ガンシャイ(2000年アメリカ)

Gun Shy

長年にわたりマフィアや麻薬組織への潜入捜査を続けてきた、
麻薬取締捜査官が極度のストレスから、日常生活に支障をきたすような恐怖症を発症し、
体調を崩してしまうも、無理矢理、潜入捜査を続けることの苦悩をユーモアを交えて描いたアクション・コメディ。

当時、ハリウッドでもマネーメイキング・スターとして、
売れっ子女優だったサンドラ・ブロックが製作総指揮も兼務する意欲作だったのですが、
僕はこの映画、実は複数回、鑑賞しているのですが、何度観ても印象は全く変わりませんね(苦笑)。

サンドラ・ブロックのファンなら、劇場公開前は結構、期待度が高かったと思うのですが、
いざ本編の方はと言うと、さすがに彼女自身のプロデュースなせいか、出演時間は短く、
むしろリーアム・ニーソンやオリバー・プラットが目立つ感じで、彼女は控えめな印象で物足りなかったかも(笑)。

どうせ、アクション・シーンもある映画なのですから、
おそらく彼女のファンからすれば、彼女も大活躍する映画にして欲しかったのでしょうが、
やはり自身でプロデュースする企画だったせいか、彼女も遠慮したのでしょうかねぇ?(笑)

まぁ・・・結論から申しますと...
映画の出来はあまり良くないと思います。個性的で独特なペースの作品なのですが、
どうもコメディ映画としてのセオリーもキチッと踏めていないせいか、映画が盛り上がりません。
クライマックスでは、主人公の人生に於ける修羅場が到来するはずだったのですが、
どうもその修羅場すら盛り上がりことなく、実にアッサリと映画が終わってしまいます。

一応、クライマックスはドンデン返しのようなストーリー展開もあるにはあるのですが、
全てをスローモーションで描いてしまうラストの銃撃戦にしても、あまり盛り上がらず、
コンゲームとして描いた作品としても、映画のテンポが悪いせいか、あまりハマらなかったですね。

監督のエリック・ブレークリーは本作で脚本も書いているようですが、
実質的に本作が監督デビュー作らしく、どうも映画で撮りたいビジョンが定まらなかった印象ですね。

個人的にはドライなユーモアを交えた映画だというコンセプトは理解しますが、
もう少し分かり易い笑いのポイントを示して、映画のテンポを良くして欲しかったですね。
全体的に緩い雰囲気が支配する内容で、コメディ映画としての流れがキチッとできなかったのが残念でしたね。

まぁ強いて言えば、ダラダラした映画が好きな人にはオススメかも(笑)。
但し、個人的にはあまりにダラダラした空気が流れているせいか、どうも眠たくなるタイプの映画ですね(苦笑)。
映画にメリハリが感じられず、主人公が恐怖を強く感じるキッカケになった、オードブルに裸同然で横たわり、
マフィアの銃撃戦に巻き込まれるエピソードにしても、緊張感が感じられず、イマイチ伝わってこない。

どこかポイントのズレたコメディ映画といった趣向で、かなり一つ一つの笑いも独特です。
従って、誰にでも自信を持ってオススメできるコメディ映画という感じではなく、
笑いのセンスに関しても、この映画の笑いのポイントに共感できる人は、かなり限定されているかも(笑)。

まぁダルダルな空気という一貫性はあるのですが(笑)、どうも映画的ではない気がするんですよね。。。

おそらくオリバー・プラット演じるマフィアも冷酷非情と恐れられながらも、
実はマフィアを早く抜けたいと思っている、潔癖性な人間だというオチがあるのですが、
彼もまた、悪党であり続けることに強烈なストレスを感じ続けているという設定で笑わせたいのでしょうが、
リーアム・ニーソン演じる主人公の麻薬捜査官が感じ続けている“死に対する恐怖”という、
常人では感じ得ない強烈なストレスとシンクロすることなく、全てが中途半端に終わってしまうのが勿体ない。

主演のリーアム・ニーソンにしても、
ようやっとハリウッド映画で主役を演じるぐらいのビッグネームとなったにも関わらず、
終始冴えない表情でカメラに映り続けているせいか、どうも映画自体も冴えない印象が強調されてしまいますね。

まぁ器用な役者さんではありますから、もっとノーマルなコメディ映画で奮闘する姿を観たかったかなぁ。
こういう微妙なラインを狙ったコメディ映画で、珍しくコメディ演技に挑戦したとしても、
映画自体を成功させ、彼自身も高い評価を受けるというのは、かなり高いハードルだったとしか思えません(笑)。

そりゃ、僕も常に大きな変化ばかりに気をとられていると、
日常の些細な変化に気づかなくなるという盲点があると考えているのと一緒で、
安直な笑いに走るよりも、本作のように微妙なラインを敢えて狙った映画を応援したい気持ちはあるのだけれども、
本作が目指していた笑いって、実は凄く難易度の高い企画で、作り手がその難易度をクリアするのに
必要な実力に追いついていなかったようにしか思えないんですよね。だから企画は悪くないと思うのです。

それにしても、過度なストレスに悩まされる主人公が
神経性の下痢に悩まされるというのも生々しい設定で(笑)、何度もトイレに駆け込む芝居をさせられ、
挙句、サンドラ・ブロック演じる看護婦にベッドに横たわりながら、肉体的にもツラい浣腸をされるという、
ある意味で魅力的な女性との出会いという意味では、最悪な出会いを演じるリーアム・ニーソンは頑張りましたね。

但し、どんなに出演者が奮闘しても、もっと作り手がしっかりしなきゃなりません。
そういったキャスティングのレヴェルの高さを比べると、あまりに作りがお粗末な印象を受けます。

辛らつな言い方でたいへん申し訳ないのですが...
この映画の作り手にもう少し映画製作の経験があれば・・・と思うと、とても勿体ないなぁと思いましたね。
まぁサンドラ・ブロックには、このままプロデューサーとしての手腕を磨いていって欲しいとは思います。

(上映時間100分)

私の採点★★★☆☆☆☆☆☆☆〜3点

監督 エリック・ブレークニー
製作 サンドラ・ブロック
脚本 エリック・ブレークニー
撮影 トム・リッチモンド
音楽 ロルフ・ケント
出演 リーアム・ニーソン
    オリバー・プラット
    サンドラ・ブロック
    ホセ・ズニーガ
    リチャード・シフ
    マイケル・デロレンツォ
    ポール・ベン=ビクター
    メアリー・マコーマック