キューティー・ブロンド2/ハッピーMAX(2003年アメリカ)

Legally Bronde 2 : Red, White & Blonde

01年にメガヒットした田舎の富豪一家に育った女子の活躍を描いた『キューティー・ブロンド』の続編。

前作のラストでも予告された通りに製作された続編なわけですが、本作のラストでも第3作を
ほのめかすようなラストだったので、ある意味で本シリーズのセオリーともなっているラストなわけですね。
主演のリース・ウィザースプーンにとって、キャリア最大の当たり役となっただけあって、なんだか楽しそうですね。

これはこれでコンセプトなので、寛容的な目で見なければ楽しめないし、
トコトン明るいヒロインのエルの姿が次第に眩しく見えてくる魅力を楽しむべき映画だと思っているのですが、
さすがにこれはシリーズ化はツラかったかも・・・(苦笑)。映画の出来としては、「まぁ・・・こんなものかな」というくらい
王道な作りをしているので、安心して観れるレヴェルだとは思うんだけど、さすがに二番演じの感は否めない。

法曹界でのエルの活躍を描いた第1作と全く一緒ってわけにいかないので、
今回はワシントンのホワイトハウスを舞台にしたわけですけど、ストーリー設定では大きくなったものの、
映画のスケール感が小さい。ホワイトハウスを舞台にしているのだから、もっと全体を大きく見せて欲しい。

ヒロインに相対する立場えあるラッド議員を演じたサリー・フィールドもなんだかイマイチ。
映画の途中の様相を見ていると、てっきり性悪なキャラクターなのかと思っていたら、そこまででもない感じで中途半端。

そして肝心かなめのエルの婚約相手である大学教授のエメットを演じたルーク・ウィルソンにいたっては、
エルが結婚式に愛犬ブルーザーという名のチワワの母犬を招待するために孤軍奮闘するというストーリーなのに、
その結婚に絡む主要登場人物であるに関わらず、ほとんど表立った出番が無く終わってしまうのは、なんかが不可解。

まぁ、本シリーズの主旨としては、そんな成功を収めるとは想像つかないヒロインの天真爛漫なキャラクターとは
まるで対照的に自身の持つコネクションを使ったり、彼女が呼び込む幸運を利用しまくって、縁の無い世界で成功を
収めるというコンセプトがあるので、ハッキリ言って、彼女のフィアンセであるエメットはあまり重要ではないのかも
しれませんが、この第2作はエメットとの結婚式のために頑張るという、明確な目標があるわけですからね。

僕はもっとエメットとのやり取りなんかも、この第2作ではメインに扱った方が良かったのではないかと思いました。
彼女のサクセスの裏側には、エメットの存在があったとか、何かエメットとのやり取りが原動力となったとか、
もっと彼がメイン・ストーリーに絡んでくるぐらいの位置づけにした方が、映画は盛り上がったと思うんだよなぁ。

まぁ・・・前作のヒットの波に乗って作られた続編なので、多少無理があるストーリー展開は仕方ないにしろ、
ほぼほぼ二番煎じのような内容に終始してしまったのは、正直、芸がない。もう少し工夫して欲しかったところ。
そういう意味で、ヒロインの結婚に“黄色信号”が灯るほどのハプニングがあるとか、そういうものが欲しかったなぁ。
これでは全体的な“味付け”が中途半端で、何をどう表現し、観客にどの部分を楽しんで欲しかったのかが分からない。

単にリース・ウィザースプーンのコメディエンヌとしての魅力だということであれば、
それは前作の興行的大成功で十分に証明済みなので、それ以上の何かをこの続編で表現して欲しかった。

まるでフェミニズムというか、女性向け映画のような触れ込みで宣伝されていましたが、
これは第1作も同様ですが、本シリーズは別に女性向けの内容というわけではないと思いますけどね。
ストーリーはサクサク進むし、常にポジティヴ・シンキングで取り組むヒロインの姿に元気づけられると思います。
そうなだけに個人的には、映画の序盤でエルが語っていた野球場を借り切っての結婚式を実現させて欲しかったなぁ。

それでこそ、アゲインストな環境である政治の世界に飛び込んで頑張ったエルが報われるわけで、
彼女の努力が報われるからこそ、本作がサクセス・ストーリーとしての魅力を放つと思うんですよねぇ。

ただ、敢えて一つ付け加えるとしたら・・・
本作の主題である動物実験については、個人的には複雑な想いがあったのも事実。
勿論、最良なやり方ではないだろうし、殺生しない方法で実験できるのであれば、それに越したことはないと思う。

一方で、薬品や化粧品、一部の食品の安全性を評価する方法として、動物実験に取って代わる方法が
確立されたとは言い難い状況ですからね、今の段階で動物実験を経ていないものを、いきなり人介入試験を行うとかは
なんだか抵抗を感じてしまうのは、自分の感覚が古いからなのかなぁ。エルは動物実験に反対な立場で立法しようと
政治の世界に飛び込むわけなのですが、動物実験に代わる安全評価の方法を作らないと、なかなかキビしいよなぁ。

