ハートブレイカー(2001年アメリカ)

Heartbreakers

これは勿体ない映画ですね。
たいへん申し訳ない言い方ですが、作り手の“料理”があまりにマズかったですね。

まぁ映画は昔から結婚詐欺を繰り返して蓄えを増やしてきた女性マックスが、
女性結婚詐欺師として独立を宣言していた愛娘ペイジの独立を防ぐためにと、
あれやこれやの手を打って、次の大富豪を騙しながらも、ペイジが恋した男性をも結婚詐欺の対象にして、
ペイジと結婚させ、金を騙し取ろうとする姿を描いた、少しだけドタバタしたコメディというわけです。

もっと力量あるディレクターが撮っていれば、映画は変わっていたでしょうね。
これはあまりに勿体ない結果であり、エピソードを整理し切れていない。つまり、欲張り過ぎたというわけですね。
単刀直入に言いますと、この手の映画として上映時間が2時間を超えるというのは、長過ぎです。

監督はテレビ界で活躍してきたデビッド・マーキンで、
おそらくテレビ界でもコメディを中心に手掛けてきたのでしょうが、2時間で完結させるという
映画というメディアの枠組みの中での配分というものが、よく分かっていない印象を受けますね。
もっと経験値の高いディレクターであれば、おそらく上手く出来ていたはずです。

それと、撮影当時51歳という年齢で、マックスをここまでセクシーに演じた、
シガニー・ウィーバーは確かに凄いのですが、たいへん失礼ながらも、かなり無理してる印象がありますね。

せっかりペイジを演じたジェニファー・ラブ・ヒューイットが豊満なボディを活かして(笑)、
世の中の男たちをメロメロにさせることに見事に成功したのに(笑)、ここまで頑張らなくても良かったのに・・・。

どうせジェニファー・ラブ・ヒューイットを輝かせるために母がアシストするというのなら、
あそこまでフェロモンをムンムンと漂わせて演じなくとも、十分に輝いたはずだし、
むしろシガニー・ウィーバーのインパクトが強過ぎて、チョットだけ娘が霞んでしまったかもしれません(苦笑)。
(親子がお互いに一人の男を取り合って、張り合う映画なら、まだ納得できるのですがねぇ・・・)

ジェニファー・ラブ・ヒューイットも本作の頃は、日本でもそこそこ知名度があって、
歌手活動なんかもしてたはずなんですが、02年の『タキシード』でジャッキー・チェンと共演して以来、
ほとんど映画界での活動が無くなってしまったようで、なんだか複雑な心境ですね。
あの頃はハリウッドのトップ女優を狙えるような勢いがあっただけに、この10年間がウソのよう。
(まぁ・・・テレビ界に活躍の場を移したようで、テレビ女優としては全米で活躍中とのこと)

そんな親子に見事に騙される盗難車ブローカーというアブない商売をしている男を、
『ハンニバル』で大変なことになっていた(笑)、レイ・リオッタが演じているのですが、
彼も映画の中盤で完全に忘れ去られるという扱いの悪さで、機能しているとは言い難い模様。

映画の中では、ジーン・ハックマン演じるチェーンスモーカーな大富豪が傑出していて、
歯もわざわざ黄色く塗ったらしいのですが、マックスが人工呼吸したら、マックスの口からタバコの煙が
出てくるなんて芸の細かいギャグがあって、これだけ徹底したキャラクターというのも面白い。
そして70歳を超えてまでも、これだけ精力旺盛な爺さんという設定も、何故か微笑ましい。

できることならば、もう少しアン・バンクロフト演じるバーバラなど、
誰か一人でいいから、脇役キャラクターをもう一人、目立たせて欲しかったですね。

やっぱり数多くの人々から愛される映画というのは、
印象的な脇役キャラクターがいるという点に優位で、本作もジーン・ハックマン演じる大富豪の他に、
僕はもう一人、インパクトあるキャラクターが必要だったと思いますね。
それがレイ・リオッタもアン・バンクロフトもなり得ない、中途半端な位置づけになったのがツラいですね。

但し、無駄なシーンが多く冗長になったとは言え、
キチッとしたプロセスは踏んだ映画にはなっていますので、最低限の役割を果たしてはいます。
押さえるツボは押さえていますので、ドタバタ劇はそこそこの面白さだし、
特に映画の後半にあるベッドシーツに包まれた“モノ”を移送するエピソードはまずまずの出来。

そういう意味では、あまり過度な期待をしなければ、そこそこ楽しめる映画と言えるでしょう。

ナンダカンダ言って、マックスは子離れできない親というわけなのですが、
ある意味で結婚詐欺師の才覚を見せ始めたペイジが、自分を超え始めるのが怖かったのかもしれません。
マックスは意識だけは、結婚詐欺師としてのプロ根性を持っていたのかもしれませんね。

ただ、そんなマックスでもプロの結婚詐欺師で数多くの犯行を重ね、
20歳にもなる娘を育て上げたという現実が信じ難いぐらいの弱みを見せているのは残念ですね。

ロクにできもしないロシア語であるにも関わらず、ロシア出身だと偽って、
ロシア料理店でウェーターにアッサリと見破られるし、いくらかつての相棒とは言え、
自分の口座番号を教えて、アッサリと金を奪われるというお粗末な詐欺師はなかなかいません(笑)。

しかもロシア料理店では、ビートルズ≠フBack In The U.S.S.R.(バック・イン・ザ・USSR)を
歌って切り抜けるという、無理矢理な力技に出るし、お世辞にも結婚詐欺師のプロとは言えません。
そんなお粗末ぶりが、この映画の出来を象徴しているような気がするのですが、
頑張り過ぎなシガニー・ウィーバーのエイリアンばりのフェロモンは称えなければならないのかも。
(でも...やっぱり彼女の頑張りは、なんだか観ていてツラかったなぁ〜)

それと、ジェニファー・ラブ・ヒューイットのファンは、絶対に外せない作品であることは言うまでもありません。

(上映時間123分)

私の採点★★★★★☆☆☆☆☆〜5点

監督 デビッド・マーキン
製作 ジョン・デイヴィス
    アービング・オング
脚本 ロバート・ダン
    ポール・グアイ
    スティーブン・メイザー
撮影 ディーブン・セムラー
音楽 ジョン・デブニー
    ダニー・エルフマン
出演 シガニー・ウィーバー
    ジェニファー・ラブ・ヒューイット
    レイ・リオッタ
    ジーン・ハックマン
    ジェーソン・リー
    アン・バンクロフト
    ジェフリー・ジョーンズ
    ノーラ・ダン