トゥームレイダー(2001年アメリカ)

Lala Croft : Tomb Raider

パソコン向けのゲームの映画化で、劇場公開当時、これは大ヒットしました。

99年の『17歳のカルテ』で評価されたアンジェリーナ・ジョリーが注目を浴び、
ゲームの人気キャラクターだったララ・クロフトを演じるということもあって話題性が高かったのですが、
個人的にはあまり楽しめしないというか、あまり盛り上がらない見せ場に欠ける映画だったというのが本音。

監督がサイモン・ウェストですから、あまり細かいことが要求できないとは思いますが、
そうとしても、もっとなんか上手くやりようがあったと思うのですが、このパッとしない出来は残念でしたね。

アンジェリーナ・ジョリーのアクション・シーンにしても、明らかにスタントという感じのシーンが見られ、
それは仕方ないにしても、スポーティーな衣装でつくりても明らかにアンジェリーナ・ジョリーのバストを
強調しようと撮ったとしか思えないシーンが多々見られ、なんだかホントにこれで良かったのかと疑問だった(笑)。
なんか、彼女の体型がモロに分かってしまう衣装を選び、やたらと彼女を走らせるのは今じゃ出来ないでしょ、これ。

言いたかないけど、これは作り手も確信犯ですよ。映画の“売り”にしたいのが観て明らか。

本作がヒットしたからだと思いますが、何故か続編が製作されたというのも僕の中では不思議なのですが、
どこまで作り手がこのゲームのキャラクター、ララ・クロフトを主人公に真剣に映画化したかったのかが、
よく分からず、この映画を製作することの意義というのが示せていないというのが致命的だと思います。
まぁ・・・当時のハリウッドの悪しきところというか、商業主義というか、「会議室で映画を作ってしまおう」という
マーケット・リサーチ先行型の映画という感じで、良くも悪くも後には何も残らない映画という感じで、とっても残念だ。

確かにクールな主人公が、表情何一つ変えずにアクションに興じるというのも“有り”だとは思いますが、
僕はこの映画を観て、どこに最も物足りなさを感じたかというか、アンジェリーナ・ジョリーに危機が無いことだ。
それは結果として、映画の中で描かれるピンチの全てに、緊張感が無い。これで映画が盛り上がるはずがない。

映画の冒頭で、ヒロインのララ・クロフトが暮らす大邸宅の中のトレーニング・ルームで
ララの仲間が開発したロボットとの格闘から、映画がいきなり始まるのですが、これも後に続いてこない。
かなり強いプログラムを組まれているので、ララもこのロボットを使うなりして戦えば良いのにと思ってしまうのですが、
ララも敢えて単独で戦いを挑むので、なんだかよく分からない。これが映画のラストにも登場するのだから、尚更のこと。

思うに、この映画は本来は冒険映画だと思うので、もっとアドベンチャー色が強い方が良いと思うんですよね。
その割りに、移動する感覚に乏しい映画なせいか、どうにも冒険心がくすぐられるような雰囲気は皆無ですね。
実際に映画の舞台として、ヴェニスが描かれたり、実際にガンボジアの田舎でロケしたらしいのですが、
まったくと言っていいほど、移動する感覚が映画に吹き込まれていないですね。どこか作り物の世界観といった感じ。

こういったあたりは、作り手のベクトルがまったく定まっておらず、
ロールプレイング・ゲームのような楽しさも生まれず、前述したようにアドベンチャー性が希薄になってしまいました。

そういう意味では、この映画のアクション・シーンで最もエキサイティングだったのは、
冒頭のロボットとの対決シーンだったという印象で、それ以降のアクションはほぼ惰性という感じ。
後に6代目ボンドに抜擢されることになるダニエル・クレイグも出演していますが、まだ彼も脇役といった感じです。
派手なアクション・シーンも無く、金のために動く男でありながらも、ララに未練タラタラな男を演じています。

アンジェリーナ・ジョリーも勿論、魅力的な女優さんで相変わらず頑張っているのだけれども、
ゲームのキャラクターと見比べると、少々シルエット的にはタフそうな女性という感じで、少し異なるかもしれません。
イメージ的には、もう少し華奢な感じなんだけれども、敢えて彼女をキャスティングしたあたりはハリウッドらしい選択。

映画のクライマックスでは、父を奪った弁護士パウエルに殴られるシーンもありますが、
男女平等の精神なのかもしれないが、アンジェリーナ・ジョリーが殴られ、蹴られまくるシーンを観るのはキツい。