確かに、現在は自分が学生だった頃よりは、簡単に動物実験ができなくなってきているみたいですので、
アニマル・ウェルフェアの考え方が進んで、動物実験一本槍な時代というわけではないので、変わってきてますがね。

古くは培養細胞を使ったり、ゼブラフィッシュを使うことも検討されてはいますが、
個々それぞれに短所があって、一つで生体反応を網羅したものがないため、幾つかの試験を組み合わせることを
要求されたり、バリデーション(妥当性評価)をとる必要があったりと、まだまだ実用化したとは言い難い状況です。

とは言え、動物福祉の観点からも痛みを伴う実験の軽減や、使用生体数の削減など、
徐々に動物実験を取り巻く環境が変化しており、代替法に関する研究に特化した研究者もいるので、
今後はバリデーションが確立した動物実験の代替法が、そう遠くはない未来に実用化されるのだろうと思います。
それがスタンダードになったときには、エルの提案のように法で規制される可能性もあるだろうと予想してます。
そして、そうなったときには昆虫も含めて、動物実験自体がおそらく無くなるでしょうね。これは遠くはない未来でしょう。

ただ、本作で描かれるエルの提案は代替案なき立法ですからね。
日本でもこういう立法があって、業界団体や民間企業が混乱するということもよくある話しですが、
実害が表面化していない案件の立法に関しては、単純に「法がこうだから、こう」みたいな教科書的な議論ではなく、
立法府では現実と立法の目的に即した議論がなされて、よく中身を精査する立法をやってもらいたいですね。
(往々にして立法するのみで、適法するための取り組みは当事者で頑張ってください・・・みたいな丸投げが多い)

なんか、明らかに法規制した方がいいようなことは法制化に時間がかかり、
そうでもないようなことは時間をかけて計画的に着々と、立法されていく僕の勝手な印象があるのでね・・・。
この辺は国として変わっていかなきゃいけないところだと思うし、これこそ立法府の役割だと思うんだけどなぁ。

違法薬物のように法規制することで社会秩序を保つ、ということであれば単に規制するということでも
全く問題ないことが多いとは思うのですが、安全性評価の有効手段として行っていた動物実験のようなものを
代替手段が確立されていない段階で、ただ規制するだけの法案を通して、それが勝利みたいな取り上げ方は
少々偏り過ぎているような気がする。クドいようですが、代替手段の研究が進んだ現代であれば、また違うのですが。

なので、エルのように感情論だけで動いて判断することは、僕にはフェアに見えない部分があるので、
動物実験の代替手段開発を支援するような動きをとる、という方がエル自身のようにポジティヴで建設的に感じる。

まぁ、この映画の作り手もそんな細かいことまで考えていないだろうし、
何か特定のイデオロギーがあって撮った映画という感じもしないので、あくまで題材の一つにすぎないのだろうが、
どうしてもここまで映画のメインテーマであるように扱ってしまうと、目立ちますからね。少々、安直に映ったのも事実。

とは言え、法律を変えるということは、もの凄いエネルギーのいることだろう。
それを持ち前のポジティヴ・シンキングで乗り切ってしまうエルの活力は健在という感じで、この時代にフィットしました。
その結果、リース・ウィザースプーンの代名詞とも言えるヒット・シリーズとなったわけですから、この続編も成功でしょう。

それにしても、エルが次々とコネクションを発揮する“デルタ・ヌウ”の謎の組織力がスゴい(笑)。
ここまでくると、ただの社交クラブという感じではなく、ある種の人権団体のような組織力と団結力で実にパワフル。

ところで、前作で親友になったはずのビビアンを演じたセルマ・ブレアですが、
この続編には出演しなかったんですね。前作では、ビビアンという“壁”があったからこそのサクセスだったのですが、
彼女の代わりと言える存在は、ラッド議員の事務所で働くグレースを演じたレジーナ・キングでしょうが、
どうしても第1作のセルマ・ブレアのインパクトには勝てなかったですね。これも残念な要素になってしまいました。

まぁ・・・あまり過度な期待をしなければ、そこそこ楽しめるのではないでしょうか・・・。

(上映時間94分)

私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点

監督 チャールズ・ハーマン=ワームフェルド
製作 デビッド・ニックセイ
   マーク・プラット
原案 イブ・アーラート
   デニス・ドレイク
   ケイト・コンデル
脚本 ケイト・コンデル
撮影 エリオット・デービス
編集 ピーター・テッシュナー
音楽 ロルフ・ケント
出演 リース・ウィザースプーン
   ルーク・ウィルソン
   サリー・フィールド
   ボブ・ニューハート
   ジェニファー・クーリッジ
   ブルース・マッギル
   レジーナ・キング
   アラナ・ユーバック
   ジェシカ・コーフィル