ディボース・ショウ(2003年アメリカ)

Intolerable Cruelty

うーーーん...残念。期待してた作品だったんだけど、そこまで盛り上がれず。。。

離婚裁判ばかりを担当にするスゴ腕弁護士マイルズが、担当したクライアントの妻マリリンに恋をし、
独身に戻ったマリリンを何とかして口説こうとするブラック・ユーモアたっぷりなラブ・コメディ。

とは言え、単純な恋愛映画というわけではなく、
自らの離婚裁判で痛い目に遭わされたマイルズへ復讐しようとするマリリンの魂胆があり、
映画は一筋縄ではいかない、実に複雑な恋愛関係図を描き出します。
さすがはコーエン兄弟の映画だと思わせる作りで、映画の設定としては悪くない。

せっかく良い素材を揃えた映画なんだけれども、今回はその調理・加工がイマイチですね。
確かにそこそこ面白いストーリー展開なんだけれども、映画が一向に盛り上がらない。

まぁ往々にして、コーエン兄弟の映画っていつもこんな感じなのですが、
マイルズの描き方があまりに安直で納得がいかないなぁ。
少なくともマリリンと対等に張り合える、もっと賢い男として描いた方が映画は面白くなったと思う。
確かにそれだけオトコの単純さを象徴しているけれども、個人的にはコン・ゲーム的面白さを出して欲しかった。

騙し騙されながらも、あやうい恋の空気を感じるオトナの男女の駆け引きという方が映画は魅力的だっただろう。

本作を観る限りでは、ダンディなマイルズはあまりに単純でバ●な男だ。
まぁ映画の序盤から、やたら歯並びを気にしたりして、安っぽい感じを出しているけど、
映画の雰囲気そのものは、せっかくゴージャスに彩っているのだから、映画自体をもっと光り輝かせて欲しい。
だからこそ、マイルズはあくまで賢い男として描き、マイルズとマリリンの恋の駆け引きを
もっと強調して描くようにすれば、もっと映画はマジックを起こすことができただろう。

上映時間もタイトな作品だからこそ、この辺はもっと気を遣って欲しかったなぁ〜。

とは言え、演じるジョージ・クルーニーは独特なダンディズム全開だし、
相手役のキャサリン・ゼタ=ジョーンズはオトナの女性としてのフェロモンがムンムンと漂っている(笑)。
こりゃマイっちゃうぐらいの強いフェロモンだから、映画の大きなインパクトとなっていますね。

それと、この映画の大きなコンセプトがもう一点。
それは往年のハリウッド製ロマンチック・コメディの復元だろう。
カメラの色調にしても、映画のテンポ自体もそうなのですが、かなり意識して撮られています。
まぁコーエン兄弟がいかに映画が好きかというところをクローズアップしているわけなのですが、
これらのチャレンジは映画のカラーにまずまず馴染んでいると思います。

特にお約束的展開ではありますが、映画のクライマックスの結末の描き方など、
こういった一連のクラシック映画の復元というコンセプトが見事にマッチした感じと言ってもいい。

従って、本作の場合は映画が面白くなる要素は数多くあったと思うんですよね。
コンセプト自体は間違ってないし、キャスティングを含め良い素材が揃っているのは確かなのですから。
ましてやコーエン兄弟の実績が確かなことは明らかだし、僕も観る前は本作に対して大きく期待しておりました。

この映画において、チョット残念なのは脇役が活きていないこともありますね。
例えば映画の冒頭で妻の不倫を知って激怒するTVプロデューサーを演じたジェフリー・ラッシュ。
映画の冒頭であんな立ち回りなんだから、てっきり重要な役柄なのかと思いきや、
さっさと退場して、アッサリとメイン・ステージから消え去ってしまう。
挙句、忘れた頃にカメラにフレーム・インしてくるのですが、ほとんどチョイ役扱いですね。
さすがにこれでは勿体ない。一体、何のために彼が登場してきたのか、よく分かりません。

まぁ強いて言えば、ビリー・ボブ・ソーントンが演じた石油王の存在は面白い。
ムチャクチャ訛りが強い金持ちの石油王なんだけれども、彼のキャラクターをもっと活かして欲しかった。

カメラは名手ロジャー・ディーキンス、相変わらず良い画面ですね。
ハリウッドのクラシック映画に肉薄した、実に温かみのある画面で何故か懐かしいカメラだ。
実は最初にこの映画を観たとき、このカメラも好きになれなかったのですが、
この映画のコンセプトを知ると、このカメラである必要性がよく分かりましたね。
このカメラだからこそ、主演2人のゴージャスさが彩られたと言っても過言ではありません。

ただ、コーエン兄弟の勢いが次第に衰えてきているのが寂しいなぁ。
僕は『ビッグ・リボウスキ』が大好きだから、こういう映画作りになってしまうと、何だか複雑だなぁ。
本作の後に彼らが撮った『レディ・キラーズ』もイマイチな出来で落胆させられたので、
そろそろドッカン!と楽しませてくれる、コーエン兄弟節全開のコメディ映画を観たいなぁ〜。

しっかし、この映画観て、率直に思ったのですが、
婚前協議書があっての結婚って、なんかイヤだなぁ〜。まるで“裏”だらけの結婚じゃないですか!(笑)

(上映時間99分)

私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点

監督 ジョエル・コーエン
製作 イーサン・コーエン
    ブライアン・グレイザー
原案 ロバート・ラムゼイ
    マシュー・ストーン
    ジョン・ロマーノ
脚本 ロバート・ラムゼイ
    マシュー・ストーン
    イーサン・コーエン
    ジョエル・コーエン
撮影 ロジャー・ディーキンス
音楽 カーター・バーウェル
出演 ジョージ・クルーニー
    キャサリン・ゼタ=ジョーンズ
    ジェフリー・ラッシュ
    ビリー・ボブ・ソーントン
    セドリック・ジ・エンターティナー
    エドワード・ハーマン
    リチャード・ジェンキンス
    ポール・アデルスタイン