インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説(1984年アメリカ)

Indiana Jones And The Temple Of Doom

個人的には、これがシリーズ最高傑作だと思う。

確かに時折、明らかな合成映像と分かるような古臭さもあるにはあるのですが、
上海のナイトクラブから始まる冒頭の活劇から、映画はスタートダッシュが素晴らしく、
映画の冒頭約20分立て続けに休み間もなく、インドの奥地へと流れ着くまでのアドベンチャーが
「あぁ、この映画はスゴいことになる予感がする・・・」と思わず、心ワクワクさせられるものがあります。

かの有名な、映画の終盤にある、宮殿から脱出するために利用するトロッコを使った、
激しいチェイス・シーンも手に汗握る、大迫力の展開で製作されてから40年近く経った今も尚、
十分に楽しめる迫力があり、エキサイティングなシーン演出であり、スピルバーグ絶好調の時期である。

このトロッコのチェイス・シーンは、パリのディズニーランド・パークではこれをモチーフにした
アトラクションがあるとのことで、確かに映画の中でも半ばゲーム感覚で観ることができる。

ちなみにこの映画でヒロインの女性歌手ウィリーを演じたケイト・キャプショーは、
本作撮影にあたるオーディションでスピルバーグと出会い、約7年後の1991年に彼らは結婚しました。
スピルバーグ自身は、本作撮影完了直後の1985年に女優のエイミー・アービングと結婚していて、
約4年間の結婚生活で離婚を迎えており、どうやら離婚前から恋愛関係にあったのは事実みたいだ。

ひたすら、わめいている印象が強いウィリーではありますが、
やはりインディの恋人というのは、常に気の強い女性であって、そうでなければ彼と渡り合えないですね。
個人的には後々のシリーズにも、彼女もたまに登場させて欲しかったけれども、彼女は本作の出演だけです。

映画の時代設定は、第1作『レイダース/失われたアーク ≪聖壇≫』よりも前の1935年。
満州のギャングであるラオ・チェと“ヌルハチ”の遺骨を持ち帰ってきたら報酬のダイヤを支払うと約束し、
見事に持ち帰ってきたインディが、上海のナイトクラブでロイ・チャオと取引するシーンから始まります。

悪どいラオ・チェは、部下を従えて、武器をインディらに突きつけて脅し、
挙句の果てに報酬を支払おうとせずに、インディを毒殺しようと試みたために、インディは命からがら
ナイトクラブから脱出し、融通してもらったヘリに乗せてもらって上海から脱出することにします。
しかし、そのヘリがロイ・チャオの会社が手配した貨物用ヘリであったことから、インディらは一気に窮地に。

紆余曲折を経てインドの奥地に流れ着いたインディらは、子供が一人もいない集落に招かれて、
ニューデリーへ向かう前にパンコット宮殿に立ち寄るように懇願され、急きょパンコット宮殿に赴きます。
しかし、このパンコット宮殿はカルト教団の“サギー教”の怪しい宗教儀式に支配される異様な空間があり、
次々と仕掛けられたトラップにハマりながらも、インディらはこの儀式に近づいて、集落から奪われたとされる
“サンカラストーン”と呼ばれる石が、実はこの宗教儀式で使われている事実をつかみ、なんとか取り戻そうとします。

確かに“サギー教”の異様な儀式や、猿の脳を凍らせたものをデザートだと言って喜んで食べるなど、
立て続けに食習慣をステレオタイプに描くことで笑いをとろうとしたスタンスは、インドでも非難の対象となり、
インディは敬意を払った態度を示しているが、一方で映画の作り手が敬意を示していないと解釈されるのは、
映画の本編を観ると、これは仕方ないことかと思う。如何にもこの辺は、ハリウッドらしい後味の悪さだ。

まぁ、欧米人からすると、いつまでもインドは未開の地であり、
時代に取り残された先住民族のいる、誰も寄り付かない土地であって欲しいわけですね。
アドベンチャー心をくすぐられる土地であって欲しいのでしょうが、それは一概に現地の人が喜ぶわけではないのです。

とは言え、そういった部分を除くと、この映画は大ヒットした第1作のインパクトを
軽く超えてしまったところがスゴい、文字通りのジェットコースター・ムービーで、息つく暇もありません。

