ジュマンジ(1995年アメリカ)

Jumanji

1969年に工事現場で偶然見つけた謎のボードゲーム“ジュマンジ”を始め、
一人、ゲームの世界に閉じ込められ、約25年後に再び“ジュマンジ”で遊び始めた姉弟のおかげで、
中年のオッサンになった姿で現実の世界に戻ってきて、なんとかゲームを終わらせようとするアクション・アドベンチャー。

監督は、後に『ジュラシック・パークV』などを手掛けるジョー・ジョンストンで、
おそらくオモチャ箱を引っくり返したようなアトラクション性高い、アクション映画を撮りたかったのだろう。

次々とゲームに登場する動物たちや雨嵐含めた気象条件が、
現実世界に降り注いでくる様子は、さながらジャングルが家の中にミックスされるという展開になっていて、
本作自体も劇場公開当時、大ヒットしていた記憶があります。主演のロビン・ウィリアムスも当時は、
すっかりハリウッドを代表するマネーメイキング・スターの一人になっていたので、彼が主演というだけで注目度も高い。

ただ、この主演のロビン・ウィリアムスというキャスティングは本作に関しては賛否があるかも。
正直、僕が本作を観て思ったのは、彼でなくとも演じられそうな役柄だなということ。持ち味は生きていない。
確かにこの手の内容の映画で、彼が下ネタ炸裂のマシンガン・トークを繰り広げても場違いなだけですが、
子どものときにゲームの世界に閉じ込められたという設定ですから、彼が得意としそうなキャラクターなだけに
もっとロビン・ウィリアムスなら面白く出来たのではないかと思った。彼のキャラからすると、不完全燃焼に見える。

自分は何を思ったのか、40歳を過ぎてから本作を初めて観たのですが(笑)、
劇場公開当時、スゴく楽しそうな映画だなぁと勝手に想像していたのですが、僕の期待が大き過ぎたかなぁ。

どこか僕の中では、微妙な距離感を感じる映画に見えてしまったなぁ・・・という印象。
映画の勢いはスゴいのですが、単に動物やら嵐やら非現実なものが襲ってくる映像が続くというだけで
観客も一緒に巻き込んでしまうというほどのスペクタクルな感じではないのが、チョット微妙な感じかな。

ボードゲームのコマを進めながら、進んだ先のコマで出てくる“言葉”がそのまま現実になるという設定ですが、
この設定に無理があるような感じがして、今一つ映画の世界観に入り込めないまま、映画が進んでしまった。
子どものときに観た方が良かったかなとも思ったけど、この世界観に童心だったら入り込めるのかは自信がないなぁ。

もう少し、特に映画の前半はテンポアップして進めた方が良かったと思うし、
途中で主人公を追ってくる謎のハンターが、唐突に登場してくるのですが、ここはもっと説明した方が良かったかな。

どことなくモサモサしているような映画の進行に見えたのですが、その割りにキチンと説明してくれない。
前後関係やどういうことなのかが、映画の最後の最後まで分からず終いなものだから、えらく不親切に見えます。
まぁ、ゲームのキャラクターだから詳細な説明はいらないというところなのでしょうが、訳が分からぬまま
主人公や彼と行動を共にする子どもたちがピンチになるという感じで、映画の世界観に入り込みにくい。

90年代半ばのCG技術を駆使した作品なので、映像的には今観ても、そこまで見劣りはしないと思う。
ジョー・ジョンストンもこういう映画では、ノウハウを持っているディレクターなので中途半端なものではない。
『ジュラシック・パーク』で世界に見せつけたように、当時のILMの技術力はやはり素晴らしいものだと思う。
(勿論、映像技術は日進月歩。今の技術力が優れていることには変わりないので、旧時代のCGには見えるが・・・)

台所に猿が侵入し、やりたい放題暴れまくったり、家の玄関から鳥の大群が逃げて行ったり、
市街地の中をゾウやらサイやらが大暴走し、車がゾウに踏みつけられメチャクチャにされてしまう。
そんな漫画で描かれたような映像表現を、実写として再現することが出来た、この技術の進展は当時は画期的だった。

僕はこの頃に映画に興味を持って観始めた中学生入りたての頃でしたが、
当時、テレビで放送されていた本作の劇場予告編は「なんだかスゴそうな映画だなぁ」と思って観ていました。
(当時から映画館に行くタイプではなかったので、残念ながら映画館まで見に行ってはいないのだが・・・)

あまり正確に記憶はしていなかったのですが、この映画を観ていてビックリしたのは、
現代にボードゲームを再び起動させた姉弟の姉役として、子役時代のキルスティン・ダンストが出演していること。

