ジュラシック・パーク(1993年アメリカ)

Jurassic Park

20数年ぶりに観ましたが、今観ても、十分に面白いですね(笑)。
93年を代表するメガヒット・ムービーで、当時は懐かしのレンタル・ビデオが借りれず、
97年の『タイタニック』が記録を塗り替えるまで、興行収入記録の第1位となっていた映画史に残るヒットでした。

90年にマイケル・クライトンが発表した原作をスピルバーグが設立したアンブリンが購入し、
莫大な予算と長きにわたる撮影準備に注力し、満を持して当時の技術力を結集させた中身になりました。

まぁ・・・今になって観ると、恐竜の映像が明らかにCGっぽかったりはしますけど、
これはこれで当時はビックリさせられたものだし、今観ても、なかなかの迫力で素晴らしい緊張感。
スピルバーグも『JAWS/ジョーズ』の頃を思い出したかのように、観客をビビらすことに注力していて、
連続するピンチは手に汗握る緊張感に満ちていて、“ジュラシック・パーク”なる孤島にあるテーマパークを
舞台にしただけあって、そのアトラクション性たるは映画史に残ると言っていいほど、古びない魅力がある。

ただの恐竜をモデルにしたパニック映画かと思いきや、
やっぱり医者であるマイケル・クライトンの原作らしく、生命工学の観点から描いた物語となっている。

大テーマパークを作ろうとしたのは、大富豪ハモンド氏で彼の野望は絶滅したはずの恐竜を蘇らせ、
人間が管理する施設を開放して、一大テーマパークとすることで、その安全性評価を行ってもらうために、
古代生物学者や数学者に見てもらって、専門家のお墨付きをもらおうとすることで、映画が動き始めます。

ハモンドの雇用した研究者たちがとった手法は、極めてオーソドックスなもので、
樹液の中で息絶えた恐竜の血液を吸った蚊を発見し、その蚊の中から微量の血液を採取することで、
その中に含まれる恐竜のDNAのゲノム解析をすることで、現代に恐竜を蘇らせるという手法でした。

現代でこれを再現することは、そう簡単なことではありませんし、
そもそも恐竜のゲノム解析って、ほぼ進んでいないはずですので、現時点では不可能に等しいです。
また、遺伝子操作をした生物を人工的に育てあげることは、そうそう容易いことではありません。
しかし、マイケル・クライトンは仮に実現したとしても、科学の進歩の中では科学者倫理が重要であることを描いており、
ただただ技術的に出来るということだけで、“暴走”してしまうことによって起こる、人災を描いているわけです。

生物の進化はまだ学術的には解明している最中の分野です。
解析手法が次々と開発されている中で、如何に生物が進化してきたのかを解明することが、
今後、生物がどう進化していくのかを予測していくことにつながる、重要なキーとなる可能性は高いわけです。

でも、やっぱり、その中にも開けてはならない“パンドラの箱”があるということなんだと思いますね。
それは単なる研究対象から、それらを人間が利用しようとする過程では、どうしても人間の力では
管理し切れないものというのが、必ず存在するわけで、恐竜を飼育することは正しく“パンドラの箱”だと思います。
どんなに素晴らしい施設に、どんなにスゴい管理が出来ても、やはり人間には恐竜は手に負えないですよねぇ。

まぁ、映画のクライマックスも思わず、「その後の島はどうすんだぃ!?」と疑問に思うわけですが、
それはそれで97年に『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』という続編で、描かれているので、
本作だけでは完全解決とまではいきません。おそらく当初から、スピルバーグは続編を製作する気だったのでしょう。

予め断言できることは、少なくとも本作のラストは本質的な解決にはなっていないということです。

水やゼリーの振動を通じて、恐竜が近づいている雰囲気を演出していたり、
相変わらずスピルバーグは忍び寄る恐怖を表現するのが上手い。獰猛な肉食恐竜として、
ヴェロキラプトルが次から次へと襲撃してくるスリルはなかなかのもので、特に終盤、ビジター・センターの
キッチンの中まで子供たちを追って侵入してくるシーンは、最初に観たときと同じように今も手に汗握る(笑)。

この子供たちを演じたアリアナ・リチャーズの姉と、ジョセフ・マッゼローの弟のコンビも素晴らしい。
特にアリアナ・リチャーズは表情豊かで、恐竜を目の前にする恐怖を巧みに表現できている。
(やっぱりスピルバーグの映画は、総じて子役が良いですね!)

