リーサル・ウェポン3(1992年アメリカ)

Lethal Weapon 3

87年に第一作が製作されてから、
ワーナー・ブラザーズを代表する人気シリーズとなり、大ヒットした第3作。

まぁ、結局、4作続いたシリーズなので、いろいろな意見はあるだろうけど・・・
個人的には本作が一番、楽しいというか、充実感溢れる作品に仕上がったと思っています。

確かに第1作のストイックさは完全に失われ、ここまでいってしまうと、ほぼ完全にコメディ映画だ。
メル・ギブソンとダニー・グローバーのやり取りも、開き直ったかのようにギャグの応酬になっているし、
ジョー・ペシ演じるレオ・ゲッツも、メイン・ストーリーにはほぼ絡んでこないのも寂しい。

レネ・ルッソ演じる内務調査官ローナと、主人公リッグスのキス・シーンになだれ込む、
2人の傷自慢大会もやはりギャグ化しているし、第1作の雰囲気に惹かれたファンには
全く別物の映画に感じるだろう。でも、僕にとっては、その作り手の開き直りが清々しいくらいだ。

よく、この頃あたりから「ハリウッドは破壊を楽しむようになった」と
批判的な見方をされることが多くなり、確かに本筋に関係あるかのように不必要なくらいに
過剰な爆発シーンを描いた映画が数多く量産され、本作もその一つと見る向きは強いかと思いますが、
とは言え、この映画の爆破シーンは映画の本筋とほぼ関係ないと、作り手が開き直って撮っているように見えます。

それは、映画の冒頭の爆弾が仕掛けられた車が発見されたビルが、
リッグスとマータフの暴走(...いや、リッグスの暴走か・・・)によって、完全崩壊するシーンに
象徴されているのですが、言わば、このビルの爆破シーンそのものが“マクガフィン”と言っていいだろう。

それからは、ほぼ無駄なところがないと言っていいぐらい、
実にコンパクトに見せ場が連続する作りになっていて、さすがはリチャード・ドナーの職人芸だ。

映画は悪徳警官だったジャックが、警察事情に通じていることを悪用し、
防弾チョッキをも貫通させる、通称“コップ・キラー”と呼ばれる弾丸を警察倉庫から盗み出し、
ロサンゼルス郊外の都市開発を牛耳り、薬物犯罪などが蔓延る裏社会に暗躍することを
止めるために、外勤に回されていたリッグスとマータフが、刑事に復帰して追い詰めていく姿を描きます。

現実に警察署から、押収物を自由に盗み出せるなんてことがあったら大変ですが、
警察署のセキュリティの甘さを悪用するという発想自体、あまり映画の中で描かれてこなかったことで、
これはこれで製作当時は、センセーショナルさを帯びたストーリー展開であったと言えると思います。

ジャックを演じるスチュアート・ウィルソンが、残念ながらそこまでの存在感が出ていないのですが、
そこにはリッグスの過去との接点が皆無であるということも、少しあるのかもしれません。
リッグスがかつて、知っている警察官だとか、何か複雑な事情を絡ませる設定であれば、尚良かったかと思います。

そういう意味では、第2作の南アフリカ大使館の殺し屋ハンスなんかは、
それなりに良い意味でのインパクトを残せていたキャラクターだったのではないかと思いますね。

シリーズ通して観ていて思ったのですが、この第3作が一番テンポが良い。
相変わらず次から次へとアクションが連続して、見せ場を凝縮したような作品には仕上がっているが、
適度なシリアスさと、コメディのバランスが丁度良く、良い意味で充実した作品に仕上がっていると思います。

なので、個人的にはこのシリーズは本作で一つの終焉を迎えたと言っても過言ではありません。
ハッキリ言って、98年に製作された第4作はオマケ的な作品という感じで、言わば「番外編」だと捉えています。
まぁ・・・思えば、エンド・クレジットの終わりにある、オマケ・シーンのようなビルの爆破シーンを観ると、
作り手も当初から、「まだ続くよ」と言わんばかりに第4作の製作を考えていたようにも見えなくはありませんがね・・・。

