インディ・ジョーンズ/最後の聖戦(1989年アメリカ)

Indiana Jones And The Last Crusade

インド奥地での攻防を描いた第2作から一転して、第1作と同様にナチスとの攻防に回帰し、
インディの父親ヘンリーとの親子関係を交えた描いた人気アドベンチャー・アクションの第3弾。

まぁ・・・安定の面白さではあるけど、奇妙な雰囲気とジェットコースター・ムービーの要素を持った前作と
比較すると、僕の中ではどうしても見劣りする部分はある。少々、全体的にコメディにシフトしていますね。
一方でガチャガチャした騒がしさが無くなったので、映画の雰囲気としては前作より落ち着いている。

映画はイエス・キリストの聖杯を青年時代から追い続けてきたインディが、
その所在を示す重大な秘宝をゲットしたインディが、大富豪ドノバンから聖杯を探すように依頼され、
行方不明になった先見調査隊の話しを聞き、実は先見調査隊の隊長がインディの父ヘンリーであったことを知り、
ドノバンから紹介されたシュナイダー博士とヴェニスで合流するも、次から次へとインディが見つけた石板を
狙う連中が襲撃にあい、父ヘンリーが謎の連中に拘束されていることを知り、救出に向かう姿を描いています。

劇場公開当時、インディ演じるハリソン・フォードの父親役としてショーン・コネリーが配役されたことが
大きな話題となったようですが、このコンビはなかなか良い。この親子関係も決して良くはないという設定で、
インディが父から「ジュニア!」と呼ばれることを、スゴく嫌っているというのが繰り返し描かれるのが面白い。

父曰くは、インディはあくまで自称であり、本名はヘンリー・ジュニアであるわけで、
インディというのは犬につけた名前らしい。この映画はそういった“小ネタ”で随分と引っ張っている(笑)。

映画の序盤で、青年時代のインディを演じたのが今は亡きリバー・フェニックス。
何故、大人になったインディが蛇を嫌がるのか、鞭の使い手になるキッカケなどをさり気なく描いていて、
ある意味で、このシリーズの答え合わせというか、辻褄合わせの要素は正直言って、あるかな。

実際、この映画で一旦、シリーズの製作はストップしたわけで、
第4作が製作されるまで約20年にも及ぶブランクが空くことになります。
そういう意味で、当時のジョージ・ルーカスとスピルバーグは、第4作以降の企画自体は白紙だったのでしょう。
本作がシリーズ完結編になってもいいようなストーリーにしていたのだろうとは思うんですよね。

本作で描かれるインディの父ヘンリーは、インディとはまるで違う考古学者って感じ。
殺し合いにまで発展してまでも歴史的遺物を収集してきたインディと比べると、ヘンリーはインテリな感じだ。
だからこそヘンリーは幾度となく、「いつもこんな感じか?」とインディに確認します。ヘンリーからすれば、
インディのスタンスは信じられないかもしれませんが、映画としては好対照な親子で、そこが面白い。

親子関係としても決して良好ではなさそうだし、幼い頃から厳しく育てられたのか、
父を前にしては、大きな態度ができないインディなので、確執はありながらも、リスペクトもある。
昔ながらの親子関係という感じだが、好対照だからこそ、よりインディの人間性が魅力的なものに仕上がった。

あまり良い言い方ではないのかもしれませんが、僕の中ではこの第3作自体は、
単独で面白い冒険映画というよりも、第1作から熱心に応援し続けてきたシリーズのファンのために、
これまでの色々な疑問点に対して、一つ一つ答えを出す、継続的なファンのための第3作だったという印象です。

インディのドジなところも、ある意味では父譲りであることを象徴しています。

ドイツから出国するための移動手段として選んだ巨大気球から脱出するためにジャックした、
セスナ機をインディが操縦するシーンで、襲撃するナチス軍の追撃をかわすために、ヘンリーが後部座席にある
機銃でナチス軍の機体を銃撃するシーンで、なりふり構わずヘンリーが撃ちまくるもんだから、勢い余って乗っている
セスナ機の尾翼も銃撃してしまって、不時着せざるをえない状況になるなど、なんだかスゴいドジだ(笑)。

