ハリウッド的殺人事件(2003年アメリカ)

Holywood Homicide

厳しいですが、結論から言いますと、この映画はダメですね。

ハリウッドを抱えるロサンゼルスを舞台に、サイド・ビジネスに精を出すベテランと若手の2人の刑事が、
とあるナイト・クラブで起こった銃乱射事件の捜査を担当することなる様子を描いたアクション・コメディ。

ある意味で、凸凹コンビの活躍を描いたという位置づけなのですが、
その凸凹コンビを演じたのは、ハリソン・フォードと当時、ハリウッドでも人気急上昇中だった、
『パール ハーバー』のジョシュ・ハートネットで、公開当時の本作への注目度は高かったと記憶しています。
監督は『さよならゲーム』など、スポーツ映画を主体に撮っていたロン・シェルトンですが、
さすがに慣れないジャンルの映画であったせいか、正直言って、映画の出来は良くありません。

あくまで個人的な見解を勝手に述べさせて頂きますと...
本作の作り手は、何故、こんなに魅力のない映画になってしまったのか、よく検証する必要があると思います。

アクション映画として語るには、あまりに弱過ぎるし、
コメディ映画として語るには、あまりに中途半端で笑わせてくれるシーンが少な過ぎるかな。
ハリソン・フォードも観客のウケを意識しているかのような芝居なんだけれども、
たいへん申し訳ないけど、彼が笑いをとりにくればくる分だけ、映画は苦しくなっていきます。

まぁハリソン・フォードはコメディ映画に何本か出演してはいますが、
例えば『インディ・ジョーンズ』シリーズのような冒険映画の主人公とかなら似合うのですが、
過去に彼が出演した88年の『ワーキング・ガール』などを観る限り、コミカルな芝居はあまり上手くないですね。

映画の前半で、ルー・ダイアモンド・フィリップス演じる潜入捜査官を女装させて登場させたりするのですが、
彼の頑張りにしても、なんだか無駄にしてしまっているような映画の出来で、とても残念ですね。

どうせなら、この映画にはアクション・シーンに徹して欲しかったですね。
どの道、事件の捜査をしながら物件の転売に一生懸命になるベテラン刑事と、若い女の子をクドくために
ヨガ教室で講師を務める若手刑事という設定だけでは、映画の面白さを引き立たせることは難しいのですから、
特にクライマックスで犯人グループを追い詰めるシーンでは、もっとスリリングに描いて欲しかったですね。

ロン・シェルトンは『さよならゲーム』は悪くない出来だったのですが、
やはり彼がかつてマイナーリーグで6年間プレーしていた実績があるからこそ描けた作品であり、
やはり彼のフィールドはスポーツ映画だったのかなぁという気がしてしまいますね。
(しかし、彼の脚本デビュー作となった83年の『アンダー・ファイア』はスポーツ映画ではない・・・)

なんかアメリカの警察官は副業をしているのが当たり前らしいのですが、
この映画の主人公は事件の捜査中だろうが、犯人追跡中だろうが、構わず客からのケータイが鳴ったら対応し、
営業トークをすぐに繰り出すのですが、さすがにこれだけでは映画を引っ張れるほどの設定ではない。
そういう意味では、ハリウッドという土地柄に理解がある人なら、もっと本作を楽しめるのかもしれませんね。
一連の刑事たちの行動が許されてしまうかのようなユルさが、この映画の根底を支えているんですよね。

でも、それならロン・シェルトンは無理してサスペンスを盛り上げようとすることは無かったと思うんですよね。
ハリウッド特有のユルさと、映画で描かれたような殺人事件捜査の過程に生ずる緊張感は、相反するものです。
僕はあまりこういうミスマッチを作ってしまうと、映画が崩れてしまうような気がしてならないんですよね。

映画を彩るかの如く、ハリソン・フォードとレナ・オリンのロマンスも描かれるのですが、
これももう少し爽やかに描いた方が良かった気がしますけどね。なんだか2人のロマンスはクドかった気がします。

個人的にはブルース・グリーンウッド演じるライバル刑事の存在も上手く活かせていないと思うし、
レナ・オリン演じる女性ディスク・ジョッキーとの三角関係を匂わすのも、作り手の意図が全くよく分からない。
確かに主人公に対する嫉妬心を増大させるという意図はあったのかもしれませんが、それなら主人公の恋愛を
もっと魅力的に描いて欲しいし、レナ・オリンとの大人な関係をもっとキチッと描いて欲しかったですね。
明らかに狙いを外してしまったかのような、2人のラブシーンの描き方は映画を壊しただけにしか見えません。

『さよならゲーム』などを観る限り、ロン・シェルトンは映画の中で恋愛を描くことは
まずまず上手いような気がしていたのですが、残念ながら本作ではまるでダメになってしまっていますね。
この辺はシナリオの時点で問題があったのかもしれませんが、彼自身も執筆に加わっていますしね・・・。

この映画で唯一、見どころとなりそうだった、
ジョシュ・ハートネット演じる若手刑事コールデンが殉職した父親を殺害した元刑事と対決するシーンにしても、
確かに映画のクライマックスの見せ場にはしておりますが、あまり盛り上がらないまま終わってしまうんですよね。

そんなコールデンにしても、『欲望という名の電車』で舞台俳優として活躍したいという願望があり、
実際に映画のクライマックスで彼が舞台に立つ姿が描かれるのですが、これもまた中途半端に終わってしまう。
まぁ映画の冒頭でも、コールデンの射撃がまるでダメだったことを強調するために描いたのでしょうが、
どうも作り手のビジョンが、どこを取っても散漫な印象が残ってしまうことは、否定できませんね。

まぁジョシュ・ハートネットを輝かせるための作品でもあったはずなのですが、
どうも彼にとっては、むしろ難しい映画になってしまったような気がしてならないですね(笑)。

もう少し作り手にコメディ映画を撮った経験があれば、もっと面白くできたのでしょうが、
スタッフだけではなく、キャスティングも含めた見直しが必要だったような気がしますね。
製作費は多く用意されていた企画であっただけに、こういう中途半端な出来に終わったのが残念でなりません。

悲しくも、ハリソン・フォードは21世紀に入ってからヒット作に恵まれていませんが、
本作なんかはそんな彼の冴えない映画界での迷走ぶりを象徴するかのような作品になってしまっていますね。。。

(上映時間115分)

私の採点★★★☆☆☆☆☆☆☆〜3点

監督 ロン・シェルトン
製作 ロン・シェルトン
    ルー・ピット
脚本 ロバート・ソウザ
    ロン・シェルトン
撮影 バリー・ピーターソン
編集 ポール・セイダー
音楽 アレックス・ワーマン
出演 ハリソン・フォード
    ジョシュ・ハートネット
    レナ・オリン
    ブルース・グリーンウッド
    マスターP
    マーチン・ランドー
    ロリータ・ダビドビッチ
    ルー・ダイアモンド・フィリップス
    キース・デビッド
    ドワイト・ヨーカム