第1作で、インディの行く手を阻むように、縄の使い手が現れたのを見て、
インディが「なんだよ・・・」とガッカリしたような素振りで、相手に銃を放つというシーンがあるのですが、
本作ではこれをパロディしたかのように、やっぱり崖の上で敵と相対したときに、無意識的に銃を手で探るのですが、
今度は銃がホルダーに入っていなくて、更にインディが焦るといったシーンで、さり気なく笑いをとりにくるのが良い。

映画はノンストップにアクションが続いていくのですが、それでも小さなギャグを
少しずつ挟んでいくのを忘れておらず、本シリーズのコミカルさが本作の魅力を支えている。

スピルバーグが長くハリウッドで絶好調の期間を維持できたのは、
こういう童心をそのまま映像化するというスタンスを失わず貫き通したという点であって、
いろいろと柔軟にアイデア採り入れるスピルバーグでいながらも、エンターテイメント性高い映画では、
童心をそのままに、観客をビックリさせるということを一貫性持って頑固に続けたことが、とにかくスゴいと思う。

それを具現化する当時のILMの技術力もスゴかったけど、
何がなんでも貫くスピルバーグと、それをアシストするかのように物語の原案を提供する、
ジョージ・ルーカスが組めば、それは最高にエキサイティングで面白い映画になることは当然のことでしょう。

実はインディが探す秘宝については、常にナチス・ドイツと競争しながら奪い合うという、
ナチスとの攻防が大きなテーマではあったのですが、シリーズで唯一、本作はナチスとの関係性はほぼ無い。
そのせいか、この第2作がシリーズ中でも、仲間外れな印象になってしまうのは当然なのかもしれませんね。

僕はこの第2作、シリーズ通しても異色作なのは確かにそうだと思っているのですが、
これだけ魅力的でアトラクション性高い作品なのに、何故か興行的に大きな成功を収めたわけではないようです。

この辺は、やっぱり第1作のインパクトに負けてしまったのですかねぇ。
第1作は、それまでは冒険小説の世界に留まっていたものを、見事に映像化したことに価値があったわけで、
この第2作ともなると、さすがに当時の映画ファンにとっても、大きな驚きではなかったのかもしれません。

映画のクライマックス、ボロボロな吊り橋でのアクションはややハチャメチャではあるけど、
これもまた、手に汗握る緊張感があって良い。この窮地を乗り切るために下したインディの決断もスゴい発想だし。

スピルバーグがこういったエンターテイメントに徹した映画よりもシリアスな映画を
好んで撮るようになってから久しいですが、昨今のハリウッドを見ても、やっぱりスピルバーグを上回る
娯楽映画の名手というのはいないなぁという印象だ。中には上手くいっていない作品もありますけど、
それでも本作が象徴するような全盛期の勢いというのは、もう誰も再現することはできないのではないかと思います。

それくらい80年代のスピルバーグって、“えげつない”活躍だったと思いますね。
監督作品以外にも、プロデュース作品も含めたら、時代を代表するヒット作ばかりなはずです。

実はスピルバーグ自身、本作の出来には全く満足していないとのコメントが、
最近も報じられていましたが、それはどういった観点からなのだろうか?と気になって仕方がありません。

確かに冒険映画というよりも、アトラクション・ムービーに傾倒してしまった感はあります。
それから、ヒロインのキャラクター含めて、インディを取り巻く人物描写がおざなりになった感もあるにはあります。
しかし、僕にとってはそれも飲み込んだうえで、この映画に心躍らせた映画ファンの一人なんだけどなぁ。

それにしても、ハリソン・フォードは大量の水が放流する崖みたいな場所に縁がある。
あのシーンを観て、思わず93年の『逃亡者』を思い出した人も少なくはないのではないだろうか?

(上映時間118分)

私の採点★★★★★★★★★★〜10点

監督 スティーブン・スピルバーグ
製作 ロバート・ワッツ
原案 ジョージ・ルーカス
脚本 ウィラード・ハイク
   グロリア・カッツ
撮影 ダグラス・スローカム
特撮 デニス・ニューレン
   ILM
音楽 ジョン・ウィリアムズ
出演 ハリソン・フォード
   ケイト・キャプショー
   キー・ホイ・クァン
   ロイ・チャオ
   アムリッシュ・プリ
   フィリップ・ストーン
   ダン・エイクロイド

1984年度アカデミー作曲賞(ジョン・ウィリアムズ) ノミネート
1984年度アカデミー視覚効果賞 受賞
1984年度イギリス・アカデミー賞特殊視覚効果賞 受賞