本作最大の見せ場は、警部を拉致して逃げるジャックを
建設中のロサンゼルス市街地の地下鉄工事現場から、高速道路の工事現場に至るまで、
リッグスが最初は走って、途中からバイクで追跡するシーンで、お約束の落下シーンまでテンションMAXだ。

この一連チェイス・シーンの終わりに、ジョー・ペシ演じるレオが高級車で現場に乗りつけ、
興奮しながら警察無線を片手に「いやぁ〜、スッゲェーな!」と狂喜しながらやって来るウザったさも最高(笑)。
この辺は本シリーズらしさというのを、リチャード・ドナーはしっかりと貫き通しており、首尾一貫している。
破壊を楽しむハリウッドでいながら、幾多の映画が作られましたが、本作ほど首尾一貫したものを
貫き通した作品というのは数少なく、やはりジョエル・シルバーとリチャード・ドナーのコンビは凄かったですね。

00年代に入ると、色々なスキャンダルがまとわり付いて、
しっかり俳優としての地位を失ってしまったメル・ギブソンですが、当時はハリウッドを代表するスターであり、
間違いなく本シリーズへの出演が、オーストラリアからやって来た彼をスターダムにのし上げました。
そうなだけに、本作でも彼は実に楽しそうにリッグスを演じていて、映画に良い意味でアットホームさが出ましたね。

おそらく本シリーズのファンには、色々なタイプがいると思うのですが、
個人的にはこの続編のアットホームさこそが、本シリーズの真髄であると感じていて、
それは第4作を撮り終えた頃のリチャード・ドナー自身が話していたことで、スタッフの団結力も強かったのでしょう。

本作でも、ややマータフ刑事が置かれる環境として、人種問題に軽く触れられていますが、
やはり本シリーズの特徴として、あくまで人種問題に傾倒し過ぎることなく、シリアスになり過ぎることはありません。
これは作り手のあくまでエンターテイメント作品として楽しんでもらいたいとする、意思表示でもあると思う。

ちなみに本シリーズの音楽は、相変わらずのエリック・クラプトンが担当している。
時折入ると、泣きのギターが映画を彩っていますが、嬉しいことに本作のオープニングを飾る曲は
スティングの It's Probabry Me(イッツ・プロバブリー・ミー)で、これが最高にクールでカッコ良く、
エンド・クレジットではエルトン・ジョンの Runaway Train(ランナウェイ・トレイン)で、これはクラプトンとの競演だ。

元々、エルトンとクラプトンは旧友であり、88年のクラプトンの25周年アニヴァーサリー・ツアーで、
エルトンをゲスト・ミュージシャンとして来日しているし、そこにスティングが飛び入り参加なんてこともありました。
90年代に入ってからも、エルトンとクラプトンはジョイント・ツアーをやったり、接点が多かったので、
本作のサントラへの参加は想像に難くない状況でしたが、それでも凄く贅沢なサントラですよね。

とまぁ・・・色々と恵まれた映画ではありますが、
CGで誤魔化そうという発想が一切ない、サービス精神たっぷりの姿勢に感服の一作です。

(上映時間117分)

私の採点★★★★★★★★★☆〜9点

監督 リチャード・ドナー
製作 ジョエル・シルバー
   リチャード・ドナー
原案 ジェフリー・ボーム
脚本 ジェフリー・ボーム
   ロバート・マーク・ケイメン
撮影 ヤン・デ・ボン
音楽 マイケル・ケイメン
   エリック・クラプトン
   デビッド・サンボーン
出演 メル・ギブソン
   ダニー・グローバー
   ジョー・ペシ
   レネ・ルッソ
   スチュアート・ウィルソン
   スティーブ・カーン
   ダーレン・ラヴ
   トレイシー・ウルフ