天国から来たチャンピオン(1978年アメリカ)

Heaven Can Wait

ハリウッドきってのプレーボーイだったウォーレン・ビーティが初めて監督に挑戦したヒューマン・コメディ。

ロサンゼルスのアメフト・チームのクォーターバックとして活躍していたジョーが、
“スーパーボウル”開催直前に不慮の交通事故に遭って命を落としてしまったものの、天国へ向かう経由地点で
よく調べてもらったら、実は寿命はあと50年も残っていて、処理した天使のミスで死んでしまったことが判明する。
しかし、ミスが判明した時点でジョーのご遺体は火葬されてしまい、自分の肉体に戻ることができないことになり、
殺人事件の被害者となった大富豪や、プレー中の接触事故で死んでしまうチームメートの肉体を借りる姿を描きます。

1940年代に製作された映画のリメークらしいのですが、中身的には70年代版のアレンジされている。
78年度のアカデミー賞で作品賞含む、主要9部門で大量ノミネートされるなど高評価でしたが、受賞は1部門のみ。
個人的にはそこまで出来の良い映画だったかと聞かれると、それはどうかなぁ・・・と疑問に思うのが正直なところ。

まぁ、退屈な映画というわけではないのだけれども、僕には突出した魅力が感じられる作品ではなかった。
ウォーレン・ビーティの演出は初監督作品とは思えぬほど安定した内容であって、後に大成する一端が垣間見れる。
とは言え、例えば後年の『レッズ』で感じたウォーレン・ビーティの並々ならぬ熱意を感じさせる内容とも言えないし、
映画のラストで何かズシッと響く内容というわけでもない。内容的に仕方ないけど、コメディとしても中途半端に映る。

原題をそのまま和訳すれば、「天国は待ってくれる」という意味になりますが、内容は正しくそんな映画。
紆余曲折を経て最終的にジョーの魂が行き着く先を見つけて、新たな人生を歩み始めるというのは、何とも切ない。
ここは良かったんだけど、何か一つでもいいので映画の中で突き抜けたものが欲しくて、映画として決め手に欠ける。

ウォーレン・ビーティが何を大切にして描きたかったのかが伝わりにくく、映画の中盤なんかはコミカルなんだけど、
僕は終盤の切ないロマンスの方が魅力的に映ったので、ジュリー・クリスティをもっと積極的に描いて欲しかった。

主人公のジョーが一時的に肉体を借りることになる大富豪のエピソードが、ジュリー・クリスティ演じる
環境保護活動を行う女性ベティと出会う重要なエピソードではあるのだけど、秘書と妻による工作活動が今一つ。
ここはコミカルに描くことで映画のコメディ・パートを支える役割だったのだろうと思うけど、なんだか中途半端な感じ。
秘書を演じるチャールズ・グローディンにしても、大富豪の妻を演じたダイアン・キャノンにしても、お互いに不倫関係で
邪魔者である大富豪を殺すという目的を果たすことで利害関係が一致しているのですが、これで笑うのは難しいなぁ。

チャールズ・グローディンなんかはコメディ映画で活躍した役者なんで、少々ドジでトボけたところがありながらも、
実は鋭いところがあるというキャラクターで映画をかき乱すような役を演じることができるはずなんだけど、
本作ではあまり彼の持ち味を生かす場面が与えられなかったという印象で、盛り上げ役になることができなかった。
正直、彼が演じる秘書がもっとコメディ・パートをしっかりと担っていれば、映画は大きく変わっていたと思います。

まぁ、ジョーが大富豪の肉体を借りた状態なので、秘書と妻が不倫してようが知ったこっちゃない、
という状況ではあるのですが、もっとドタバタとさせても良かったと思うし、どこか邪魔なエピソードに見えてしまった。

ウォーレン・ビーティの人脈もスゴかったのか、定番となったジュリー・クリスティの起用は勿論のこと、
年老いた天使を演じたジェームズ・メーソンに、アメフト・チームのトレーナーを演じたジャック・ウォーデンと
ベテラン俳優たちが脇でとても良い存在感を示している。これは絶妙なキャスティングだったことを証明している。

特にジャック・ウォーデンはラストシーンで、ジョーの魂が乗り移ったことを確信しながらも、
ジョーの人格が消失したことを悟って、ロッカールームで何とも言えない表情を浮かべる姿が妙に印象に残ります。

そうなだけに前述したチャールズ・グローディンとダイアン・キャノンのコンビが幾度となく殺しにチャレンジするという
一連のシークエンスがあまり盛り上がらずに、ドタバタ劇としても面白くならなかったのが、とても勿体なかったなぁ。
キャスティングに時折見せた、何とも言えない雰囲気ある非凡な演出が素晴らしかっただけに尚更のことですね。

いずれにしても、本作は映画監督としてのウォーレン・ビーティが次作『レッズ』への布石となったのは間違いない。
突き抜けたものを作れたとは思わなかったけど、それでも一つ一つのシーン演出は堅実で落ち着いた良いものがある。
これにウォーレン・ビーティの並々ならぬ情熱が加わったのが『レッズ』でしたから、次作で結実した成果になります。

この映画の名台詞ではあると思うのですが、ジュリー・クリスティ演じるベティが「あなた...クォーターバックね」と
呟いて、動揺しながらもウォーレン・ビーティに見惚れる視線が忘れ難い。こういうシーンを撮れたのは、良いと思う。
ウォーレン・ビーティって、こういう少しばかりプラトニックなロマンスを描くことが出来るのだから不思議なものですね。

