レイダース/失われたアーク 《聖壇》(1981年アメリカ)

Indiana Jones And The Raiders Of The Lost Ark

ジョージ・ルーカスとスピルバーグがタッグを組んだ人気アドベンチャー映画の第1弾。

個人的には、実は84年の第2作が好きなんですけどね...
とは言え、この第1作はローレンス・カスダンのシナリオの良さもあって、十分に楽しい冒険映画だ。
やはり、あの有名なテーマ曲を聞くと、誰もがワクワクするような影響力がスゴいですよね。

映画の主人公は、プリンストン大学で考古学の教授を務める、
インディアナ・ジョーンズが研究活動と見せかけて、実はトレジャー・ハンターで彼の行く手を阻む連中との
攻防を繰り返しながら生活していたところ、ナチス・ドイツとの聖壇(アーク)の争奪戦に発展する姿を描きます。

映画はまるで遊園地のアトラクションのように、次々と“仕掛け”を繰り出します。
ひょっとしたら、ここまで映画にアトラクション性を付与したのは、本作が初めてかもしれません。

若く、ハリウッドでも有望格であったスピルバーグに、
『スター・ウォーズ』シリーズで一気に名を上げたジョージ・ルーカスがコンビを組んだわけですから、
それは本作に対する期待値も高かったわけで、多くの映画ファンが観たいであろう、
冒険で得られる興奮の要素を、ほぼ全て網羅したような構成になっていて、息つく間も与えません。

これは当時の技術力を考えても、ILMはじめとして、撮影班がよく頑張った作品だと思う。
冒頭の洞窟の中から、命からがら脱出するシーンなんかも、当時はかなりの苦労だったでしょうね。

今や冒険映画の古参とも言える存在で名作扱いされていますが、
当時のスピルバーグからすれば、どうやって観客を飽きさせずに魅了し続けられるか?という点について、
映画を撮りながらも、ずっと悩んでいたように思えます。それは、例えば『JAWS/ジョーズ』のように、
観客を驚かせたら作り手の勝ち、と言えるような企画ではなかったからで、中身を充実化させることが
求められるからで、その中で冒険をテーマにするとなれば、必然的にハードルは高かったと思います。

インディのかつての恋人で、何故かネパールで酒場を経営するヒロインを演じたカレン・アレンも、
(失礼ながらも・・・)スゴい美人とか、魅力的とか、そういうタイプの女優さんではないのだけれども、
華奢な体型でも、確かに意志の強そうな表情に、腕っぷしが強い男勝りな側面があったり、
酒は誰よりも強いという、豪傑なキャラクターにピッタリなキャスティングで、この手の冒険映画のヒロインにピッタリ。

個人的には、もっと悪党と闘う姿があっても良かったと思うくらい芯の強そうな女性ですが、
何故か映画の中盤で、隠れた容器ごと拉致されてしまうことに時間を費やしたり、どこか勿体ない。

しかし、インディの恋人と言えば、やっぱりカレン・アレンだと思っていたのか、
スピルバーグも08年の第4作『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』で再び彼女を起用していることから、
やっぱり作り手の目線から観ても、カレン・アレンは息がピッタリ合っていて名コンビに思えたのでしょう。

「魂の井戸」にインディとカレン・アレン演じるマリオンが閉じ込められるシーンは印象的だ。
インディが苦手な蛇が床一面に拡がりウジャウジャする中で、マリオンも落とされて、2人で命からがら蛇退治して、
なんとかして「魂の井戸」から脱出しようとします。冒険家にとっては蛇は宿敵であるというのはセオリーですが、
得体の知れない生物が襲ってくる恐怖を描くというのは、スピルバーグの命題でもあると言え、彼の得意分野だ。

それから、インディは勇敢なトレジャー・ハンターではあるけれども、
インディの先を行く者が、例えば洞窟内の罠に先にハマって、命を落とすというのが幾度となく登場する。
こういうのを観ると、インディの強運と過去から学ぶという、考古学の基本スタンスを守るインディが描かれている。
ある意味では、ブレないインディだからこそ、生き延びれるという教訓が描かれており、なんでも前のめりにならない
慎重さが冒険家には求められるということなのかもしれません。でも、だからこそ、パイオニアになれるのかもしれない。

個人的には、悪役キャラクターがあまり引き立てられていないのが物足りないかな。
このシリーズはあくまでインディの目線で冒険を描いているので、他作品も印象的な悪党はいないのですが、
それでも、インディの競争相手でインディの手柄を横取りすることを狙う、考古学者ベロックだけでは少々弱い。

