U.M.A. レイク・プラシッド(1999年アメリカ)

Lake Placid

タイトルになっている「U.M.A.」って、
“Unidentified Mysterious Animal”の略だそうで、日本語訳すると未確認動物という意味。

まぁ随分と豪華なキャストで、ある意味で正々堂々とB級映画を撮ったような企画で、
よくもまぁ・・・これだけ大規模な企画で、これだけチープな映画を撮ったもんだと感心します。
スタン・ウィンストンのプロダクションの仕事であり、問題のクリーチャーのデザイン造形や
迫力の襲撃シーンを表現するCG合成なんかも、それなりに力が入っていて、無駄に豪華だ(笑)。

よくよく考えてみたら、監督は『13日の金曜日』のスティーブ・マイナーであり、
問題のクリーチャーが海辺に近づいてきて、牛を襲撃して食べてしまうとか、
湖にボートで浮かぶところを襲撃して、首だけを食いちぎってしまうなど、悪趣味なシーン演出が満載ですが、
かつての彼の創作活動の志向を考えれば、これは至極当然な作風なのかもしれませんね。

確かに日本での本作の宣伝が獰猛なモンスターを相手に
次から次へと人間が襲われてパニックになる映画であるかのような触れ込みでしたから、
本作に対する期待度は高くなっていたとは思うのですが、意外にも乾いたユーモアがある作品ですね。

最近はすっかり家庭に納まってしまったらしく、
スクリーンでの活躍がここ10年見られないブリジット・フォンダが主演というだけでも嬉しいのですが、
ワニの生態を研究することが生き甲斐で、次々とトラブルを起こす金持ちを演じたオリバー・プラットが良い。
終始、現地保安官とケンカを繰り返しているのですが、丁度良い、コメディ・リリーフになっていますね。

何より、この映画でホラーな存在だったのは、
湖畔の家に暮らすお婆ちゃんで、映画のクライマックスまで風刺の利いた存在であったのが面白い。

あのお婆ちゃん、なんか楽しそうに生活していましたが、
ラストシーンでも「足を噛んでみなさい」みたいなことを、まるで子供を可愛がるかのように言い、
文字通り手懐けて、飼育しているというのが妙で、ここまでいけばあのお婆ちゃんの存在がホラーですね(笑)。

製作と脚本で、当時、TVシリーズ『アリーmyラブ』で人気脚本家だった、
デビッド・E・ケリーがクレジットされていますので、トレンディな内容なのかと思いきや、
思いのほかチープなパニック映画に、乾いたユーモアをブレンドするという、ある意味で斬新な試みで
確かに今までありそうで無かったタイプの映画に仕上がっているのが、今尚、異彩を放っていますね。

ただ、やはりこれはシナリオからして、問題があると感じる部分はあるのですが...
やはり異種格闘技戦みたいな映画になっているせいか、映画のバランスが悪いですね。

前述したように、今までには無いタイプの映画になっているのですが、
やはりパニック映画とユーモアの相性がイマイチ良くないのか、どうも微妙な違和感が残りますね。
ですから、獰猛なクリーチャーが襲ってくるエピソードと、金持ちと保安官がケンカになった挙句、
保安官が何度もワナに引っかかるコメディ的なシーンが、お互いに独立してしまっており、
それぞれの要素が上手い具合にブレンドされていないのは、シナリオの段階からもっと練るべきでしたね。

この映画の成功は、この上映時間の短さですね。
これは別に嫌味を言っているわけではなく、見せたいものを重点的に見せるという、
文字通りの「重点主義」を貫いた作品であり、ひじょうにクレバーな映画であるように感じましたね。

これはおそらくデビッド・E・ケリーがTVドラマで培った経験が活きていますね。
やはりTVドラマでは、制約のある時間内でしっかりと起承転結を付けてストーリーを
成立させなければならないわけで、この81分という経済的な上映時間は大きなポイントだと思いますね。

確かに本作はあまり有名な映画ではありませんが、
映画の出来としては日本劇場未公開作の扱いを受けても仕方ないような気がするのですが、
日本でも大々的に劇場公開されており、地味に人気のある作品のようで、なんと2作品の続編が製作されました。
(よくもまぁ・・・このネタで2本も続編が製作できたものです...)

どうでもいい話しではありますが...
この映画に於いても、動物愛護の精神が凄くって、何人もどんなに凄惨な襲撃を喰らっていながらも、
それでも希少動物だからという理由一つで、獰猛なクリーチャーを生け捕りにしようとする努力が凄いですね。

確かに欧米の方々って、意外にも(?)動物愛護の精神が根付いていて、
僕がかつてデンマークに行ったとき、豚肉の屠殺場も複数箇所、視察させて頂きましたが、
その際も何度も動物愛護の精神について言及されており、日本との風土の差を感じましたねぇ。

今でも、例えば外資の外食産業なんかでは、使用する原料肉の屠殺場で
しっかりと動物愛護の精神に配慮した、ストレスがかからないように屠殺されているか?など、
従来の日本ではなかなか無かったような観点からの評価項目が、日本でも浸透しつつあります。
(まぁ・・・ストレスが短時間でもかかると、食肉の味に悪影響が出たりするから、という理由もあるけど...)

過去に日本でも「生類憐れみの令」なんて歴史もありますが、
今となっては欧米の方が動物愛護に関しては浸透しており、日本人には若干、違和感があるかもしれませんね。

ただ一方で本作は、そういった過剰なまでの動物愛護を皮肉った映画という見方もあって、
そう思ってみれば、獰猛なクリーチャーを映したラストシーンは、強烈な皮肉に思えてきます。
そういう節々に笑いの要素を隠した分だけ、本作が地味に愛される要因になっているのかもしれませんね。

(上映時間81分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 スティーブ・マイナー
製作 デビッド・E・ケリー
    マイケル・プレスマン
脚本 デビッド・E・ケリー
撮影 ダリン・オカダ
編集 マーシャル・ハーベイ
    ポール・ハーシュ
音楽 ジョン・オットマン
出演 ブリジット・フォンダ
    ビル・プルマン
    ブレンダン・グリーソン
    オリバー・プラット
    ベティ・ホワイト
    メレディス・サレンジャー
    マリスカ・ハージティ
    デビッド・ルイス