ちなみに映画の最初にジョーを死亡させるというミスをした、新米の天使を演じたバック・ヘンリーは
本作でウォーレン・ビーティと共同監督を務めた人。日本ではあまり知られていない人ですが、多彩な人なんですね。
もともとは67年の『卒業』で脚本を書いていた人であり、役者としても映画やテレビドラマに出演していたようです。
テレビシリーズ『それ行けスマート』で脚本を書いていた人でもあって、もっと評価されても良かったと思うんですよね。

本作でも初監督にチャレンジだったウォーレン・ビーティにとって、良きパートナーでもあったのだろうと推測。

それにしても...人間はミスする生き物とはよく言ったものの、天使もミスするという設定は面白いですね。
敢えて擬人的に描いた表現だったかとは思うのですが、いくらジェームズ・メーソン演じる偉い天使から諭されたって、
実は残り50年も人生があったにも関わらず、新人の天使のミスで誤って死んだなんて、納得できないですよね(笑)。
自分の肉体や魂、家族との出会いも一期一会だと考えれば、他の肉体を借りて生きればいいなんて、受け入れ難い。

そんなミスをした張本人の新米の天使も、途中から大富豪の肉体を借りるジョーに「いい加減、理解してください」と
謎の開き直りとも解釈できることを言い出して、ミスで死んでしまったジョーに諦めさせようとするなんてスゴい(笑)。
このジョーはジョーでどこまでお人好しなのか、天使から理不尽なことを言われても、まったく怒らないという不思議。
これはこれで本作の良さでもあるのだろうし、ウォーレン・ビーティも本作で目指したのはコメディだったのでしょうね。

しかも、この主人公はジョーという男に執着して、新たな肉体を戻めているというわけではなくって、
どこからどう見ても、アメフト・チームのクォーターバックとして“スーパーボウル”に出場するために求めています。
試合に出れるなら、肉体は誰でもいいんかい!?とツッコミの一つでも入れたくはなりますが、それも含めてお人好し。
そういう意味では、「人間は外見よりも内面だよ」ということが主張の一つでもあったのだろうか?と思えなくもない。

何より、大富豪の肉体を借りることになったら、真っ先にどうやったらアメフト・チームに復帰できるかを考えて、
チームを買収して自分が練習に志願して参加すればいいんだと、行動に移しちゃう猪突猛進さがスゴいと思いました。
(普通はジョーと同じ状況なら、彼ほど前向きにバイタリティを持って行動し続けることは無理だと思います・・・)

この映画はバッドエンドだなんて思わないけれども、ベティとの人生があればそれでいいのかと言われると、
それはそれで微妙なところだし、なんだかこれはハッピーな結末と言っていいのか、判断に困るラストですね。

このアンバランスさ(?)というか、謎めいた映画の方向性が賛否分かれるところかも。
個人的にはコメディ映画だというのなら、もう少し盛り上げてニヤリとでもさせて欲しかったし、どこか不発なままだ。
前述したようにロマンスの部分は不思議な感覚があって悪くないだけに、この長所はもっと伸ばして欲しかった。
(だからこそ、ベティを演じたジュリー・クリスティをもっと積極的に描いて、2人のロマンスを盛り上げて欲しかった)

で、誰かと思えば...この映画の脚本を書いたのは、エレイン・メイだったのか・・・。
エレイン・メイとウォーレン・ビーティと言えば、87年の大失敗作『イシュタール』を生み出したコンビでしたね。
まぁ、本作は『イシュタール』よりは遥かに高い評価を浴びた作品なので、本作と比較することはナンセンスでしょうが、
本作がどこかチグハグな部分を残す映画になってしまったのは、最初に用意されたシナリオの問題もあったのかも。

この映画が好きな人には大変申し訳ない言い方ですが、個人的にはアカデミー賞に大量ノミネートされるような
風格漂う作品かと聞かれると、それは少々過大評価であった気がする。とは言え、観た後に不思議な感覚に浸れる。
この辺の絶妙なバランスを具現化した、ウォーレン・ビーティのディレクターとしての才覚は確かなものだったのだろう。

まぁ、結局はウォーレン・ビーティが当時の恋人だったジュリー・クリスティと一緒に仕事したかったということなのかな?
この2人は70年代、こういう共演が多かったですね。『シャンプー』の反省を生かしてか(?)、ラブシーンは無いけど・・・。

(上映時間101分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 ウォーレン・ビーティ
   バック・ヘンリー
製作 ウォーレン・ビーティ
脚本 エレイン・メイ
   ウォーレン・ビーティ
撮影 ウィリアム・A・フレイカー
音楽 デイブ・グルーシン
出演 ウォーレン・ビーティ
   ジュリー・クリスティ
   ジェームズ・メーソン
   ジャック・ウォーデン
   チャールズ・グローディン
   ダイアン・キャノン
   バック・ヘンリー
   ビンセント・ガーディニア
   R・G・アームストロング

1978年度アカデミー作品賞 ノミネート
1978年度アカデミー主演男優賞(ウォーレン・ビーティ) ノミネート
1978年度アカデミー助演男優賞(ジャック・ウォーデン) ノミネート
1978年度アカデミー助演女優賞(ダイアン・キャノン) ノミネート
1978年度アカデミー監督賞(ウォーレン・ビーティ、バック・ヘンリー) ノミネート
1978年度アカデミー脚色賞(エレイン・メイ、ウォーレン・ビーティ) ノミネート
1978年度アカデミー撮影賞(ウィリアム・A・フレイカー) ノミネート
1978年度アカデミー作曲賞(デイブ・グルーシン) ノミネート
1978年度アカデミー美術監督・装置賞 受賞
1978年度ゴールデン・グローブ賞作品賞<ミュージカル・コメディ部門> 受賞
1978年度ゴールデン・グローブ賞主演男優賞(ウォーレン・ビーティ) 受賞
1978年度ゴールデン・グローブ賞助演女優賞(ダイアン・キャノン) 受賞