インファナル・アフェアU/無間序曲(2003年香港)

Infernal Affairs U

おぉ、やるじゃん!
大ヒットした02年の『インファナル・アフェア』の序章を描いたサスペンス・アクション。

まぁ続編というより、これは番外編と言った方がいいでしょうね。
ですから、第1作を気に入った人にしか、楽しめない作りと言われれば、それは否定できません。

序章を描いた映画であるがゆえ、第1作の補完を意味することをやってしまうあたりは、
僕には少しズルい映画のような気もするのですが(笑)、それでもそんなに出来が悪い作品ではない。
むしろこれは限られたアイデアの中で、よく練られた続編の企画であり、感心させられましたしね。

いや、僕がズルいと感じるのは、第1作の良さは必要最小限な描写で、
映画の雰囲気を最大限に出したことにあるからと考えているからなんですよね。
思わず、どうしてその良さを続編が説明的になることによって、補完させるのかと疑問に思うわけですね。

但し、少し本作で残念なのは...
フィルム・ノワールに忠実だった第1作は、ラウとヤンという2人の陰のある男のストイックな闘いを
映画のメインに据えて押しまくったというのに、本作は警部とマフィアのボスの映画になってるんですね。
それ自体は決して悪いことだとは言えませんが、映画の終盤で急激にラウとヤンの物語に戻るのは強引かな。

映画はラウとヤンが警察学校に入る頃に時代が戻ります。
ラウはマフィアのスパイとして警察学校に入学させられ、同じ頃に警察学校に入っていた、
ヤンは素行不良ということで警察学校を退学、その後、ウォン警部指揮のもと潜入警官としてマフィアへ。

実はここには複雑な事情があって、マフィアの抗争に巻き込まれたサムが窮地に陥り、
その抗争の火種となった暗殺事件はサムの妻の指示のもと、ラウが警察学校入学前に起こした事件。
なんとラウはサムの妻マリーに叶わぬ恋心を抱いていた・・・という、ある意味で常套手段のストーリー展開。

まぁこの辺の組み立てはそこそこ上手くって、ストーリー上の難点はないと思う。

でも、第1作と比べると、映画に“疾走感”が無いかな。
「走りそうで、走らない」...正にそんな感じで、映画が盛り上がりそうで、イマイチ盛り上がりません。
全体的にフィルム・ノワールな雰囲気に固執するのを止めて、ドラマ描写に力を入れた感じで、
そこに散発的なアクション・シーンが存在するといった具合で、画面の緊張感が今一つという印象を受ける。

最初に「おぉ、やるじゃん!」と言ったのは、
定石とも言える、ヒット映画の続編という企画の割りには上手くやったという意味なだけで、
本作だけ、単発的に評価すると、ひょっとしたらもっと厳しいことしか言わざるえなくなるかもしれません。

但し、マフィアの抗争の中で、ンクァンに従っていた4人の造反者が次々と殺害される、
バイオレンス・シーンだけは、異様なまでの迫力を持った良いシーンだったとは思います。
ハッキリ言って、この映画、このシーンだけが突出しているんですよね。

あと、第1作でも同様でしたが、やたらとサムが食事するシーンが印象に残りますね。
今回の第2作なんかは「やたら食ってる印象しかない映画」と言えるぐらい、食事のシーンが特徴的だ。
これは観光都市、香港だからこそ使いたくなるツールなのかな?

映画の冒頭、ウォン警部と密会するサムがデリバリーの中華を食べまくり、
サムが4人の造反者と会う現場でも、暑い中、グツグツ煮込んだ鍋を囲んで晩餐会。
何故か、美味そうに食事するシーンばかりが第1作から目につきます。
この食べっぷりの良さに、サムを演じたオッサンを何らかの形で表彰してあげたい食べっぷりの良さですね(笑)。

が、一方で気になったのは、部分・部分で安っぽい演出になってしまうこと。
例えば映画の中盤、ウォン警部が目の前で同僚が乗り込んだ車が爆破されるシーンで、
慌て動揺したウォン警部でしたが、燃え盛る車の火を消火器持ってきて、なんとか鎮圧しようとします。
けど、これはウォン警部を演じた役者さんの問題もあるかもしれませんが、思わず笑ってしまった。
「あぁぁぁぁぁぁぁ〜っ...ワァァァァァ〜!」と叫ぶのは結構だけど、建屋のエントランスに違和感いっぱいに
置かれていた消火器を持ってきて、消す気があるんだか無いんだか分からない消火剤の撒き散らし。

思わず、「これは村の消火訓練か?」と聞きたくなる稚拙さだったと思いますけどね。
つまらない重箱の隅を突くようなことを言って恐縮ですが、仮にも多数の人が観るシリアスな映画なんですから、
こんなつまらない部分でツッコミを入れられて、観客に笑われてしまっては映画としてダメなんです。

今回、初めて観たような気がるんだけど...
サムの妻マリーを演じたカリーナ・ラウって女優、失礼ながらも決して若くはないのだろうけど、
結構、キレイな女優さんですね。私生活ではトニー・レオンの奥さんみたいですけど。

そうなだけに、空港敷地内の道路でのシーンはショッキングだったな。。。

まぁ色々と注文を付けたくなる部分はあるにはあるんだけど・・・
注目され易いヒット作の続編としては、ひじょうに上手いことやってのけた作品と言っていいでしょう。

あと、どうでもいい話しばかりで恐縮なんだけど...
91年のエピソードで、ウォン警部がフツーに携帯電話を使っているシーンがあったのですが、
91年にあんな小さな携帯電話って、一般的に普及してましたっけ?

(上映時間119分)

私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点

監督 アンドリュー・ラウ
    アラン・マック
製作 アンドリュー・ラウ
脚本 アラン・マック
    フェリックス・チョン
撮影 アンドリュー・ラウ
    ン・マンチン
編集 ダニー・パン
    パン・チンヘイ
音楽 チャン・クォンウィン
出演 エディソン・チャン
    ショーン・ユー
    アンソニー・ウォン
    エリック・ツァン
    カリーナ・ラウ
    フランシス・ン
    チャップマン・トー