ジョーズ3(1983年アメリカ)

JAWS 3

劇場公開当時、懐かしの3Dメガネをかけて鑑賞する作品だったらしく、
襲ってくるサメを立体的に見るということで恐怖心を煽ることが“売り”だったらしいのですが・・・
これは正直言って、惰性で続けてしまったシリーズ第3作という感じでした。これは結構なトンデモ映画かも(苦笑)。

監督はシリーズでずっと特撮を担当してきたジョー・アルブスで、本作も勢いに乗って撮ったのでしょう。

さすがに映画の設定として、前作までのアミティを舞台にした作品というわけにもいかず、
本作では一転して、前作までの主人公であった警察署長ブロディの子供が水族館を併設したテーマパークで
サメの急襲にあって、テーマパーク自体がパニックに陥り来場者の命を救わなければならなくなる姿を描きます。

前作と同じパターンで構成するわけにはいかなかったのは分かりますが、さすがに中身も無理がありますね。
海洋パニックとしては成立していますけど、サメがジワジワと遊泳客を付け狙うスリルがあまりに少なくなっていて、
これは新しい趣向の映画になったと言ってもいいと思いますし、正にサメに食われるところが描かれないのは寂しい。

これを観てしまうと、もう前作でシリーズとしての限界点を迎えていたのだろうと悟っちゃうんですよね。。。

ただ、本作で描かれた海洋テーマパークは特撮で表現した部分もありますが、発想はスゴいなぁと思った。
建物の地下に行くと海底にガラス張りのトンネルが張り巡らされ、海の中を散歩しているような感覚になれる。
今の時代じゃ、環境保護・生態系保全の関係からNGでしょうけど、この時代には夢のテーマパークだったのかも。
この発想を映像として具現化させたというのはスゴいことだと思うし、スケールのデカさにワクワクさせられますね。

映画の終盤では、このトンネル内が浸水して防水扉を閉めたことから、大勢の客が閉じ込められて酸素が薄くなり、
なんとかして客を助けなきゃいけない、という展開になるのですが、『ポセイドン・アドベンチャー』ばりのパニック劇が
あるのかと思いきや、これが全く緊迫感のない描写に終始してしまって、パニックなはずなのにハラハラさせられない。

まぁ、まるで『ジュラシック・パーク』ばりにパニックに陥っていくテーマパークを描くのですが、
人間がサメに襲撃されるのも、やたらと海が血に染まっていく絵ばかりを並べるので、まったくスリルが無い。

少なくとも第1作のスピルバーグから感じられた、限られた予算の中でも如何に観客をビックリさせられるか、
この1点に絞って知恵を絞って映像を構成しようという気概は感じられず、ほぼほぼ前2作の繰り返しに終始するし、
オマケにサメが気配なく忍び迫って来るスリルが描かれずに、すっかりシリーズの良さが無くなってしまいました。
監督のジョー・アルブスも前2作の特撮で、色々と経験していたのだろうと思うのですが、それらが生かされていません。

この第3作を観てしまうと、本シリーズは少なくとも第2作の失敗の時点で止めておけば良かったと思えてならない。
ましてや、、この内容を3Dメガネで観ることに何か醍醐味があったのか...正直言って、よく分かんないんですよね。

信じられないことに第3作がこの調子だったのに、本作製作から4年が発った87年に第4作を製作しました。
相変わらずの調子だったようで第4作も不評だったのですが、普通なら第3作がこの出来なら続きは無いですよね。
それでも続編を作りたい、更なる続編を観たいという映画人やファンがいたということで、求められてはいたのでしょう。
しかし、それならばもっと期待に応えて欲しかったなぁ。結局、この映画で作り手は何をしたかったのかが分からない。
ドラマ描写にしても、アミティのようなリゾート地に於ける開発者とそれに警鐘する者との攻防みたいなものも無い。

これでは映画が盛り上がらないですよね。どこか全てが表層的な描写に終始してしまっているのでねぇ・・・。

そしてサメを退治するシーンにしても、何一つインパクトが無い。
第1作での「さぁ来い、バケモノ!」をライフル構えるブロディ署長のショットや、第2作の高圧電線に噛みつくサメなど、
ああいった映画のハイライトとなる見せ場が無いことも寂しく、これでは映画自体がどうしても磨かれることはないです。

おそらく作り手はテーマパークのコントロールセンターに噛みつきにくるサメを捉えたショットが
本作最大の見せ場にしたかったのでしょうが、さすがにこれは荒唐無稽。しかも、特撮も粗雑な感じで臨場感ゼロ。
もの凄く大事なところだったと思うんで、この残念さは致命的。スピルバーグは本作のことを、どう思ったのだろうか?

