ジャクソン・ブラウン/スタンディング・イン・ザ・ブリーチ・ツアー2015

Jackson Browne/Standing In The Breach Tour 2015

2015年3月11日(水)[渋谷 Bunkamura オーチャードホール]

       

01 The Barricades Of Heaven バリケーズ・オブ・ヘヴン
02 Looking Into You ルッキング・イントゥ・ユー
03 The Long Way Around ザ・ロング・ウェイ・アラウンド
04 Leaving Winslow リーヴィング・ウィンズロー
05 These Days 青春の日々
06 Shaky Town シェイキー・タウン
07 Just Say Yeah ジャスト・セイ・ヤー
08 I'm Alive アイム・アライヴ
09 You Know The Night ユー・ノウ・ザ・ナイト
10 For A Dancer ダンサーに
休憩(20分)
11 Your Bright Baby Blues ユア・ブライト・ベイビー・ブルース
12 Rock Me On The Water ロック・ミー・オン・ザ・ウォーター
13 If I Could Be Anywhere イフ・アイ・クッド・ビー・エニホエア
14 Which Side? ウィッチ・サイド?
15 Standing In The Breach スタンディング・イン・ザ・ブリーチ
16 Looking East ルッキング・イースト
17 The Birds Of St. Marks ザ・バーズ・オブ・セント・マークス
18 Doctor My Eyes ドクター・マイ・アイズ
19 Sleep's Dark And Silent Gate 暗涙
20 The Pretender プリテンダー
21 Running On Empty 孤独なランナー
アンコール
22 Take It Easy / Our Lady Of The Well [Medley] テイク・イット・イージー / 泉の聖母 [メドレー]
23 Before The Deluge ビフォア・ザ・デリュージ
約5年ぶりに実現したジャクソン・ブラウンの来日公演。
前回はシェリル・クロウとのジョイン・コンサートという企画でしたが、今回は久々の単独来日公演です。

いやはや、今回は遠征してまで行って、とっても良かった。
途中、約20分の休憩がありましたが、コンサート本編だと約2時間35分の内容で、
相変わらず若々しいジャクソン・ブラウン、絶好調でした。オマケに終始、ご機嫌な感じで実にパワフル。

若干の空席はありましたが、ほとんど埋まっている客入りで、根強い人気を感じましたし、
今回、初めて行ったオーチャードホールもとっても音響が良くって、とっても満足度が高いコンサートでしたね。

まず、全体を通しての感想から言うならば、とっても丁寧に演奏している感じで、
年齢が60代後半に差し掛かったジャクソンもかなり鍛えているのでしょうね。声がまだまだ若い!
体のラインも若い頃のように相変わらずスラッとしていて、あの維持力は本気で凄いと思います(笑)。

そして、ホントにお喋りが好きなんですね。
曲の紹介や、おりしも「3・11」から4年後ということもあって、東日本大震災についてスピーチするなど、
欧米のミュージシャンとしては、とにかくよく喋るし、意外に客席とのコミュニケーションをとりたがる性格なんですね。

かつて70年代のシンガソングライターのブームの時代にデビューし、
その後、アメリカ社会の変遷と共に良い時も悪い時もトップシーンを走り続けてきたジャクソンには
色々な想いがあって、やはり現代社会に対しても、相変わらず物申したいことがいっぱいあるのでしょう。
個人的にはジャクソンがシリアスになり過ぎていく側面は、音楽を聴くには重たすぎて苦手ではあるのですが、
新作アルバム Standing In The Breach(スタンディング・イン・ザ・ブリーチ)を製作したことも、
ハイチでの大地震がキッカケで歌に彼の想いをこめたことがあったわけですから、21世紀になっても尚、
様々な想いを抱えながら走り続けている“孤独なランナー”であるジャクソンが健在だということなのでしょう。

開演は19時だったのですが、会場が暗転したのが、
ホントに時間キッカリの19時ジャストで、あまりに時間厳守でビックリ(笑)。

しかも、暗転とほぼ同時にステージに登場してきたのにもビックリさせられましたね。
ひょっとしたらジャクソンって、凄くせっかちな人なのかもしれませんね(笑)。

冒頭の The Barricades Of Heaven(バリケーズ・オブ・ヘヴン)で、いきなり10分近くある熱演で、
次第に盛り上がっていく実に熱い演奏で、若々しくパワフルな姿に安心しましたね。
その後はアコースティック・ギター、エレクトリック・ギター、エレクトリック・ピアノと次々と変えながら進みます。

それと、噂には聞いていたけれども、ジャクソンのコンサートって、
ホントに客席からのリクエストが凄くって、この日はリクエストには応えなかったけれども、
次々と The Late Show(ザ・レイト・ショー)、Late For The Sky(レイト・フォー・ザ・スカイ)、
Somebody's Baby(誰かが彼女を見つめてる)、Rosie(ロージー)などとリクエストが繰り返されます。