大富豪のハモンド氏を演じたのは、映画監督としての方が著名なリチャード・アッテンボロー。
自身の野望に端を発して、“ジュラシック・パーク”を作り上げたわけなのですが、
映画が進むにつれて、“ジュラシック・パーク”の安全性と人知の万能さを過信していた自分の意見を覆して、
恐竜の襲撃から全員を助けようとするのは、従来の映画だったら彼のようなキャラクターは強欲さにかられ、
最後の最後まで非を認めない憎たらしい役柄になることが多いので、僕の中では少し変わったキャラクターでした。

どうやらリチャード・アッテンボローは80年代は完全に映画監督業にシフトしていて、
俳優業は全く行っていなかったようですが、スピルバーグからの直接オファーを受けた本作では、
約14年ぶりの俳優業への復帰となり、本作以降も何本かの映画に俳優として出演したようですね。

本作をモチーフにしたアトラクションが、某テーマパークにはありますし、
少なくとも本作はSFパニック映画の可能性を広げ、それまでとは全く違うステージに押し上げた、
映画史にその名を残す金字塔的作品ですらあると思います。おそらく、スピルバーグ自身も本作撮影完了後、
そうとうな手応えがあったのではないだろうかと思います。それくらい、映画全体の流れに彼の自信を感じさせます。

いつもの調子で、恐竜が大暴れを開始するまでは「序章」のようなエピソードが続きます。
劇中、恐竜が本性を出し始めて、大暴れし始めるのは上映開始後、約1時間が経過してからになります。

でも、この映画の主旨を知っていれば、当然、ずっと「いつ襲ってくるんだろ・・・?」と
幾分かの不安を抱えながら観続けること自体が、観客にとってストレスになるわけで、スピルバーグの術中である。
不安とストレス、これが少しずつ溜まって、それでも目を離すことができないという環境を作ることが大切です。
スピルバーグは『JAWS/ジョーズ』の頃から、このセオリーをキチッと踏襲して映画を作っています。

ですから、これは誉め言葉として使っていますが、スピルバーグの監督作品は大ハズレしないのです。

それにしても、“ジュラシック・パーク”のある島の地形がどんなものなのか分かりませんが、
何故に島に降り立つヘリポートが、あんな滝つぼの近くに設置したのか、謎ですね。。。
見るからに気流が安定しなさそうな場所にあって、水平に高度を落とさなければならないので、かなり怖い(笑)。

毎回、必ず玄関口となければならないので、もっと良い場所がありそうですが、
やはり大半を“ジュラシック・パーク”の土地として使いたかったのか、随分とスゴい場所に設置したものです。

とまぁ・・・これはこれで、原作にあった描写を踏襲したのか、スピルバーグらのアイデアなのか、
僕は分かっていないのですが、いずれにしてもテーマパークへのアクセス自体が冒険心をくすぐる。
ヘリコプターは大量輸送には向かないので、実際に開園するにはスゴいピストン輸送するか、
大型の船で来るしかないとか、映画を観ながら、そんなどうでもいいことばっかり考えてしまいます。

これも段々、自分がビジネス的に物事を考えてしまう傾向が強くなったからなのかな。。。

(上映時間126分)

私の採点★★★★★★★★★☆〜9点

監督 スティーブン・スピルバーグ
製作 キャスリン・ケネディ
原作 マイケル・クライトン
脚本 マイケル・クライトン
   デビッド・コープ
撮影 ディーン・カンディ
特撮 デニス・ミューレン
   スタン・ウィンストン
   フィル・ティペット
   マイケル・ランティエリ
   ILM
編集 マイケル・カーン
音楽 ジョン・ウィリアムズ
出演 サム・ニール
   ローラ・ダーン
   リチャード・アッテンボロー
   ジェフ・ゴールドブラム
   アリアナ・リチャーズ
   ジョセフ・マッゼロー
   マーチン・フェレロ
   ボブ・ペック
   ウェイン・ナイト
   サミュエル・L・ジャクソン
   B・D・ウォン

1993年度アカデミー視覚効果賞 受賞
1993年度アカデミー音響賞 受賞
1993年度アカデミー音響効果編集賞 受賞
1993年度イギリス・アカデミー賞特殊視覚効果賞 受賞