若き日のデニス・クエイドが主演を務めていますが、彼にもそこまで活躍の場が与えられていないのも寂しい。
テーマパークで働く若者たちを楽しそうに演じているので、“ワイガヤ”な感じで楽しい撮影現場だったのでしょうけど。

血に飢えたサメにやられて部分的に破壊されてしまった海中トンネルを、海の中から補修するために
この主人公らがボンベを背負って修復しに行くのですが、この修復作業についてももっとキチンと描いて欲しい。
サメの襲来との闘いになるのは明白だったし、もっとしつこくサメが襲撃しに来るくらいの執念を表現して欲しい。
やっぱり、この手の映画はしつこさが無いと面白くないですからね。面白くしようと思えば、もっと出来たはずだ。

テーマパークで繰り広げられるショーで、水上スキーを使ったものがありますが、これはなかなかお見事(笑)。
そこにサメがやってくるなんて、楽しそうなシチュエーションでお約束のパニックに転じるのですが、盛り上がらないなぁ。
サメが迫りくるのに流れる“あの音楽”は使いづらかったのかもしれないけど、音楽がないと緊張感が無さ過ぎますね。
サメの背中が海面から出ている姿なんかも、なんかミニチュアのヨットが浮いてるなぁ・・・くらいにしか見えないし。

僕の期待が大きすぎたのかなぁ・・・予想以上にB級な仕上がりの映画だったので、チョット戸惑いましたね。
そういうB級映画が好きな人にはオススメできるんだけど、これを3D映画として大々的に公開したことがスゴいと思う。
当時も人気シリーズの第3作ということで、ファンの期待値は高いところにあっただろうし、ガッカリ感は強かったかも。

劇場公開されてからも評判が芳しくなく、83年度のラジー賞で作品賞はじめ5部門にノミネートされましたけど、
不思議と1つも受賞はありませんでした。このレヴェルの作品なら、総なめしてもおかしくはなかったと思いますが・・・。

ただ、強いて言えば、チョット嫌な性格しているチャラい男がテーマパークの経営者に呼ばれて、
サメ騒動に途中から合流してくるのは良いと思った。やっぱり少しくらいは観客にとってストレスになる存在が欲しい。
アッサリと退場してしまうのは気になったけど、こういうチョット嫌な性格の登場人物は一人くらいいた方が良い(笑)。

特にサメに飲み込まれそうになって、もがく様子をサメの口の中から捉えたショットは悪くないですね。
ここもハイライトの一つだったのでしょうから、こういったシーンももっとしつこく演出した方が良かったと思いますね。
しかも、明確に鋭利な爪で噛まれたわけでもないのに、やっぱり血が噴き出ているという描写もなんだか変ですがね。
単純に飲み込まれただけではないということですからね。こういうトンチンカンな描写があるのも、チープ感満載だ。

この映画、全体的にアッサリさせ過ぎなんです。もっと見せ場を凝縮して、メリハリをつければ少しは良くなったと思う。
この辺はジョー・アルブスに監督の経験が無かったということが痛かったかな。本作以降も一作も監督してないですし。

やっぱり...物語の舞台を無理にアミティから変えなくても良かったのではないかな?
リゾート開発地としてのアミティに経済効果を期待する者と、サメ被害からの安全性を訴える者の対立もあるけど、
本作はチョット弱い。せっかくブロディ署長の息子という設定なので、そのままアミティでも良かったような気がします。

その辺も含めて、もっと撮る前に冷静に精査できるディレクターに撮って欲しかったなぁ。
ジョー・アルブスなりに手を尽くしてくれたのだろうけど、やっぱり全体のバランスをとって演出できたようには思えない。
それは人間模様もしっかりと描くことが出来ず、時代は様々なパニック映画が誕生した後ということもあってか、
さすがに『ジョーズ』の冠だけでなんとかなる時代ではなかった。そうなだけに、もっと中身を精査して欲しかったなぁ。

いくらリチャード・マシスンが書いた脚本とは言え、このシナリオ自体にさすがに無理があったと言わざるをえない。
もう少し経験がある人が撮っていれば、脚本自体もそうですし、編集も違った形だったのではないかと思います。

こうなってしまうと、ジョー・アルブスもシリーズで誇りを持ってやってきたはずの特撮も今一つで、
テーマパーク内にサメが侵入してきたということは、もともといたイルカとも攻防があるのかと冷や冷やしてたけど、
そんな展開があるわけでもなく、どこか行き当たりばったりな展開に陥ってしまったことが致命的な作品になりました。

シリーズとしては苦しい第3弾となってしまい、多くのファンの期待を裏切ることになってしまいました。
興行収入的には失敗したわけではないようだけど、これはB級映画だと予め認識して観た方が楽しめると思います。

(上映時間98分)

私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点

監督 ジョー・アルブス
製作 ルパート・フッツィグ
原案 ガードン・トゥルーブラッド
脚本 リチャード・マシスン
   カール・ゴッドリーブ
撮影 ジェームズ・A・コントナー
音楽 アラン・パーカー
出演 デニス・クエイド
   ベス・アームストロング
   ルイス・ゴセットJr
   サイモン・マッコーキンデール
   ジョン・パッチ
   リー・トンプソン

1983年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト作品賞 ノミネート
1983年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト監督賞(ジョー・アルブス) ノミネート
1983年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト助演男優賞(ルイス・ゴセットJr) ノミネート
1983年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト脚本賞(リチャード・マシスン、カール・ゴッドリーブ、ガードン・トゥルーブラッド) ノミネート
1983年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト新人賞(イルカのシンディ&サンディ) ノミネート