インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国(2008年アメリカ)

Indiana Jones And The Kingdom Of The Crystal Skull

89年の『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』以来のシリーズ第4弾ですから、
実に19年ぶりの続編ということになりますが、スピルバーグは何を思って、続編を製作したんだろ?(笑)

この続編は、過去に幾度となく噂されていたことですし、
いざ劇場公開されたときも、会社の研修でコペンハーゲンにいたときに、
劇場公開されていたため、よく覚えていますが、ファン待望の続編であったことは間違いありません。

事実、僕も楽しみだったのですが、この第4作は同窓会のようなノリになってしまいましたね。
結論から申し上げますと、映画の出来自体はそこまで良くない。それでも贔屓目に見てしまうのが、ツラいとこ。

主演のハリソン・フォードが撮影当時、65歳という高齢ながらも、
走ったり、飛んだりと活劇シーンだけでなく、アクション・シーン全般に大活躍なんですが、
やはり動きも観ていてツラいなぁというレヴェルで、やはり遅過ぎた続編という感が拭えない。
(どうせなら、「いっそのこと70歳になったときに第5作を!」とも思ったが・・・)

巨額の予算を投じた企画ではあったのですが、
そもそもの企画自体に甘さがあって、これはいくら撮影スタッフが頑張っても、
どうやっても往年のシリーズ3作とまともに比較されてしまい、勝ち目がない。
そして、相変わらずのスピルバーグ演出が炸裂なのですが、どことなく映画にノレない。
それはどうしても観ている私たちが、往年のシリーズと比較して、見劣りする部分を探してしまうからでしょう。

悪役に徹したケイト・ブランシェットにしても、なんだか勿体ない役どころといった感じで、
どことなくインディの冒険が盛り上がらないというか、良い意味での流れが作れずに苦労している印象だ。

まずは、映画の冒頭でインディが迷い込んだ米軍の実験施設で、
核実験が行われていることを悟ったインディが慌てて、鉛製の冷蔵庫に隠れて、
原爆が爆発して冷蔵庫ごと吹っ飛ばされるなんてエピソードからして、悪い意味で賛否を呼ぶでしょうね。

スピルバーグは前3作のコミックっぽいところを失いたくないと考えていたそうですが、
こういうエピソードをコミックっぽさとして捉えているのなら、それは大きな間違いだろう。
シナリオを書いたデビッド・コープも何を思って、こういうエピソードを書いたのか、真意はよく分からないが、
世界に放つヒットメーカーが人気シリーズの続編を製作するにあたって、何故にこういうリスクの大きな
エピソードを果敢に映像化させてしまったのか、僕にはよく理解できなかったというのが本音なんですよね。

但し、まるで原点回帰するかのように、
第1作でインディの恋人を演じたカレン・アレンを復活させて、表舞台に呼び戻したのは良かったですね。

最初に、とある集落でソ連軍に捕らえられていたカレン・アレン演じるマリオンと
久しぶりに遭遇したインディが、敵軍に囲まれながらも、ニヤニヤして「マリオン...」と再会を喜び、
マリオンはマリオンで、第1作の出会いを思い起こさせる「インディアナ、ジョーンズ...」と言うのが印象的。
こういう空気を再現させることがスピルバーグの目的の一つだったのか、まるで同窓会な雰囲気(笑)。

まぁ・・・劇場公開当時、大きな期待があった割りには、
その期待に応えられなかった続編だったとして、酷評も多かった作品ではありますが、
僕はまったくダメな映画とまでは思っていなくって、エンターテイメントとしてはそこまで酷くないと思いますけどね。

ただ、この映画が決定的に良くなかったところは、クライマックスのシーン処理でしょう。
ロズウェルの宇宙人の遺体と思われる未知の生命体を発見したとされる事件をモチーフにして、
超常現象的な混乱が起こって処理されるのですが、これがチョット意味不明で面白くないのが残念。
スピルバーグならば、もっと面白い“引き出し”を使って、もっとマシなシーン処理にできたはず。

スピルバーグのプロダクションは弱体化したとは思えず、
相変わらず、こういうイベント映画に於いて、映画に上手くアトラクション性を加味できるのは素晴らしい。

それだけでなく、エンターテイメントとしての最低限の役割をキッチリ果たせており、
ある意味で、スピルバーグにしっかりとしたノウハウがあるからこそできる技でしょうね。
だからこそ、スピルバーグが本作の監督として適任だったとは思うのですが、もっと企画は練って欲しかった。
長らく、続編が噂されていただけに、本作の構想はかなり古くからあったはずなので、チョット勿体ない。

今回、ハリソン・フォードの相棒的役割として抜擢されたのが、
若手俳優のシャイア・ラブーフですが、シリーズの新しい担い手としては今一つアピール不足かな。
今後、スピルバーグがどのような構想を抱いているか分かりませんが、後継者としては中途半端。
シリーズのファンとしては、是非ともこのシリーズを継続させて欲しいと思っているだけに、
シャイア・ラブーフを後継者として考えていたのであれば、もっと彼をプッシュしなければならないと思う。

まぁ・・・シャイア・ラブーフ曰く、ハリソン・フォードも本作の出来に不満だったらしく、
その失敗の原因はスピルバーグだけではないとコメントしていたそうなのですが、
確かにキャストにも問題があったのかもしれませんが、本作の構造的欠陥は彼らの力だけでは、
補い切れなかったと思いますけどね。やはりこの続編のコンセプト自体から、練り込み不足なのは否めません。

とは言え、ハリソン・フォードは年齢のことを考えれば、
そこまで激しいアクション・シーンができないことは分かって撮影したわけですし、
これで上手くシャイア・ラブーフに引き継いでいける作品になれば、意味ある映画になったと思うんですよね。

ですから、本作に対する評価はこのシリーズがどうなっていくかに拠るかなぁ・・・。

だからこそ、スピルバーグはこれで懲りずに、
『インディ・ジョーンズ』シリーズをどうするのかということを、真剣に考えて欲しいんですよね。
できることなら、プロダクションの中でディレクターも世代交代させ、シリーズを継承していって欲しいものです。
やはり最近はハリウッドの中でも、本作のような嗜好のエンターテイメントを上手くできる人がいないですからねぇ。

ちなみに本作で第1作『レイダース/失われたアーク≪聖壇≫』のヒロインだった、
カレン・アレンが約7年ぶりにスクリーンに復活しましたが、それならば第2作のヒロインだった、
「ケイト・キャプショーもまた観たい!」と願ってしまうのは、僕だけでしょうか?(笑)

(上映時間122分)

私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点

監督 スティーブン・スピルバーグ
製作 フランク・マーシャル
原案 ジョージ・ルーカス
    ジェフ・ナサンソン
脚本 デビッド・コープ
撮影 ヤヌス・カミンスキー
編集 マイケル・カーン
音楽 ジョン・ウィリアムズ
出演 ハリソン・フォード
    レイ・ウィンストン
    シャイア・ラブーフ
    カレン・アレン
    ケイト・ブランシェット
    ジョン・ハート
    ジム・ブロードベント
    イゴール・ジジキン
    アラン・デイル

2008年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト前編・リメーク・スピンオフ・続編賞 受賞