キング・アーサー(2004年アメリカ)

King Arthur

ジェリー・ブラッカイマーのプロダクションが巨額の製作費を投じて、
『トレーンング・デイ』のアントワン・フークワが撮った、『アーサー王と円卓の騎士』の映画化。

まぁアントワン・フークワって、98年の『リプレイスメント・キラー』でデビューした
黒人監督なのですが、正直言って、こういうローマ史劇を撮るなんて意外でしたねぇ〜。
観る前の予想よりは、遥かに真っ当な出来でした。が、やや物足りないというか、パンチ不足なのも事実。。。

ジェリー・ブラッカイマーって、20世紀後半からハリウッドで大作主義を打ち出し、
『アルマゲドン』、『パールハーバー』と立て続けに批判を浴びやすいジャンルの映画を発表し、
特に当時の日本でのジェリー・ブラッカイマーに対するバッシングは結構強かったものと記憶してますが、
本作を発表した00年代中頃から、あまり企画に恵まれなくなったせいか、活動も落ち着いてきましたね(笑)。

但し、正直言って、凄く出来の良い映画というわけではなく、
結論から言えば及第点の出来といった感じかな。もっと力強い映画にすることはできたはずだ。

おそらく本作で一番のハイライトであるはずの、クライマックス15分間にわたる、
合戦のシーンがあるのですが、確かにエキストラを大量投入して、実に気合の入ったロケを敢行してますが、
どことなく表面的に撮っている感じで、どうも“熱さ”が無いというか、パンチ不足のような気がしましたね。

アントワン・フーワクは『トレーニング・デイ』など、かなり骨太なアクション映画を撮っていた
印象が強かったのですが、本作のような歴史劇を撮れるということは、結構、器用な映像作家なんですね。
欧州では多くの人々が知っている物語の映画化ですから、それだけプレッシャーは大きかったと思いますが、
確かに前述したようにパンチ不足とは言え、これだけの仕上がりになるということは、結構、器用だと思いますねぇ。

ただ、いずれにしてもクライマックスの活劇はもっと頑張って欲しかった。
首をはねたり、剣をブッ刺したり、そりゃ残酷な描写も施してはいるのですが、
アクション・シーンに於ける連続性に乏しいせいか、それぞれの活劇が単発的で流れができないですね。

それと、ステラン・スカルスゲールド演じるセルディックの描写が甘くって、
映画の終盤まで彼の印象を、あまり強く残せなかったことは、とても大きなウィークポイントになっていると思います。

もう一人、グウィネヴィアを演じたキーラ・ナイトレイを登場させるのも遅い(笑)。
本作ではヒロイン的な持ち回りになるだけに、映画が始まってから1時間近く経たないと登場してこないとは、
他の映画ではありえないぐらいの遅さで(笑)、「一体、いつになったら登場してくるんだ?」と憤慨しました(笑)。

そういう意味では、別に無理してアーサーとグウィネヴィアのロマンスを描く必要はなかったと思うんだよなぁ。
アーサーが如何にしてローマの平和のために闘ったかを描くために、余分なエピソードは削った方が良かったかな。

ただ、それらをカバーするかのように本作はクライブ・オーウェン演じるアーサーが良い。
元々のクライブ・オーウェンのルックスのカッコ良さもありますが、ひじょうにカッコ良く描けています。
00年代に入ってから、何本かローマ史劇の作品が製作されましたが、おそらく本作で演じた、
クライブ・オーウェンが一番、カッコ良く勇壮に撮れていたように思いますね。これは大きな強みです。

クライブ・オーウェンは80年代から舞台俳優として映画界でも長い下積み生活を送ってきたらしいのですが、
02年の『ボーン・アイデンティティー』あたりから徐々に注目されるようになり、本作で初めて主役に抜擢され、
本作での活躍は勿論のこと、同年の『クローサー』でも高い評価を得て、スターの座を手にしました。
そういう意味では、本作、クライブ・オーウェンにとっては大きなターニング・ポイントなのかもしれませんね。
(但し、興業収入面では本作、実は世界的にも芳しくはなかったんだけれども・・・)

アーサーに従事する、脇役キャラクターも結構良くって、
特に氷の張った湖での戦闘シーンに於いて、先陣を切って氷を割りに前へ進むシーンなんかは大迫力で、
CGを使った映像処理とは言え、次から次へと湖に転落していく様子は、なかなか臨場感はあったと思う。
(まぁ・・・このシーンでアーサー側から放たれる槍がヤケに多過ぎる気がするのは気になるが...)

ちなみに僕はこの映画、実は2回目の鑑賞だったのですが、
前回は劇場公開版であったのですが、今回は約15分にわたってカットされたシーンを追加した、
ディレクターズ・カット版を鑑賞させて頂きましたが、個人的には“後出しジャンケン”のような
ディレクターズ・カット版って、賛同できないのですが、本作の場合はこっちの方がずっと良いですね。
さすがに元々は、これだけのヴォリュームがあった映画だったのならば、編集段階で削りすぎだと思います。
その代わりにグウィネヴィアとのロマンスを盛り込んだのかもしれませんが、それはハッキリ言って逆ですね(笑)。

ひょっとしたら、この編集に関しては、資本が入っているディズニーが口を挟んだのかもしれませんが。。。

丁度、本作が公開された頃はオリバー・ストーンの『アレキサンダー』、
ウォルフガング・ペーターゼンの『トロイ』が製作され、立て続けに古代活劇が公開されていた頃なので、
本作はややエンターテイメント寄りの古代活劇として期待されていたのかもしれませんが、
この内容ならば、やはり中身をもう少し充実させて、重厚感を持たせた方が正解だったような気がしますけどね。

前述した、合戦のシーンなんかはアントワン・フークワなら、もっと良く撮れたはずなんだよなぁ。
こんなに流れを感じさせない、単発的なアクションでは映画が盛り上がるはずがなく、
特にクライマックスの活劇は何とかして欲しかった。これでは、映画全体の印象が良くなるはずがありません。

確かにそこまで酷い出来ではないし、まぁ及第点レヴェルと言っていいかもしれません。
しかし、一時のジェリー・ブラッカイマーのプロダクションの力を考えると、なんだか寂しい出来だなぁ。

21世紀に入った途端に、急激に影響力が衰えたような気がするのですが、
確かに90年代後半には日本の映画ファンの間でも、彼のプロダクションに対する批判は凄まじく、
この結果は予想できたと言えば、それまでなのですが、ハリウッドでも確信犯的にブロックバスター(娯楽大作)を
製作することができる数少ないプロダクションであることは間違いないのですから、もっと頑張って欲しかった。

まぁ・・・あまり過度な期待をかけなければ、そこそこ楽しめる作品だとは思いますがねぇ。。。

(上映時間126分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 アントワン・フークワ
製作 ジェリー・ブラッカイマー
脚本 デビッド・フランゾーニ
撮影 スワヴォミール・イジャック
編集 コンラッド・バフ
    ジェイミー・ピアソン
音楽 ハンス・ジマー
出演 クライブ・オーウェン
    キーラ・ナイトレイ
    ヨアン・グリフィス
    ステラン・スカルスゲールド
    スティーブン・ディレーン
    マッツ・ミケルセン
    ジョエル・エドガートン
    ヒュー・ダンシー
    レイ・ウィンストン
    レイ・スティーブンソン