10日間で男を上手にフル方法(2003年アメリカ)

How To Lose A Guy In 10 Days

『あの頃ペニー・レインと』でブレイクしたケイト・ハドソン主演のラブ・コメディ。

調べたんですけど、思わず「あれ!? なんでこの映画がウケなかったんだろ?」と思えるぐらい、
僕は楽しかった作品ですね。映画の出来云々はともかく、これは久しぶりに当たりのコメディ映画だと思う。
タイトルからして女性向き映画かと勘違いされそうですが、そうではありません。
内容としては、実に男女両方の視点から描いた、客観性のある恋愛劇と言えます。

10日間で男を上手にフル方法≠ニいうのは、10日間で男に上手にフラれる方法≠ニ同義であり、
一方では10日間でオンナを上手にフル方法≠燻タ践されているという要領の良さ。

映画は実にテンポが良く、シナリオも上手く書けていますし、キャスティングも悪くない。

自身が所属する雑誌社の企画で「10日間で男が逃げ出す方法」を体を張って取材することになった、
ヒロインのアンディはこの取材のターゲットを、広告代理店に勤めるベンに絞ります。
しかし、ベンにはベンで、大口の仕事の担当を獲得するために、社長に10日後のパーティで
僅か10日間でイチコロにした女性を同伴することを約束し、アンディを何が何でもモノにしようとする。

この設定で面白いのは、アンディとベンの出会いは順調でも、
従来の映画ならば2人は何とかして様々な障害を乗り越え、恋愛を成就させようとするのに対し、
本作の場合は一転して、アンディは何とかしてベンが別れを切り出すように、
嫌がらせとも思える振る舞いし、ベンは彼女からどんなにイヤなことをされても、彼女を離そうとしません。
言い方は悪いが、2人の利害関係が一致しないケースで、2人はそれぞれの目的達成のため、
あらゆる手を尽くしてきます。結局、ここからは我慢比べです。まず、この発想の優位性が本作にはあります。

映画がスタートした時って、アンディは恋愛に関しては自信満々な感じだし、
ベンにいたっては女性をバカにした男で、2人とも観客にはファースト・インプレッション最悪の嫌な奴らだ。

まぁ「何時になったら、変わるのかなぁ〜?」と思いきや、
2人とも任務遂行のためそういった側面は内面に抱えたまま映画が進行していきます。
しかし、ここで一つのキー・ポイントとなるのは、ベンの実家でのエピソードですね。
大都会ニューヨークから程近いスタテン島で、ビル郡が川の向こう側に見えるというのに、
何故かアットホームなカントリーっぽいとこがあって、荒んだ心を洗い流すだけの力を持っている。
そこから2人の関係性は変わっていきますし、2人の内面的なものも変容していきます。

一般に、こういうラブコメは平凡な男女に訪れる御伽噺みたい展開が多いのですが、
僕は本作を御伽噺だとは思わない。少なくともシンデレラ・ストーリーではないし、サクセス・ストーリーでもない。

アンディもベンも経済的には満ち足りた生活であったことは間違いないし、
私生活の面でも、そう不便はしていなかっただろう。しかし、ある意味ではそういった生活を捨ててでも、
2人は恋愛を成就させようとします。ということは、やっぱり2人の成長なんですよね。

監督のドナルド・ペトリはこの手の作品を何本か製作しておりますが、
ひょっとしたら本作は現時点でのベストかも。彼もやはりスピルバーグに見い出された映像作家ですが、
大きな破綻なくユニークな視点から撮ったラブ・コメディとして、もっと評価されていいと思いますね。

けど・・・アンディの体験取材って、仮に自分がベンのように実験台にされたらと考えたらショックですよね。
まぁその点、ベンもアンディを賭けの対象としていることで、アンディの罪は相殺されてるのですが、
自分の恋愛が雑誌の記事のネタにされて、何一つ得るものなく取材対象とされてたことを知ったら、
怒りを通り越して、しばらく立ち直れないぐらいのショックだろうなぁ〜・・・と考えると、フクザツ。

まぁ確かにケイト・ハドソンがカワイイので彼女にだったら何されても許すというのであれば、
これぐらいの仕打ちは気にしないのかもしれませんが、あくまで自分が彼女の実験テーマの
「n=1」としか考えられていなかったとすると、自分の存在が否定されてるような気がしてきて、怖いなぁ。

あぁ、そうそう。この映画でようやっとケイト・ハドソンがラブコメのヒロインの座をゲットしました。
正直、『200本のたばこ』と『あの頃ペニー・レインと』で彼女を観た時、確かに光るものを感じましたし、
カワイイ女優さんだなぁ〜とは感じましたが、ここまで“来る”とは思いませんでした。
今後、ハリウッド女優として何処までのポジションに登り詰めるかまでは僕には分かりませんが、
21世紀になってより上昇へと転じる女優さんの一人して、これからも活躍が期待されます。

この映画での彼女は、途中、メイクがイマイチな感もあり、キツめに映っていたシーンもありましたが、
それでもチャームポイントとも言うべき笑顔の魅力で、上手くカヴァーしていましたね。
どちらかと言えば、相手役のマシュー・マコノヒーが霞んでいるぐらいのインパクトの強さでした。

まぁあまり深刻に構えず、気軽に楽しむ分には申し分の無い作品だと思います。
最近、この手のジャンルで太鼓判を押せるほど、楽しい作品は稀少でしたが、本作は久しぶりのヒットです。

今度は是非とも、この調子で体験取材に基づいてリサーチして、
10日間で美女をメロメロにする方法≠開発して、世に大々的に発表して欲しいのですがねぇ〜(苦笑)。

(上映時間116分)

私の採点★★★★★★★★★★〜10点

監督 ドナルド・ペトリ
製作 ロバート・エバンス
    クリスティーン・フォーサイス=ピータース
原作 ミシェル・アレクサンダー
    ジェニー・ロング
脚本 クリステン・バックリー
    ブライアン・リーガン
    バー・スティアーズ
撮影 ジョン・ベイリー
編集 デブラ・ニール=フィッシャー
音楽 デビッド・ニューマン
出演 ケイト・ハドソン
    マシュー・マコノヒー
    キャスリン・ハーン
    アニー・パリッセ
    アダム・ゴールドバーグ
    トーマス・レノン