インファナル・アフェアV/終曲無間(2003年香港)
Infernal Affairs V
うーーん...こういうシリーズ最終章になっちまったか。。。
香港裏社会と警察の攻防を描いて、世界的な大ヒットとなり、
06年には『ディパーテッド』というタイトルでハリウッド・リメークも実現した、
サスペンス・アクション・シリーズの第3作で、どうやら本作で三部作が完結したらしい。
僕は第2作も、第1作ほどではないけれども、そこそこ楽しめたのですが、
このシリーズ最終章は正直言って、キツかったなぁ(苦笑)。
しっかりと映画は作れてるようなんだけど、あまりに前作までのテンションと違い過ぎて、
本作はどうしてもダルくて、平坦な心理的葛藤を描いた作品という印象が拭えません。
決して、凄く映画の出来が悪いというわけではないのですが、
個人的には前作までと映画のカラーは統一して欲しかったと思うし、アプローチは変えて欲しくなかったなぁ。
僕が観るに、このシリーズ最終章は「生き残った者が地獄をみる」というフレーズを地で行ったような内容で、
マフィアの手下であったラウが、何とかして第1作のクライマックスでの騒動を乗り越えて、
マフィアとの関係を断ち切りながらも、結局は過去の贖罪の意識との葛藤に時間を費やします。
「生き残った者が地獄をみる」からこそ、ラウは苦悩し、やがて精神を病んでしまいます。
それが映画の後半に差し掛かると、ラウの行動が暴走を始め、
彼の精神的な葛藤が表面化してきてしまい、周囲の同僚たちも奇異に感じ始めます。
まぁこの辺は上手く利用できていて、映画の緊張感を盛り上げることに成功していますね。
但し、観る前の僕の勝手な想像と、本作の内容に乖離があったためか、
どうしても、いざ観てみたときの戸惑いの大きさが忘れられず、この戸惑いがマイナスに働いていますね。
(どうせなら前作までのストイックなまでのフィルム・ノワール的な味わいで勝負して欲しかった。。。)
それと、時間軸をズラすのは良いけど、これはあまりに複雑過ぎますね(笑)。
おそらく編集していても、まるでパズルをしているような感覚だったでしょうが、
あまりに頻繁に時制がコロコロ、変更してしまうものですから、観ながら整理するのが大変ですね。
そこへラウが精神的に混乱していく様子がクロスオーヴァーしますから、余計に映画が混乱します。
あくまでシリーズのファン向けの続編って感じもしますが、結局、映画が崩れかかってるんですよね。
全体的にアクション・シーンを削減して、心理描写に移行したのも大きいですね。
さすがにここまで映画のテンションが変わってしまうと、同じシリーズの作品としては違和感を感じます。
映画のベースとなるのは、第1作から数ヵ月後のラウのエピソードなのですが、
それを描くにあたって、精神的に混乱を極めるラウを表現するためにと、生前のヤンが登場してきて、
第1作の数ヶ月前のエピソードが紹介され、故意に時制を混ぜ合わせてしまったり、
また同時に事件後、内務調査課に転籍していたラウが巻き込まれた警察内部の汚職事件を説明するために、
やはり第1作の数ヶ月前のエピソードが紹介されるなど、とにかく映画が「あっち行ったり、こっち行ったり」状態。
それで結局、心理描写主体が免れない内容になってしまいましたから、
前作までのコンセプトと全く違う方向性を強いられたわけで、結果として重苦しい内容になってしまいましたね。
「運命は人を変えるが、人は運命を変えられない」...
また、このフレーズも利いていて、その全てをラウが背負っているわけだから、なんだかスゴい(笑)。
と言うのも、本編で描かれる通り、彼は数多くの人々の犠牲を伴いながら、今の地位を保ってきました。
ところがそのたびに彼は自責の念があり、恨まれているような“負い目”を感じ、生きています。
そういう運命の元に生まれてきたと言われればそれまでなのですが、
それも彼の本心は「オレは善人になりたいだけなんじゃ!」なわけですから、複雑な想いにさせられますね。
(とは言え、ラウの行動の全てが善人になるための行動だったとは言い難いけど・・・)
僕は思わず、映画の作り手が交代したのかと心配になったんだけれども、第1作から同じスタッフなんですね。
やはりこういう続編になってしまったのは、続編で第1作の“装飾”をしようとしたからですかねぇ。
こうなるのであれば、やっぱり続編は続編で単独なストーリー性を持った内容の方が賢明ですね。
色々と理由付けをしたり、第1作とのつながりを持たせようとすると、映画が回りクドくなりがちですね。
この辺は続編製作が決定した場合は、作り手に再考してもらいたいポイントの一つですね。
やはり前作までの説明を行うような続編を製作する場合は、前作までに説明を必要とする“穴”を
作らなきゃならないから、最初から続編を製作する余地を作っておかなければならないですね。
少なくともこのシリーズは、第1作の時点で“穴”が少ないから、最初から続編を予定していた企画とは思えない。
それを考えると、僕はこのシリーズは続編は続編で単独なストーリーだった方が良かったと思いますね。
全体的にこの第3作になって、無理が祟った作品という感じがしてなりません。
こうなってしまうと、「1本目のヒットでやめとけば良かったのに・・・」と言われても仕方ないんですよね。
(まぁ僕は第2作はここまで悪い出来だとは思わなかったから、第2作までは許容できるけど)
なんだか『ディパーテッド』にも続編の噂が絶えない時期があって、
脚本担当のウィリアム・モナハンが執筆していると噂されたこともありましたが、
本作みたいな続編にするのであれば、是非とも考え直して欲しいなぁ。オリジナル・ストーリーでお願いしたい。
(上映時間117分)
私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点
監督 アンドリュー・ラウ
アラン・マック
製作 アンドリュー・ラウ
脚本 アラン・マック
フェリックス・チョン
撮影 アンドリュー・ラウ
ン・マンチン
出演 アンディ・ラウ
トニー・レオン
レオン・ライ
アンソニー・ウォン
エリック・ツァン
ケリー・チャン
チャップマン・ト−