ジーリ(2003年アメリカ)

Gigli

実生活で婚約していたベン・アフレックとジェニファー・ロペスが共演したものの、
あまりに映画の出来が悪いと酷評を受け、不名誉なことにもゴールデン・ラズベリー賞を総なめにし、
日本劇場未公開という扱いを受けてしまった、オフビートな感覚を基調としたロマンチック・コメディ。

監督は『ミッドナイト・ラン』、『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』のマーチン・ブレスト。
お世辞にも褒められた出来の作品とは言えず、申し訳ないけど、酷評を受けた理由はよく分かる。

ベン・アフレックとジェニファー・ロペスがイチャイチャすることを“売り”とした作品のようですが、
個人的にそういうのはプライベート・ビデオかなんかでやって欲しい。少なくとも映画で観たいものではない。
(・・・と文句を垂れつつも、しっかり観るけど...)

とは言え、まぁ・・・映画のラストはそこそこ上手くまとめてあるし、
僅かな時間でも強烈な個性を残したクリストファー・ウォーケンとアル・パチーノのゲスト出演が嬉しい。
まぁチョイ役にしかすぎない2人のゲスト出演が、本作最大の見どころという事実も悲しいが(苦笑)、
何一つ見どころを見い出すことができないレヴェルにまでは落ちぶれていないと思う。

まぁマーチン・ブレストが脚本も書いて撮影した作品なわけですから、
このような出来になってしまって、ホントに残念ではあるのですが、
もう少しギャグセンスのある人が脚本を書いていたら、映画は変わっていたかもしれませんね。
おそらくタランティーノが撮っていた映画の空気を狙っていたのではないかと推察したのですが、
どうも映画の空気に統一感が無く、節々のギャグも不発だったせいか、映画にパワーが宿っていない。

元々、マーチン・ブレストって寡作の映画監督で有名ですから、
せっかく98年の『ジョー・ブラックをよろしく』以来、5年ぶりの監督作となった本作が、
このような結果に終わってしまったことは、心から残念でなりませんね。是非とも、次作で挽回して欲しい。

あと、もうチョット主人公のジーリの描き方を考えるべきでしたね。
少なくとももっと観客に愛されるキャラクターとして描くべきだったのは言うまでもなく、
体格や肉付きは良いけど、自信過剰かつ横柄なチンピラで、包容力も無ければ知性も感じられない。
オマケにリッキーに「絶対に関係を迫ったりはしないから、オレの横で寝なよ」と言っておきながら、
すぐに彼女にベッドの上で迫り、あえなく撃沈されてしまう情けなさ。どう考えたって、愛されませんって(笑)。

まぁゴシップ的な要素もあってか、ゴールデン・ラズベリー賞のネタにされてしまいましたが、
半ば本作なんかは企画の段階で、その結果というのは見えていたような気がするんだけどなぁ。
少なくともベン・アフレックとジェニファー・ロペスの交際は02年頃から囁かれていたわけですから、
この2人を主演にキャスティングするのは避けた方が賢明だったと思いますね。

それに輪をかけるように、映画の中身もトンチンカンだから救いが無いですね。

本作の主人公ジーリはロサンゼルスに暮らす冴えないチンピラ稼業。
ボスからデカい仕事ということで回ってきた、知的障害のある連邦検察官の弟を誘拐する計画。
アッサリと弟の軟禁に成功したジーリですが、彼の部屋にとびきりの美女リッキーがやって来る。
彼女はジーリのボスに雇われた、“プロ”だったという設定から始まる騒動を描いています。

ジーリのキャラクターに愛嬌が感じられないと前述しましたけど、
リッキーはリッキーでイマイチ納得性が感じられないキャラクター造詣でガッカリくる(苦笑)。
映画の中盤にジーリらが立ち寄ったカフェで若者たちにケンカを売られて、腹をたてたジーリを制して、
リッキーが若者たちを諭しに行くのですが、ここでカンフーがどうのと力説するシーンがあって、
このシーンの“お寒い”感じが、本作のダメダメ感をより助長させてしまった感じですね。

オマケにやたらとキワどい言葉を連発して、挑発的な体操をしてジーリと会話したりするのですが、
そんなこんなでジーリとリッキーの距離が縮まっていく過程に、まるで説得力が無い。

こんな内容なんだもん、そりゃ映画のセールス・ポイントが無いですよね。
カルトなファンの熱い要望に応えて(?)、ようやっと実現したDVD発売の際にも、
パッケージには「日本劇場未公開!」だの、「ラジー賞独占!」だのと、悲しい宣伝文句が並んでいます。
おそらくこんな売り方をされてしまっては、マーチン・ブレストもさぞかし悲しんでいることでしょう。
(まぁ・・・カルトな路線に訴えるしかないわけだから、仕方ない話しではあるのですが。。。)

大スターの公私混同、映画が進むほど面白くなくなっていく、上映時間が無駄に長い...と、
ある意味で3拍子揃ったカルト映画として、大々的に認知された作品と言ってもいいと思います。

とりあえず、何を考えているのか、一体何のために登場してきたのか、
サッパリよく分からないけど、クリストファー・ウォーケンがしつこい存在感を出し、
映画に華を添えるように、ドッカァーン!と登場してきたアル・パチーノの2人の登場シーンが見どころですので、
それだけでも彼らのファンなら楽しめる要素はあると思います。っていうか、これが唯一の救いです。

ただ、マーチン・ブレストは次はちゃんとやって欲しい(笑)。

(上映時間121分)

私の採点★★★☆☆☆☆☆☆☆〜3点

監督 マーチン・ブレスト
製作 マーチン・ブレスト
    ケイシー・シルバー
脚本 マーチン・ブレスト
撮影 ロバート・エルスウィット
音楽 ジョン・パウエル
出演 ベン・アフレック
    ジェニファー・ロペス
    レイニー・カザン
    テリー・カミレッリ
    レニー・ヴェニート
    クリストファー・ウォーケン
    アル・パチーノ
    ジャスティン・バーサ

2003年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト作品賞 受賞
2003年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト主演女優賞(ジェニファー・ロペス) 受賞
2003年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト監督賞(マーチン・ブレスト) 受賞
2003年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト助演男優賞(アル・パチーノ) ノミネート
2003年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト助演女優賞(レイニー・カザン) ノミネート
2003年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト脚本賞(マーチン・ブレスト) 受賞
2003年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト・スクリーン・カップル賞(ベン・アフレック、ジェニファー・ロペス) 受賞