これがゲームをやっていた人なら、楽しみ方も違うのだろうなぁ。
ひょっとしたら、本作自体への評価も異なるのかもしれません。良い方か、更に悪い方かは分かりませんが。
それはやっぱり、主演のアンジェリーナ・ジョリーをどう観るかで、映画の印象は大きく変わっているように思います。
そうなってしまったこと自体は好ましいことではなく、僕はサイモン・ウェストというディレクターの責任だと思います。

確かにヒロインのキャスティングは重要だし、彼女の芝居自体にも大きなウェイトがあることは事実ですが、
彼女が全て、みたいな映画にしてしまっては、本作の監督の仕事として片手落ちどころの騒ぎじゃないと思います。
キツく言うと、そうなってしまった時点で、本作の監督としての仕事は落第点であると言っても過言ではないと思う。
本来であれば、アンジェリーナ・ジョリーをどう撮って、観客にどういうインパクトを残すかは、監督の裁量ですから。

余談になりますが、このララ・クロフトの冒険シリーズのゲーム自体は、
直近では2018年までリリースが続いていたようですね。確かにWindows98くらいのOSだった頃は、
パソコンで再生できるゲームって、いろんなゲームがラインナップされていた記憶がありますが、
やはり本家本元のゲーム機を抜くことができず、しかも容量の関係だったのか、物足りないゲームが多くて、
日本ではパソコン向けゲームは大流行になることなく、ドンドンと売り場面積を減らしていった印象があります。

そんな中でも、ファースト・リリースから20年以上もシリーズが続いたのですから、それはスゴいですね。
おそらくパソコン向けゲームのソフトの中では、指折りの人気長寿シリーズなのではないかと思います。

であるから尚更のこと、この映画はもっと楽しませて欲しかったし、ゲームとしての素材の良さを
本作がもっと的確にPR できていれば、ゲームの販売状況も含めて、展開が変わっていたと思います。
スピンオフ企画ではありますが、映画化されることでゲームへ波及する経済効果も、たぶん期待されていたはずです。

本作のような仕上がりになってしまうと、話題性から最初はヒットして、
プロダクションも続編を製作しシリーズ化することを期待するのですが、“後が続かない”んですよね。
こう言っては悪いですが、本作はその典型例になってしまったようで、続編も1本だけ作られて終わりました。
まぁ・・・色々な意見はあるでしょが、総じて映画のヒット以上に大きな影響をもたらすことは期待以下だったのでしょう。

これは一つのハリウッドのビジネスモデルではありましたが、最近は少しずつ見直されてきていると思います。

もっとも、最近は如何に上映館数を伸ばすかが勝負といった感じではなくなってきて、
すっかりネット配信メインの企画が目立つようになってしまったので、映画界が大きく変わりつつありますが、
それは仕方がないこととしても、今となっては本作のようなマーケティング優先の映画は、なかなか生まれにくいです。
やはりプロダクションにしても、映画というメディアが大きく儲けることが出来るものではなくなってきたのでしょうね。

アンジェリーナ・ジョリーも最近は女優業のペースを落としていますけど、
最近はかつてのマネーメイキング・スターと呼ばれる存在の俳優さんが、少なくなってきたように感じます。

サイモン・ウェストは97年の『コン・エアー』は面白かったけど、
もっと破天荒なアクション映画の方が合っているのかなぁ。なんか、本作のような冒険映画には合っていない気がした。
しかも、言っちゃあ悪いが、サイモン・ウェストがもっと良い仕事をしていれば、映画の印象は大きく変わったでしょう。
少なくとも、アンジェリーナ・ジョリーだけに注目が集まってしまう映画ではなかったはずで、違った魅力も出たでしょう。

まぁ、端的にアンジェリーナ・ジョリーを観たいって人には良いのだろうけど、アクション映画としてはいただけない一作。

(上映時間100分)

私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点

監督 サイモン・ウェスト
製作 ローレンス・ゴードン
   ロイド・レビン
   コリン・ウィルソン
原案 サラ・B・クーパー
   マイク・ワーブ
   マイケル・コリアリー
脚本 パトリック・マセット
   ジョン・ジンマン
撮影 ピーター・メンジースJr
音楽 グレーム・レヴェル
出演 アンジェリーナ・ジョリー
   イアン・グレン
   ダニエル・クレイグ
   レスリー・フィリップス
   ノア・テイラー
   ジョン・ボイト
   クリス・バリー

2001年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト主演女優賞(アンジェリーナ・ジョリー) ノミネート