これはこれでスピルバーグの良心なのかもしれませんが、
インディが打ち負かす明確な相手がいるからこそ、映画はもっとエキサイティングなものになったはずだと思う。

そのせいか、この映画はクライマックスがあまり盛り上がらずに終わってしまう印象だ。
前述した「魂の井戸」からの脱出シーンの方が、僕には遥かに印象に残ったかな。これは凄い勿体ない。
クライマックスの物足りなさは、結局、インディの“敵”となるナチスやベロックとの攻防に乏しいからだ。
この辺はシナリオの段階から、もう少し映画全体を見渡して考えると、再考の余地があったのではないかな。

あの胸躍るテーマ曲が生まれただけでも、映画は十分に価値があったとは思うのですが、
個人的には第2作の『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』に軍配が上がる理由は、クライマックスの弱さだ。
映画のテンションを、クライマックスにMAX状態に持っていけなかったのは、大きな反省材料ではないかと思う。

ちなみに本作も、かつてTV放送されていた村井 国夫が吹き替えている、
日本語吹替版もソフト版に加えて収録している大盤振る舞いが、ファンにとっては実に嬉しいことだ。
これは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズに続いて、日本の映画会社の気配りが嬉しいですね。

本作はよく水野 晴郎が解説していた金曜ロードショーで放送されていたのが、記憶にあります。
(まぁ・・・日曜洋画劇場でも放送はされていましたけどね...)

かつて、“たのみこむ”のサイトで「たのむ! 作ってくれ!」というページがあって、
そこで商品化の企画を書き込むページがありましたが、そこには多くの映画でかつてテレビ放送された
日本語吹替版をDVD収録して欲しいという声が、物凄く数多く寄せられていた記憶があり、
当時僕は高校3年生とかだったと思いますが、全国には数多くの日本語吹替版のファンがいることを知りました。

確か、その後に寄せられた要望の声で、最も多くの声が寄せられたのは、
NHK教育テレビで放送された『アルフ』のDVD化がダントツだったことも、よく覚えてますが・・・。

何はともあれ、本作の成功がスピルバーグの80年代の成功を約束したことは間違いありません。
こういった冒険映画を撮れるのだということを証明し、ただ観客をビックリさせたり、特殊技術を使ったSF映画ばかりに
注力する映像作家という枠組みではなく、もっと広くエンターテイメントを追求する監督として認知されていきました。

主演のハリソン・フォードにとっても、ハン・ソロに続く自身の代表作となり、
アクション・スターとしてのハリソン・フォードと、コミカルな芝居もできるハリソン・フォードを両立し、
見事なまでにインディアナ・ジョーンズを体現しました。たぶん、彼を超える役者はそう容易く誕生しないでしょう。

映画としては、前述したようにまだまだ出来る部分はあったと思うけれども、
本作は冒険映画のパイオニアとしての価値が高く、正直言って、唯一無二の存在になっている。
こういうフォーマットを作ったジョージ・ルーカスはスゴかったし、それを具現化させたスピルバーグは言うまでもない。

ところでインディは、あんだけ宝探しの旅に出ていて、いつ教鞭をとっているのだろう?

(上映時間115分)

私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点

監督 スティーブン・スピルバーグ
製作 フランク・マーシャル
原案 ジョージ・ルーカス
   フィリップ・カウフマン
脚本 ローレンス・カスダン
撮影 ダグラス・スローカム
特撮 リチャード・エドランド
   キット・ウェスト
   ILM
編集 マイケル・カーン
音楽 ジョン・ウィリアムス
出演 ハリソン・フォード
   カレン・アレン
   ウォルフ・カーラー
   ポール・フリーマン
   デンホルム・エリオット
   ロナルド・レイシー
   ジョン・リス=デービス
   アルフレッド・モリーナ

1981年度アカデミー作品賞 ノミネート
1981年度アカデミー監督賞(スティーブン・スピルバーグ) ノミネート
1981年度アカデミー撮影賞(ダグラス・スローカム) ノミネート
1981年度アカデミー作曲賞(ジョン・ウィリアムス) ノミネート
1981年度アカデミー美術監督・装置賞 受賞
1981年度アカデミー視覚効果賞(リチャード・エドランド、キット・ウェスト、ILM) 受賞
1981年度アカデミー音響賞 受賞
1981年度アカデミー編集賞(マイケル・カーン) 受賞
1981年度アカデミー特別業績賞 受賞
1981年度イギリス・アカデミー賞プロダクション・デザイン賞 受賞