リーサル・ウェポン2/炎の約束(1989年アメリカ)

Lethal Weapon 2

87年の大ヒット、アクション映画の続編。

もはやリチャード・ドナーのファミリーと言わんばかりに、
メル・ギブソンとダニー・グローバーのコンビで、映画のオープニングからエンジン全開。
ド派手なカー・チェイスからいきなり始まり、第1作では自殺願望を持ち、どこかダークな雰囲気を持っていた、
メル・ギブソン演じるリッグスが前作と打って変わり、奇声を上げながら逃走犯を追っているシーンから始まる。

そして本作からマネー・ロンダリングのプロで、
司法取引に応じて、裁判で証言する予定だった金持ちレオ・・ゲッツが登場してきます。

結局、ジョー・ペシ演じるレオも、シリーズ最終章である第4作までずっと出演し、
このシリーズの愛されるキャラクターになりました。これで映画は更にコメディ色豊かになりました。

本作ではあまりメイン・エピソードと直接的に関わる部分は少なかったとは言え、
いちいちリッグスやマータフに絡んでくるウザったさが、ジョー・ペシに演じさせると絶妙だし、
ナンダカンダ言って、最後の「サイレンを鳴らして(走っても)いい?」とマータフに聞き、
マータフから「まぁ、いいだろう」とOKがでたときの表情といったら、忘れられないインパクトを残している。

そして、シリーズの一つのポイントとなるのは、
南アフリカ大使館で働くリカとリッグスのロマンスで、後のメイキング映像でもリチャード・ドナーが
「我々スタッフにとっても、このロマンスは苦しいシーンだった」と語っていたのが印象的なのですが、
おそらくこれは妻を失って自殺願望に取りつかれ、マータフとの活躍でようやっと生きる希望を
取り戻しつつあったリッグスが、すぐにリカとのロマンスに傾くこと自体に説得力がないこともありますが、
更にリッグスにとってツラいエピソードになってしまうことの、苦しさがあったからこそだと思います。

この辺の苦しさをも、映画の魅力として取り込んでしまったかのように
アッサリと激しいガン・アクションの渦に巻き込んでしまうリチャード・ドナーの懐の深さこそが、
映画の流れとしての苦しさをも、結果としてかき消してしまう要領の良さに一流の仕事を感じますね。

また、このシリーズはリッグスとマータフという白人刑事と黒人刑事の活躍を描くシリーズということで、
往々にして人種偏見や差別とった、シリアスなことが常に取り巻く内容になりがちなのですが、
あまりそういった重たさを持たせ過ぎないところが、このシリーズの良さでもあると思っている中で、
本作の中では、南アフリカでのアパルトヘイト撤廃が国際的に論議されている頃の内容ということもあってか、
大使館の人間たちが、徹底した人種差別主義者だという設定があります。これを逆手にとったかのように、
マータフが大使館へ南アフリカへの移住を相談しに行ったりと、やや斜めからアプローチしているかのようで、
映画が社会派な内容に傾倒し過ぎないようにと、作り手も気を配っているかのように見えますね。

そして、本作あたりから、その傾向が決定的になるのですが、
とにかく映画の展開が速くなります。まるで観客を飽きさせないためにと、次から次へと展開していく。
この映画のテンポの速さは圧巻そのもので、無駄と思えるシーンはほとんどありません。

この辺は、おそらくプロデューサーのジョエル・シルバーのカラーも入っていて、
余計な問題に肉薄したり、本筋から外れるようなエピソードに時間を割くことで、
映画に散漫な印象を受けてしまうことを避けたいとする、明白な意図を感じ取れる作りになっていますね。

本作の悪党も外交官特権で、逮捕されることがない“治外法権”を悪用して、
巨大麻薬犯罪組織を仕切っていたという、ある意味でやりたい放題の悪党なのですが、
駐米南アフリカの大使を演じるジョス・アクランドが、またふてぶてしいまでの存在感が絶妙だ。
それでいながら、大使館で事務員として働くリカに狂気じみた表情で、顔をなでるなど不気味さも表現している。

このシリーズの大きな魅力として、悪の存在をしっかりと描いていることもあるでしょうね。
それと、他のシリーズにはない、この映画のテンポの速さで、一気にクライマックスまで引っ張っていきます。
そのせいか、中ダルみを感じさせない、実にコンパクトにまとまった印象を受けます。

実際、4作目までいくと、さすがにどうなのかということも散見されるようになりましたが、
本シリーズが90年代のハリウッドを代表する、人気シリーズの一つにまで成長したことには、
この第2作の成功が、大きなターニング・ポイントとなったということは、間違いなくあったことでしょう。
第1作は成功したものの、シリーズとしては失敗だったことの大多数は、この第2作の失敗があります。

映画の出来の良し悪しは別にしても、結果として第4作まで作られたわけですから、
やはり僕はこの第2作の位置づけって、実は凄く重要だったのではないかと思いますねぇ。

本作あたりから莫大な予算がつくようになったのか、やたらと派手な爆破シーンが目につく。
破壊を楽しむかのような当時のハリウッドの風潮には閉口したけれども、映画の中で必要性のある
シーン演出ならば・・・という、自分の中での大きなジレンマがあって、結局、映画が面白ければ
破壊をも許容されてしまうという、僕の中での都合の良さがあるのですが、本作も2回にあたる爆破シーンがある。

その中でも、マータフの自宅のトイレに爆弾が仕掛けられるというエピソードが印象的で、
トイレに座り立てなくなったマータフを発見したリッグスが爆弾を確認し、爆発物処理班へ連絡しなければと
マータフに告げたときに、どことなく悲しい目でマータフが「あまり広めないでくれ」と懇願する表情を見て、
リッグスが「大丈夫だ、安心しろ。口はカタいんだ」と言ったものの、直後にマータフの自宅近所が警戒態勢となり、
周囲の住人が避難し、大勢の人々が騒動で忙しそうに、爆発へ向けて備えるシーンとなるのが面白い。

まぁ、リッグスの行動は珍しく正しいのだろうけど、
面白半分でリッグスが騒ぎ立てたように見えなくもないところが、また妙ですね。

そして、クライマックスに近づくと、怒りに燃えたリッグスが大使たちが集う、
テラスハウスのような別荘ちっくの邸宅を、車で猛烈に引っ張って、家をブッ壊そうとするリッグスの発想が凄い。
さすがにジープなので、何度もやらないと上手くいかないことが描かれていますが、この破天荒さこそが
第1作で描かれたリッグスの原点であり、こういう部分が描かれていること自体は、嬉しいですね。

僕はこのシリーズに好意的なのですが...
やはり第2作以降も楽しむという意味では、第2作以降の作品はリッグスとマータフの後日談として
楽しむのがいいと思います。つまり、ダークな第1作とは全くの別物の映画というわけです。

そうすれば、きっと第2作以降の軽さも、受け入れやすいかもしれません。

(上映時間114分)

私の採点★★★★★★★★★☆〜9点

監督 リチャード・ドナー
製作 ジョエル・シルバー
   リチャード・ドナー
原案 シェーン・ブラック
   ウォーレン・マーフィ
脚本 ジェフリー・ボーム
撮影 スティーブン・ゴールドブラット
音楽 マイケル・ケイメン
   エリック・クラプトン
   デビッド・サンボーン
出演 メル・ギブソン
   ダニー・グローバー
   ジョー・ペシ
   パッツィ・ケンジット
   ジョス・アクランド
   デリック・オコナー
   トレイシー・ウルフ
   ダーレン・ラヴ
   スティーブ・カーン

1989年度アカデミー音響効果編集賞 ノミネート