「一人から3曲もリクエストされるなんて、初めてだよ」と苦笑いしたり、
「全部できればいいんだけどね。セットリストは僕なりに考えてきてるんだから」とコメントしたり、
この日は予定されていたセットリストそのままでやりたかったんでしょうね。少し困っていたかも。
どうやら9日の名古屋公演では、リクエストに応えて Call It A Loan(コール・イット・ア・ローン)を演奏したらしく、
おそらくこれだけの“リクエスト大会”になることは、普通のことなんでしょうね。

どうやら Just Say Yeah(ジャスト・セイ・ヤー)はジャクソンの思いつきで演奏したらしいのですが、
冒頭で歌詞を間違えたのか、笑ってしまって、「ゴメン、ゴメン。もう一回戻るよ」と言って歌い直したり、
とっても貴重なシーンでしたね。ああいう人間らしい部分を残しているのも、如何にもジャクソンらしい。

休憩前に演奏した For A Dancer(ダンサーに)は感動したなぁ。
個人的には Late For The Sky(レイト・フォー・ザ・スカイ)をやらなかったのは残念だけど、
この For A Dancer(ダンサーに)だけでも、十分に満足。実に味わい深い、素晴らしい名唱でした。

休憩から戻ってきたら、客席のオバちゃんが、ステージに花束を置いて、
それを見たジャクソンが目線を、そのオバちゃんの方に向けて、まるで「君のために歌うよ」と言わんばかりに
Your Bright Baby Blues(ユア・ブライト・ベイビー・ブルース)を優しく歌ったのも印象的で、
新作のタイトル・トラック Standing In The Breach(スタンディング・イン・ザ・ブリーチ)を歌う前には、
反原発を主張し続けるジャクソンらしく、「ノー・ニュークス」と自身が投じる反原発活動について言及。

続く Looking East(ルッキング・イースト)では、後半の演奏が熱い。
そして Doctor My Eyes(ドクター・マイ・アイズ)でも、ギター・ソロに見せ場を作ります。
とにかくジャクソンの思い描いたサウンドを再現できるバンドをようやく見つけたことに、充実感があるのでしょう。

最近では珍しい、Sleep's Dark And Silent Gate(暗涙)のピアノ弾き語りも素晴らしく、
The Pretender(プリテンダー)の前奏では、おそらくこの日、一番の大きな拍手。
アンコール前はジャクソンのテーマ・ソングであり続ける Running On Empty(孤独なランナー)で
大盛り上りのうちに終了。気づけば、1階の客席を中心にオジサン、オバサンたち大盛り上りの会場でした。

アンコールにしても、ステージ裏に下がったと思ったら、
ものの1分もしないうちに再登場して、すぐにアンコールに応えるという律儀さ(笑)。
(このコンサートで一貫しているのは、ジャクソンはあまり客をジラさないということ)

アンコールは、イーグルスに提供した Take It Easy(テイク・イット・イージー)でしたが、
オリジナル・アルバムでのスタジオ収録と同様に Our Lady Of The Well(泉の聖母)へのメドレーというのも、
オールドなファンの心をくすぐる流れで、アンコールとしては微妙な空気感ですが(笑)、それでも良かったです。

そして何より嬉しかったのは、最後にやはり「3・11」の被災者に捧げると言って歌った、
Before The Deluge(ビフォア・ザ・デリュージ)はこういう場で聴くと、ある種のカタルシスを感じますねぇ。

個人的にはコンサートの最後に聴きたかった曲だったので、
このフィニッシュはとても良かったし、名古屋公演ではやらなかったそうなので、聴けて良かったですね。

アンコールが終了したら、客席をジラすことなく、すぐに明かりが(笑)。
しかし、終わってみれば、既に22時でヴォリュームたっぷりの濃密なライヴでした。
全体的に内省的な曲が多い印象があった割りには、最後はしっかり盛り上げて、1階席は総立ちでした。

そりゃ、欲を言えば Late For The Sky(レイト・フォー・ザ・スカイ)や Farther On(もっと先に)、
リクエストのあった、The Late Show(ザ・レイト・ショー)、Somebody's Baby(誰かが彼女を見つめてる)だって、
聴きたかったですけど、そういった魅力を更に残しながらも、それでも十分に充実感ある内容でしたねぇ。
とにかくジャクソンの若々しさが目立つライヴでしたが、マイクの性能がメッチャ良くって、
ジャクソンの吐息や唸り声のような音まで全て拾っているのも、どこか人間らしくて良いですね(笑)。

とっても楽しい、素晴らしい一夜だっただけに、
またジャクソンの来日公演があるならば、是非是非、もう一回行きたいなぁ〜。