しかし、一方でインテリジェンスを感じさせるシーンですが、
追跡してくるナチス軍機を撃墜するために、海辺にいた白鳥の大群を飛び立たせて、
盛大にバードストライクを起こして、ナチス軍機が岩肌に激突して木っ端みじんになるなんて、賢さもある。

注目したいのは、インディの相手役となる女性キャラクターの存在で、
本作ではシュナイダー博士を演じたアリソン・ドゥーディが、実質的なヒロインなわけですが、
これまでのカレン・アレンやケイト・キャプショーと違って、純然たるインディと恋仲になる女性というよりも、
歴史的遺物に対する執着が強い女性として、単純にインディと一緒に冒険する存在というわけではありません。
この辺は意見が分かれるところかもしれませんが、僕は従来のシリーズとは差別化を図る部分で良かったと思います。

個人的には、このアリソン・ドゥーディはもっと見せ場を作ってあげて欲しかったし、
いっそのことインディと直接対決するくらいの屈強さを表現しても、映画が面白くなったのではないかと思いますがね。

インディが勤務する大学で、インディの理解者であるマーカスを演じるデンホルム・エリオットが
第1作以来の登場となりますが、本作ではそのマーカスの登場シーンも随分と増えたのも印象的だ。
トボけたところのあるキャラクターで、終始、マイペースに行動するし、ラストシーンでも“美味しい”ところを持って行く。
本シリーズの名脇役としてのインパクトを決定づけており、こういう脇役にスポットライトを当てているのが良いですね。

でもね、欲を言えば...やっぱり、もう少しアトラクション性は高い内容が良かったかなぁ。
幾度となくインディらがピンチに陥るアクション・シーンはあるにはるのだけれども、今一つテンションが上がらない。
前作ほどではないにしろ、もう少し“仕掛け”があるようなピンチが連続するような、ドキドキ感があっても良いかな。

映画の中盤でヘンリーが拘束されている城で、火事になってクルクル回転扉で
親子が遊んでいるかのように回りながら、城から脱出するシーンは面白いのですが、
このシーンの後に続く、エキサイティングなシーンが無かった。それがどうしても、僕の中では物足りなかったかなぁ。

おそらく、スピルバーグも“ネタ切れ”というわけではなかったと思うのですが、
それでも前作までの流れと比較すると、冒険映画としてのスピード感に欠けるのは気付いていたと思うんですよね。
それを捨ててでも、どちらかと言えば、インディの父を登場させることでドラマ性を膨らますことを選択したわけですね。

もっとも、前作の延長を映画化するという選択肢もあったのかもしれませんが、
前作でヒロインを演じたケイト・キャプショーについては、本作撮影当時、スピルバーグがエイミー・アービングと
離婚調停の真っ最中で、既にケイト・キャプショーとの間に実子をもうけていたなど、微妙な時期だったのもあるでしょう。
(実際、ケイト・キャプショーは90年代に入ってから、女優としての仕事のペースは大きく落としました)

いろいろと思うところはありますが...
それでも、僕はこの映画のラストシーンは結構好きだ。和解と言うには大袈裟だが、
ヘンリーも大人になったインディと、行動を共にすることなどなく、インディが日常的に行っている“冒険”を
ヘンリーも垣間見たりすることで、インディが一介の冒険家、そして考古学者として成長したことを認め、
一緒に馬に乗って、家に帰ることを示唆するような演出で、このシルエットが映画の締めくくりとしては、とても美しい。

自分の中での物足りなさは消えませんが、それでもこのラストで一気に映画の充実度が上がりました(笑)。
やっぱりインディの“絵”としては、馬上のインディがよく映えるんですね。それを象徴する、素晴らしいラストだ。

(上映時間126分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 スティーブン・スピルバーグ
製作 ロバート・ワッツ
原案 ジョージ・ルーカス
   メノ・メイメス
脚本 ジェフリー・ボーム
撮影 ダグラス・スローカム
特撮 ILM
音楽 ジョン・ウィリアムズ
出演 ハリソン・フォード
   ショーン・コネリー
   デンホルム・エリオット
   リバー・フェニックス
   アリソン・ドゥーディ
   ジョン・リス=デービス
   ジュリアン・グローバー
   マイケル・バーン

1989年度アカデミー作曲賞(ジョン・ウィリアムズ) ノミネート
1989年度アカデミー音響賞 ノミネート
1989年度アカデミー音響効果編集賞 受賞