イン・ハー・シューズ(2005年アメリカ)

In Her Shoes

うーん、惜しい。。。
『L.A.コンフィデンシャル』のカーチス・ハンソンによる女性映画。

映画の出来はかなり良いと思う。キャスティングも機能的で好感が持てる。
特に妹のマギーを演じたキャメロン・ディアスは驚くほどに上手い。
いや、僕は以前から彼女はそんなに下手な女優さんだとは思ってはいなかったけれども、
そんな中でも本作は特に彼女の上手さが際立つ作品で、出演して正解だったのではないでしょうか。

まぁ多少、シナリオの良さに恵まれた部分はあります。
今回は『エリン・ブロコビッチ』のスザンナ・グラントがシナリオを書いているのですが、
多くの事柄を描きたい題材でありながらも、上手くポイントをまとめていますね。

ただ、最初に惜しいと言ったのは、僕は唯一気に入らないエピソードがあって、
それは姉のローズの婚約を祝うパーティーの描写で、これは僕は全てカットしてもいいと思いましたね。

確かにローズもマギーも家庭環境に恵まれず、性格の悪い継母を嫌うという展開は理解できるけど、
それはこれまでの描写で十分すぎるほど分かるし、どうしてこんなにも性根の悪いシーンを撮ったのだろうか。
こういうところがカーチス・ハンソンの勿体ないところで、映画を傑作に仕上げられない要素なんですね。
せっかく良い映画だなぁと思ってたのに、こういうシーンを見せられるとガッカリしてしまいます。

この映画では、妹マギーのディスレクシア(難読症)がクローズアップされていますが、
天真爛漫、自由奔放な性格であるがゆえ、危うく男たちの欲望の対象になりかねないという、
軽率な行動に出て危険な目に遭ったりしますが、そんな彼女でもディスレクシアと闘う中で
幾重ものツラい体験をしており、そんなマギーの表情を少し突き放して描くのが印象的でしたね。

ひじょうに細かい部分ではありますが、僕はこういう些細な描写が本作、凄く上手いと思います。

それと、この映画、まるで親友のような関係を築きながらも、
ケンカしてしまい一時的に疎遠になってしまうローズとマギーを描いているのですが、
そんな2人の他愛のない会話の中でも、数多くの重要なことを言っていて、
僕は映画の序盤にさり気なくローズがマギーに言う台詞が、一つのメッセージだと思いますね。

いつまでも奔放に生きるマギーを見かねて、
ローズは「若さはいつまでも続かないのよ。若さは短いものよ」と言います。

正直言って、僕自身にも何故か痛切に響く台詞ではあるのですが(笑)、
数ある台詞の中でも、この台詞が本作の全てを物語っていると僕は思いますね。
それは同時にマギーを思う姉ローズとしての感情が裏打ちされた台詞であって、深い愛情を感じさせますね。

幾つかの体験も合わさって、次第にマギーも本能的にローズの言葉の意味を実感し始めます。

しかし、それでもマギーはローズの気持ちを裏切り続けてしまうのだから、なかなか上手くいきません(笑)。
でも、マギーがそんな調子であるからこそ、ローズもマギーを愛し続けるのかもしれません。
これが赤の他人なら怒りをかうだけですが(笑)、マギーはあくまでローズの妹ですからね。

ドラマ部分はかなりしっかりした作りですから、見応えのある映画として評価に値すると思いますね。
ひょっとするとカーチス・ハンソン監督作としては、有数の出来と言っていいかもしれません。
(『L.A.コンフィデンシャル』や『ワンダー・ボーイズ』ほどではないが、『8Mile』よりは良い出来だと思う)

ちなみに姉のローズをトニ・コレットが演じており、
確かにこの映画ではキャメロン・ディアスよりもずっと年上で落ち着いたように見えますが、
実は2人とも同学年で、正確には誕生日はキャメロン・ディアスの方が早い。
映画女優としてのキャリアもほぼ同じぐらいの長さで、トニ・コレットも好演と言えます。

どうでもいい話しかもしれませんが...
劇中、マイアミで祖母が老人たちのグループホームに暮らしている姿が描かれます。
久しぶりにシャーリー・マクレーンが元気そうに映っていて何よりなのですが、
日本も超高齢化社会に突入したわけで、温暖な地域にああいったグループホームってないのでしょうか?

僕もできることなら沖縄とかに位置していて、
仕事をリタイアしたら是非とも、ああいったリゾート型グループホームで隠居したいのですが(笑)。

シャーリー・マクレーン演じる祖母の描写にも関連するのですが、
高齢者の全てがパートナーが健在ではないし、息子や娘が面倒を看てくれるとは限らない。
年齢的なものもあって、若いときと比べたら、一人で生活を営むのは困難そのものです。
そんなとき、往々にして大きな障害となり易いのは「孤独」だと思うのです。
勿論、性格的なものなどで合う・合わないはありますけど、ああいったグループホームって、
少なくとも露骨な「孤独」というのは、回避できるのではないかと思うんですよね。

福祉はビジネスモデルとして確立していますから、更なる新しい展開として是非とも普及して欲しいなぁ。

とまぁ・・・色々と考えさせられる映画ではあるのですが(笑)、
いずれにしても惜しい映画ですね。あと、チョットで傑作になれたのに...ホントに勿体ない。。。

(上映時間130分)

私の採点★★★★★★★★★☆〜9点

監督 カーチス・ハンソン
製作 リサ・エルジー
    キャロル・フェネロン
    カーチス・ハンソン
    リドリー・スコット
原作 ジェニファー・ウェイナー
脚本 スザンナ・グラント
撮影 テリー・ステイシー
衣裳 ソフィー・デラコフ
編集 リサ・ゼノ・チャージン
    クレイグ・キットソン
音楽 マーク・アイシャム
出演 キャメロン・ディアス
    トニ・コレット
    シャーリー・マクレーン
    マーク・フォイアスタイン
    ブルック・スミス
    アンソン・マウント
    リチャード・バージ