そんな彼なら捨てちゃえば?(2009年アメリカ)

He's Just Not That Into You

うーーーん...いわゆる“ガールズ・トーク”を本にした原作で、
その原作の映画化なんだろうけど、正直言って、これは映画的な題材ではなかったですね。。。

最近はプロデューサーとしての活躍が目立つドリュー・バリモアですが、
ハリウッドの豪華キャストを集結させた作品ではあるのですが、前述した映画向きな原作ではなかったことと、
さすがにこの内容で2時間を超えてしまうというのは、冗長に感じられても仕方ないかなぁと思いますね。

いわゆる“恋愛ハウ・トゥー本”の映画化なのですが、
チョット、訴求力のある映画にするのが難しく、何を主張したかったのか、よく分からない出来なんですね。

現実的な部分で考えれば、それは勿論、生々しい部分はあると思います。
女性の立場から、恋愛の入口を描いているわけで、「何故、恋愛するのか?」ということと、
「なかなか緒がほどけない恋愛を、どうほどいていくか?」ということを描いていると感じたのですが、
30歳前後のいわゆる“アラサー世代”の結婚を真剣に考える女性には、共感できる部分も多いのでしょうね。

今は確かに男性も恋愛に関しては軟弱化しているでしょうから(笑)、
恋愛に対するアプローチが、肉食系な女性からというケースが多いだけに、
女性の中でも恋愛に対して、「どうアプローチしていくか?」などの悩みも一般化されてるはずです。

しかし、男女の駆け引きは面白いもので、
どう一つの恋愛を分析しても、これだっかりは十人十色の恋愛模様ですから、
恋愛に関する方程式なんて、成立させることは難しいでしょうね。恋愛の分析も、なかなか当たらないですしね。
但し、この映画はそんな的外れな分析をもテーマの一つにしてますし、なかなか当たらないことは明白で
あるにも関わらず、それでも恋愛を分析したがる人間の性(さが)をメインテーマにしているように思いますね。

が、でも・・・それだけで2時間オーバーはキツいなぁ。。。
エピソードの数が多いせいもありますが、全体的にメリハリが感じられず冗長になってしまっているし、
もっとエピソードの数を絞っても良かったと思いますね。特に製作総指揮まで兼務して本作に尽力した、
ドリュー・バリモア演じる女性広告営業マンの疑似恋愛みたいなエピソードは、あまり強い意味を感じません。

個人的には一番、フォーカスしていたように思われる、
ジニファー・グッドウィン演じるジジの恋愛エピソードはそんなに悪くなかっただけに、
いろんなエピソードを登場させて全体的に散漫な映画になるよりも、ジジのエピソードに注力して欲しかったかな。

ガツガツと肉食系に攻めるジジこそが、ある意味でこの映画の主題に合っていると思うし、
映画の冒頭からそうなのですが、やはり彼女のエピソードを軸に映画は動いているわけです。

しかし、よく恋愛映画って女性向きと言われるのですが、
いざ本編を観てみると、映画の作り手が男性だったりするせいか、実は男性の視点から見た映画が多くて、
一見すると女性向きと言われがちな内容でも、男性にも共感できる部分が多い映画って、
僕は実は凄く多いと感じているのですが、本作の場合はホントに女性の視点から見た映画ですね。

人気テレビ・シリーズ『セックス・アンド・ザ・シティ』から派生した原作らしいのですが、
やはりテレビで支持を得たという実績があるだけに、かなりズケズケと女性の本音を描いている印象です。

しかし、これはジジのエピソードが一番、よく象徴しているはずなんですよね。
勿論、彼女以外のエピソードも女性の本音を描いているとは思うのですが、
既婚者であるジェニファー・コネリー演じるジャニーンにしても、結婚願望の強いベスにしても、
彼女たちの恋愛に関する本音といっても、あまり肉食系にガツガツいくという感じではないですね。

夜な夜なバーに通っては、連絡先を交換した相手から連絡をもらえないことに悩み、
ジャニーンに恋愛相談しながらも、バーで知り合ったオーナーのアレックスのアドバイスを信じるようになり、
次第に彼女の中で開き直り、余計な邪推を止め、単刀直入なアプローチを続けていきます。

しっかし、開き直った彼女は連絡先を交換した男性に対して、
いきなり「アナタから連絡する? それともアタシ? ハッキリさせましょう」とガッツキます(笑)。
これは確かに男の立場から見ると、“引く”人もいるかもしれませんが、逆にあそこまでいけば爽快ですね。
それだけジジに恋愛に対する焦りがあったのかもしれませんが、彼女の性格を表した象徴的なシーンです。

そういう意味では、本作を最も強く反映するジジをもっと多く描くべきだったと思いますね。
別に嫌いな女優さんというわけではありませんが、プールやオフィスで下着姿になってサービスした、
スカーレット・ヨハンソンなんかも、あまり強い意味を感じる存在にはなりえていないと思いましたね。
(まぁ・・・ジェニファー・コネリーと危うく、“直接対決”になりかけたオフィスでのシーンは面白かったけど・・・)

監督は05年に『旅するジーンズと16歳の夏/トラベリング・パンツ』のケン・クワピスで、
『旅するジーンズと16歳の夏/トラベリング・パンツ』は青春時代の感覚を画面に吹き込み、
ひじょうに出来の良い作品に仕上げていた印象があったのですが、本作はイマイチでしたね。
本作では本来的に注力すべきテーマに、今一つ注力し切れなかったような印象が残りましたね。

あと、ラストのまとめ方もあまり上手くないですね。
確かに色恋沙汰なんて、予想外な結末を迎えることもしばしばですが、
もっとしっかりとした納得性を持たせた描き方をして欲しかったし、前述したジジのエピソードが大切なのに、
彼女の恋愛が進展し、ラストのような形になるまでの描写がどうしても弱い。これは実に残念なことです。

ひょっとすると、作り手は恋愛群像劇として映画を成立させたかったのかもしれないけど、
いっそ女性視点から恋愛を描くのであれば、肉食系女子を3人ぐらい主人公級に据えて、
それぞれのなかなか上手くいかない恋愛を描いた方が、映画はずっとスッキリしたとすら思いますね。
(まぁ・・・しっかりとした原作本があるから、大幅に脚色しづらいのは仕方ないんだけど・・・)

いずれにしても、数多くのエピソードを上手くさばけるほど、
ケン・クワピスというディレクターはまだそこまで上手くはないと僕は思います。
であれば、もっと内容を絞った映画にしなければ、面白い映画は撮れないと思いますけどね...。

(上映時間129分)

私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点

監督 ケン・クワピス
製作 ナンシー・ジョヴォネン
原作 グレッグ・ベーレント
    リズ・タシーロ
脚本 アビー・コーン
    マーク・シルバースタイン
撮影 ジョン・ベイリー
編集 カーラ・シルバーマン
音楽 クリフ・エデルマン
出演 ベン・アフレック
    ジェニファー・アニストン
    ドリュー・バリモア
    ジェニファー・コネリー
    ケビン・コナリー
    ブラッドリー・クーパー
    ジニファー・グッドウィン
    スカーレット・ヨハンソン
    クリス・クリストファーソン
    ジャスティン・ロング