そういえば、この頃、TVシリーズ『ER −緊急救命室−』などにも出演していたなぁとは思いましたが、
そもそも94年の『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』で注目された子役女優でしたものね。撮影当時、13歳。
今はハスキーな声ですけど、さすがに当時は声が違う。当時から女優として大成しそうな雰囲気はありますね。
日本では、あまり注目度が上がらなかったけど、彼女は子役から上手く大人の女優へとシフトした成功例だと思います。

まぁ、子役から20代の頃にかけて出演した作品と比べると、最近は当たり役がないけれども
それでも着実に女優としてのキャリアを築いていて、まだまだこれから飛躍の可能性を秘めた女優さんだと思います。

本作は2010年代に続編が製作されたようですが、アメリカでは未だに人気作なのでしょう。
映画の中身的にも、アトラクション性は高いので映画のテーマパークなどでアトラクションになりそうですね。
実際にこのスゴロクをやるとなると時間がかかるけど、ヴァーチャル・ゲーム風に演出すると面白そう。
(主演のロビン・ウィリアムスが既に他界してしまったので、もう企画として難しいかもしれないけど)

ちなみに現代の姉弟の両親はカナダで交通事故死しているという家庭の境遇で、
キルスティン・ダンスト演じる姉は、大人びた振る舞いをしていますが、少々虚言癖がある。
そんな深刻な要素も、映画は軽く“流して”描いているように観えましたが、それはラストにしっかりと“回収”するから。

そういう優しさが本作にあるのは好印象なので、この微妙な距離感はなんとかして欲しかった。
映画の視点が今一つ、主人公のアランの視点になり切れていないところが、本作の弱さだと思う。
内容的には、やっぱりアランの視点で進めるべき映画であって、現代の姉弟にしてしまうチョットおかしなことになる。

ただ本作は、映画の途中でどの視点を中心にして描いていくのかを見失っている気がする。
それが、次々と彼らに襲いかかってくるピンチの連続にも、“のめり込む”ように映像を観れなかった原因かなと。
そうなると、映画の世界観にも上手く馴染むことができないなぁ。ロビン・ウィリアムスも不完全燃焼に見えてしまうし。
映画の尺の長さなどは丁度良かっただけに、一つボタンをかけ違えてしまったことで、歯車が狂ってしまったようで残念。

本作のロビン・ウィリアムスは、僕の中ではそこまで持ち味が生きたという印象はなかったけど、
それでも90年代のロビン・ウィリアムスはホントに安心の“ブランド”でしたからね。クセは強いので賛否はありましたが、
元々の得意分野である喜劇もいろんなタイプのコメディ映画に出演しましたし、ドラマ系の作品でも定評がありました。

00年代に入ってからは、役の幅を広げることを意識していたのか、サスペンスにも出演していて、
円熟期に入ってきたかと思った頃の早逝でしたので、本作のように元気いっぱいの頃の出演作を観ると、
あらためて彼の早逝が悔まれます。ナイーブなところがあった役者さんだったようなので、悩みはあったのでしょう。
(生前自ら公言していましたが、彼は何度かドラッグとアルコール依存症の治療を繰り返している)

彼も出演していたヒット作の『ナイト・ミュージアム』なんかは、本作に通じるものがあるかもしれませんね。
オモチャ箱を引っくり返したら、どうなるか?みたいなニュアンスのある映画として、共通しているような気がします。

欲を言えば、“ジュマンジ”自体はスゴロクを行うボードゲームなので、
せっかくだから、もっとゲームに興じる姿を映して欲しかった。みんなルールもよく分からずやっていて、
最初にゴールに着いた者が「ジュマンジ!」と叫べばゲームが終わるということくらいしか、ルールが分からない。
観客もあとどれくらいでゴールなのかが、よく分からず、進んだマスごとにパニックが襲いかかってくるという
パターンの連続なので、肝心かなめのゲームの進行状況が、映画にリンクしないのは実に勿体ないと思います。

現実に、こんなパニックに襲われるゲームやってしまったら、もう二度とゲームはやらなくなるだろうなぁ・・・(苦笑)。

(上映時間104分)

私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点

監督 ジョー・ジョンストン
製作 スコット・クルーフ
   ウィリアム・ティートラー
原作 クリフ・ヴァン・オールズバーグ
脚本 ジョナサン・ヘンズリー
   グレッグ・テイラー
   ジム・ストレイン
撮影 トーマス・E・アッカーマン
特撮 ILM
編集 ロバート・ダルヴァ
音楽 ジェームズ・ホーナー
出演 ロビン・ウィリアムス
   ジョナサン・ハイド
   キルスティン・ダンスト
   ボニー・ハント
   ブラッドリー・ピアース
   ベベ・ニューワース