ナイト&デイ(2010年アメリカ)

Knight And Day

久しぶりに、スターがワイワイ、ガヤガヤとイチャイチャしながら、
ドッカーン!とド派手な爆発シーンや、CGをふんだんに使ったアクション・シーンがある映画かと思いきや、
ここぞという見せ場が欠落したためか、どうにも起伏に欠けるジェットコースター・ムービーになってしまった。。。

監督は『17歳のカルテ』、『ウォーク・ザ・ライン/君に続く道』のジェームズ・マンゴールドなんですが、
どうせここまで金をかけて規模の大きな映画を撮るなら、もっと研究してから撮って欲しかったなぁ。

おそらくスペインの市街地でのバイク・チェイスのシーンを最高の見せ場にしたかったのだろうが、
このシーンもイマイチ締まらない感じで、確かに迫力満点のアクション・シーンが連続するのですが、
全体的にまとまりがなく、加えて作り手が見せ場としたいシーンが強調されなかったですね。

ひたすらPOPでノーテンキなエンターテイメントって感じですが、
こうも起伏に欠けるとなると、全体的に映画がダラダラしてきますね。従って、必要以上に映画が長く感じます。

それと、かなり致命的だったとも言えるのは、
主人公のロイを追う連中が組織力はあるけど、悪どさや強さが目立たなかった点ですね。
いつも言っていますが、この手の映画で倒し甲斐の無い敵というのは、映画の魅力を削いでしまいます。

最近のハリウッドはアイデア不足に資金不足だったためか、
本作のような無駄に金をかけたド派手なジェットコースター・ムービーに自重ムードがあったのですが、
久しぶりにこういうお祭り騒ぎな企画にGO!サインが出たような気にさせられますね。
まぁ正直言って、たまにはこういう映画があった方が僕はいいと思うんですがねぇ。。。

とは言え、やっぱりこの手の映画ってのも、職人芸的な部分ってあると思うんですよねぇ。
本作なんかはかつて、ジョン・マクティアナンやジェームズ・キャメロンなら、もっと面白い映画にできただろうし、
映画に投入する資金も半端なものではなかっただろう。本作も、こういう経験者が参加して欲しかった。

今のハリウッドにはこういうエンターテイメントを成立させられるディレクターがいないことを痛感しますね。

主演のトム・クルーズとキャメロン・ディアスは01年の『バニラ・スカイ』以来の共演で、
今回は訳が分からぬうちに謎の男が抱えるトラブルに巻き込まれるヒロインが、
徐々に彼に惹かれていくという設定で、『バニラ・スカイ』のような戦々恐々とした関係ではありません(笑)。
しっかし、10年近く経って、2人ともこういう映画で再共演できるなんて凄いですねぇ。

ただ、やっぱり2人とも年とったなぁ〜(苦笑)。
やっぱり『バニラ・スカイ』の頃のような若々しさは、少しずつ無くなってきているのかも・・・。

まぁ映画の大きな焦点となる、サイモンという青年が開発した電池は言わば、マクガフィンのようなもの。
つまる、その中身は何でも良くって、中身が何であっても映画の内容には何ら影響を与えません。
そんなサイモンを演じるのは、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』で熱演を見せたポール・ダノ。
ハリウッドの若手俳優として注目を浴びる存在なはずなのに、こんな軽い役で良かったのでしょうか?
もっと重要な位置づけがあるのかと思いきや、映画の最後の最後まで重要な扱いを受けないというオチ。

ラストシーンの“死体安置所”の流れは、完全に余興チックですが、
これもどうせなら、もう一悶着エピソードを作った方が賢明だったかもしれません。
そう思わせるぐらい、全体的に盛り上がりどころが無いことと、物足りなさがあることは否定できません。

企画の段階で様々な紆余曲折を経た本作は、結果として商業的にコケてしまいました。
一部ではキャストの問題も指摘されて話題となりましたが、実際に観た人の満足度も低い傾向にあったのは、
僕は単にエンターテイメントとして物足りないせいだと思います。もっと上手くできたはずなのです。

但し、全てがダメな映画かと言われると、そうは言いたくないのが映画ファンとしての本音(笑)。

まぁ色々とロケ地を巡ったせいか、総じてロケーションの良さが光る内容ではある。
できれば南の島でのシーンはもっと長く見せて欲しかったけど、いずれも視覚的な優美さがある。
観光映画というほどでもないけれど、色々なロケーションを活かそうとする意図は感じられる内容ですね。

最高のデート・ムービーという割りにはダラダラしているため太鼓判は押せないけど、
映画の終盤で自白剤を注射されたジェーンが、次から次へとロイに関する本音を暴露させて、
恋愛映画としての側面が強くなっていくあたりからは、確かにカップル向けの内容かも。
ここでもコメディエンヌとしてのキャメロン・ディアスが活きていて、激しい銃撃戦の最中、
飛び交う銃弾を気にも留めず、ロイにキスを求めるというノーテンキさが絶妙な感覚ですね。

いずれにしても、ハリウッドも世代交代の時期ですかね。
いつまでもこういう映画の主人公をトム・クルーズが張っているようでは、進歩がありませんしね。
厳しい言い方かもしれませんが、トム・クルーズのスター性にも限界を感じた一本です。

ジェームズ・マンゴールドもオールラウンドな映像作家として頑張って欲しいし、
おそらく本作を通して、多くの課題が見つかったのではないかと思うんですよね。

どうでもいい話しだけど...
アイスクリーム付きのパイって、ホントに美味いんだよねぇ〜(笑)。

(上映時間109分)

私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点

監督 ジェームズ・マンゴールド
製作 トッド・ガーナー
    キャシー・コンラッド
    スティーブ・ピンク
    ジョー・ロス
脚本 パトリック・オニール
撮影 フェドン・パパマイケル
編集 クインシー・Z・ガンダーソン
    マイケル・マカスカー
音楽 ジョン・パウエル
出演 トム・クルーズ
    キャメロン・ディアス
    ピーター・サースガード
    ヴィオラ・デイヴィス
    ポール・ダノ
    ジョルディ・モリャ
    マギー・グレイス
    セリア・ウェストン