツは本作での登場してくるわけで、
キャラクター的にどこか被る存在で、「こういった存在は2人はいらないかなぁ」というのが本音。

スタンダップ・コメディアンとしての魅力を生かしたいのなら、もっとウザい存在にして欲しいし、
もっとコメディ・パートで笑わせて欲しい。知性派キャラとしてであれば、これでは騒がし過ぎる。
どこか徹底し切れなかった面があるのは否めず、せっかくのクリス・ロックのキャスティングだっただけに勿体ない。

僕にはやはり心理学の学位(修士か博士か分かりませんが...)を持った刑事に
クリス・ロックという配役は、チョット無理があるというか、彼には不釣り合い過ぎるように見えます。
当時のクリス・ロックにも、その違和感を取り払うだけの芝居の上手さも無くって、どうにもシックリ来ない。

あと、劇場公開当時、リッグスとマータフが昇進したという宣伝文句で、
あたかも映画の中で大きなファクターになっているかのようでしたが、本編で2人のの昇格は
そこまでの意味合いは持っていないですね。確かにリッグスとマータフが捜査の過程とは言え、
あまりに物を破壊し過ぎるので、警察も保険がきかないので、リッグスとマータフを内勤にさせて大人しくさせるために、
強制的に2人を昇格させるというエピソードはあるのですが、映画全体としては、そこまでの意味は強くないですね。

映画のラストシーンを観ると、如何にもシリーズの終わりを告げるような終わり方ですので、
どこか寂しさもありますが、どちらかと言うと、愉快な雰囲気で終わらせているのを観ると、
本シリーズの撮影現場というのは、当時のスタッフにしてみれば、とても楽しかったのでしょうねぇ。
それがよく分かるフォトグラフの数々でエンド・クレジットが綴られていて、シリーズを一気に振り返る感じです。

まぁ・・・本作は第3作から6年も待たされた第4作だったので、
ファンの間でも期待値が高く、待望の作品でしたが、今回はギャグが全般的に不発でしたね。
正直言って、空振りしているところが多く、前作までの勢いは無かったように思います。

そういう意味では、少しネタ切れ感のある作品だったのかもしれませんね。
ただ、本作のファンの一人として思うのは、これは許してやって欲しいシリーズ最終章だということ(笑)。

これで仮に第5作ができたら、また気持ちが変わるのかもしれませんが(笑)、
シリーズを気持ち良く終わらせるためにも、この第4作がファンにとってはどうしても必要だったのです。
この映画のエンド・クレジットでのスナップ・ショットが綴られたアルバムを折り畳むことで、
ファンも気持ちを落ち着かせて、シリーズの終焉を感じることができたので、映画の出来は不問にしてあげて欲しい。

(上映時間127分)

私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点

監督 リチャード・ドナー
製作 ジョエル・シルバー
   リチャード・ドナー
脚本 チャイニング・ギブソン
撮影 アンジェイ・バートコウィアク
音楽 マイケル・ケイメン
   エリック・クラプトン
   デビッド・サンボーン
出演 メル・ギブソン
   ダニー・グローバー
   ジョー・ペシ
   レネ・ルッソ
   クリス・ロック
   ジェット・リー
   ダーレン・ラヴ
   トレイシー・ウルフ
   スティーブ・カーン

1998年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト助演男優賞(ジョー・ペシ) ノミネート