ラストベガス(2013年アメリカ)

Last Vegas

この映画を観た後の率直な感想...それは「みんな年とったなぁ・・・」と(苦笑)。

マイケル・ダグラス、ロバート・デ・ニーロ、モーガン・フリーマン、ケビン・クライン、
この4人は既に全盛期が過ぎたベテラン俳優ですが、彼らの経歴、実力は申し分なく、
それぞれ単一で十分に未だに大きな仕事をできるだけの力はあるのですが、
そんな4人が一同介して、軽いコメディ映画で共演するなんて、10年前ですら考えられなかったことだ。

監督はハートウォーミングな映画を中心に活動している、
ジョン・タートルトーブで彼のフィルモグラフィーから容易に想像できるように、
本作の内容も緩くて、とても観易いコメディ映画に仕上がっている。これは皮肉ではなく、
冗談抜きで本作はそこまで悪い出来の映画ではなく、中身もしっかりしていると思います。

今の時代の70歳と言えば、団塊の世代で凄く元気な世代ですので、
未だ現役バリバリで働いている人も凄く多いし、僕が子供の頃の70歳よりもずっと若々しい。

確かにマイケル・ダグラスらも、立派に70歳を迎えるので、
年齢相応の内容の映画に出演しているわけですが、見た目もとても若いですね。
全体的に年をとるのが遅くなってきているせいか、僕が子供の頃に70歳だった方々は、
生きていれば今は90歳代半ばだと思うのですが、そういった世代の方々で健在の方も増えてきていて、
たまにビックリするぐらい元気で若々しい人もいっぱいいることは事実です。やはり全体に若くなってきています。

やたらと会話の中で前立腺を意識させる内容であったり、
70歳以上の男性なら共感するファクターが満載なのですが、いつまで経っても幼い頃の気概を忘れない、
70歳に達したジジイたちの笑顔が眩しいのですが、そこにジジイたちの微妙な確執が映画に絡んできます。

ビリー、パディ、アーチー、サムの4人組は幼い頃からの大の仲良し。

4人組の中心的存在だったビリーは70歳になった今もお盛んで、
自分の娘ほどの年齢になる女性とついに結婚することになり、彼のバチェラー・パーティーが企画されます。

ロバート・デ・ニーロ演じるパディは、妻ソフィーを1年前に失った悲しみに暮れ、
家で孤独にソフィーとの思い出に埋もれながら暮らす毎日で、どうしても気力が沸いてきません。
それどころか、愛するソフィーの葬儀に出席しなかったビリーに苛立ちを抑え切れず、幾度となく衝突します。

アーチーは愛しい孫との日々に恵まれながらも、2度目の離婚を経験し、
軽い脳梗塞を起こしたりと健康面での不安を抱える毎日で、どうも人生に張り合いが無く、
日常生活の中でも刺激を求めていたことは事実で、4人組の再会に胸を躍らせます。

ブロリダに移住したサムは、足腰が悪く、日々衰えていく肉体にやはり張り合いが無く、
唯一、4人組の中で妻との生活に恵まれているものの、“非日常”を感じ取れる刺激を求めていました。
そんな中で、4人組の再会に際して、なんと妻公認の浮気も許可され、ウキウキワクワクのベガスへ・・・。

映画はそれぞれの想いを抱えてラスベガスに入ってくるのですが、
やはり予想された通りに感情的な衝突も繰り返すし、やはり若い頃のような鋭さはありません。
しかし、それは当然のこと。人間誰しも年をとるわけで、どんなに若い気持ちを持っていると自負sたって、
肉体的な衰えは止められないし、気持ちにしたって、やはりどこかで無理が祟ってしまう。

しかし、それでもそういった若い気持ちを取り戻すということが大事なのだろう。
これこそが年齢相応の生き方と、それと人生をまっとうする上での張り合いってもんだろう。

ロバート・デ・ニーロはこんなもんかなぁ〜とは思ったけれども、
やはりマイケル・ダグラスはステージWの咽頭がんの治療を行ったせいか、
一見するとギラギラした感じであまり以前と変わらない様子のように見えるが、よく観ると痩せたかなぁ。
まぁ・・・ステージWが事実なのかは分かりませんが、大病であることは変わりないので、
見た目にも変化があって然るべきで、むしろよくこんな早くにカムバックできたなぁ〜と感心してしまいます。

一方で年をとれど、男はいつまで経っても子供(笑)。
だからこそ幼い頃からの悪友が集まれば、そのときを思い出して遊び始めるし、
傍から見れば、「年甲斐も無くはしゃいでいる」と見えるのかもしれませんが、それはそれで微笑ましいものです。

ある意味で、“超高齢化社会”を迎えている現代の日本にあっては、
ウケ易いタイプの映画かなぁと思うのですが、思った以上に日本ではヒットしなかったですね。
オスカー俳優4人がハシャぐ映画なんてとっても貴重なんですが、やはりもう旬な時期を過ぎたんでしょねぇ。

個人的には本作がヒッソリと劇場公開され、特に大きな話題とならずに
劇場公開が終了になってしまうなんて、あまりに寂しい時代になったなぁ・・・とは思うのですが。。。

まぁ、タイトルが指す、『ラストベガス』が何を意味するかは分からないのですが、
でも、70歳という年齢になると、「ひょっとしたら、これが最後になるかもしれない」と常に思いながら、
生きていくというのが、ある意味では切実なテーマなのかもしれませんね。そういう意味で、映画のラストで
マイケル・ダグラス演じるビリーが見せる、別れにどことなく寂しそうな表情を見せるのが印象的です。
それは、いつ最後になっても現実的にはおかしくない、そんな年齢であることをヒシヒシと感じていることを
示唆しているような芝居であり、大病を患ったマイケル・ダグラスが演じるからこそ、説得力があるのかもしれません。

映画の中では紅一点的な存在感を示しているのは、
アトランタから移ってきたという、歌手志望の女性ダイアナを演じたメアリー・スティーンバーゲンですね。
彼女、若い頃からあまり変わらないのですが、本作でもホントに変わらず、実に若々しいですね。
ひょっとしたら本作で最もインパクトを残すことができた、役どころだったかもしれませんね。

コメディ映画として派手に笑えるタイプの映画ではありませんが、
元気なお爺ちゃんが、チョットした青春を取り戻す姿を描いた作品として、まずまずの出来だと思う。

(上映時間104分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 ジョン・タートルトーブ
製作 ローレンス・マーク
    エイミー・ベアー
脚本 ダン・フォーゲルマン
撮影 デビッド・ヘニングス
編集 デビッド・レニー
音楽 マーク・マザースボウ
出演 マイケル・ダグラス
    ロバート・デ・ニーロ
    モーガン・フリーマン
    ケビン・クライン
    メアリー・スティーンバーゲン
    ジェリー・フェレーラ
    ロマニー・マルコ
    ロジャー・バート
    マイケル・イーリー
    ジョアンナ・グリーソン