ハイド・アンド・シーク/暗闇のかくれんぼ(2005年アメリカ)

Hide And Seek

途中までは、なんとかギリギリのところで上手くやってたけど・・・
まぁ、さすがに映画の終盤の盛り上げどころになると、いろんなところで破綻しちゃってますね。。。

当時、天才子役として称賛されていたダコタ・ファニングと、
ベテラン俳優ロバート・デ・ニーロが親子役という設定で共演したことで話題となりましたが、
よりによって、この手のサスペンス・スリラーでの共演だとは、僕も事前に予想だにしていなかったですね。

実に勿体ないんですよね、作り手には申し訳ないけど...映画が安っぽくて・・・。

監督は02年に『プール』を監督したジョン・ポルソンで、
おそらく本作が初めて巨額の予算を用意してもらえた企画で、これだけのキャストを擁して、
映画を撮影できたのは初めてだったのでしょうが、どうも良くも悪くもB級テイストが抜けませんね。

デ・ニーロも一時期、やたらと数多くの映画に出演しておりましたけど、
やはり仕事をあまり選ばずに、本作のような作品に出演してしまうことに、古くからの彼のファンは落胆するのかも。

とは言え、決して、デ・ニーロは手を抜いているわけではなく、
この映画のコンセプト、そして作り手の力量に問題があったとしか言えない気がしますね。
正直言って、デ・ニーロでなくとも十分に演じ切れる程度の役柄で、なんだか残念でしたね。
(まぁ・・・言い換えれば、本作でのデ・ニーロが“その程度”の仕事しかしていないとも解釈できるけど...)

前述した通り、キャスティングは無駄に豪華なのですが(笑)、
デ・ニーロは勿論のこと、主人公が信頼するニューヨークの精神分析医で主人公の教え子である、
精神分析医キャサリンを演じたファムケ・ヤンセンにしても、中途半端な感じで終わってしまうし、
主人公が移り住んだ避暑地で知り合った女性を演じたエリザベス・シューも久しぶりに大きな役だったのに、
あまりに悪い扱いで、実に可哀想な結果となってしまっているような気がしてなりません。

この辺は監督のジョン・ポルソンは配慮してあげるべきで、
これだけリッチなキャスティングを贅沢に起用できるということを実現させたわけですから、
お互いの個性を消さないように、もっとしっかりとしたアンサンブルを見せて欲しかったですね。
そりゃ無駄に豪華なキャストでB級映画を撮ろうとしたら、中途半端なB級映画になって当たり前です。

それと、この手の映画として、いつも宿命的なものとして扱われますが、
終盤になって、“どう辻褄を合わせるか?”ということなんですね。これがやはり本作にとっても、大きなネック。

確かに映画も途中までは上手いことやってくれているのですが、
終盤に入って、映画が急激に動き始めたとき、どうしても一つ一つのプロットで“粗”が見えて仕方がありません。

とても小さなことではありますが、例えば主人公の隣家の夫婦の描き方にしても、
まるで一貫性が感じられず、特に亭主のスティーブンに関しては、いたずらに過剰に描いて、
終盤の主人公の攻防は、まるでゾンビのような扱いになってしまい、これはまるで説明がつかない。
どうして、こんなことをしてしまうのか? まるで僕には理解できない酷い描き方です。

こういう映画は、如何に納得性をもって描けるかという点も、
僕はとても大きなウェイトだと思っていて、さすがに破綻しまくった映画だと説得力が感じられないですからねぇ。

言ってしまえば、この映画って、観客を無意味に混乱させるだけのシーン演出が多すぎて、
映画本来の面白さを全然、引き出せていないように思うんですよね。これをやってしまうと、
さすがに映画が崩れ、作り手もどうでもいいようなところばかりに、気を取られてしまう感じになってしまいます。
そのせいか、やはり本作も一つ一つ謎を解いていくという面白さが、微塵にも感じられないんですよね。

別にたいした秘密がない映画だったにしろ、
一つ一つのミステリーを紹介しては解き明かすのが、ある種のセオリーなはずなのに、
この映画はまるで明後日の方向を見ているような志向性で、正直言って、何を描きたかったのかよく分からない。

僕はこういう映画って、たいしたトリックである必要はないと思うし、
別に予想通りの結末でもいいし、意外性に乏しくても構わないから、納得性のある映画にして欲しい。
それでも十分に楽しめる映画こそが、サスペンス映画としてホントに力のある映画と言うと思うんですよねぇ。

幾度となく挿入される、フラッシュ・バックもあまりにしつこすぎて、
作り手も安直な作りに走ったなぁという印象しか残らないですねぇ。
こういうのを観ると、失敗作と揶揄されましたが、キューブリックの『シャイニング』って凄かったんだなぁ〜。
(そういえば、映画の終盤で似たような展開になっていましたけどね・・・)

それゆえか、映画の緊張感は一向に高まらず、
クライマックスで本作最大の見せ場であるべき、洞窟での“かくれんぼ”にしても、全くスリルが無い。
一つ一つのシーンを丁寧に作り込むという、基本が全くできていないツケがここで表れているかのようだ。
いくら暗闇を利用して、懐中電灯の光で観客をドキッとさせようとしても、焼け石に水でしたね。
少々、辛口ではありますが、僕はこういう映画が90年代以降に大量製作されていることが残念なんですよね。

あぁ、そうそう主人公の自殺した妻を演じたのはエイミー・アービングですが、
この女優さんは89年まで、スピルバーグの私生活での奥さんで、久しぶりにスクリーンで観ましたね。
個人的には映画の基本設定として、奥さんが自殺してしまうことを随分と早い段階から見せてしまうのですが、
個人的にはこれが映画の中盤で語り、郊外に引っ越してからのエピソードをもっと短縮すれば、
映画がどのようになっていたかと考えると、チョット観てみたい気がするんですよねぇ。

主人公の人間性をもっと掘り下げて描くことができたかもしれないし、
ひょっとすると映画の印象は、格段に良くなったのではないかとも、想像するのですがねぇ。

いずれにしても、こういう映画はもっと映画の原点に立ち帰った方がいいように思いますね。

まるで使い捨てられるかのように、この手の映画が量産され、
次から次へ忘れ去られてしまうだけに、企画の段階からもっとしっかり練って欲しい。

(上映時間100分)

私の採点★★★★☆☆☆☆☆☆〜4点

日本公開時[PG―12]

監督 ジョン・ポルソン
製作 バリー・ジョゼフソン
脚本 アリ・シュロスバーグ
撮影 ダリウス・ウォルスキー
美術 スティーブン・J・ジョーダン
編集 ジェフリー・ウォード
音楽 ジョン・オットマン
出演 ロバート・デ・ニーロ
    ダコタ・ファニング
    ファムケ・ヤンセン
    エリザベス・シュー
    エイミー・アービング
    ディラン・ベイカー
    メリッサ・レオ
    ロバート・ジョン・バーク