ゴーストライダー(2007年アメリカ)

Ghost Rider

評判は芳しくないようだが...
これは観る前に予想していたよりは、ずっと面白い映画で安心しました。

いや、とは言え、おそらく万人ウケする内容とは言い難く、
アメリカン・コミック好きにも、おそらく賛否両論となる内容でしょうね。映画の主旨も分かりにくいし。

思いのほか、チープな部分もあって、ひょっとすると20年ぐらい経つと、カルト映画扱いされてるかも。
そう思わせるぐらい、他のヒーローを描いた映画とは違っていて、古臭い遊園地のような映画だ。
派手な映像効果も使ってはいますが、何故かどことなく全て安っぽく見えるから不思議だ。

古くからのファンから言わせてもらえば、悪魔の役としてピーター・フォンダが出演しているのが嬉しい。
ひょっとすると、彼が出演しているから、映画がチョットしたカルトな雰囲気を出しているのかもしれない(笑)。

もし、続編を製作する話しがあるのであれば、個人的には少し観てみたいかも・・・(笑)。
おそらく商業的に成功する続編の企画ではないでしょうが、ピーター・フォンダを引っ張り出せて、
同じような趣向で映画を撮るのであれば、是非とも製作して頂きたいと思っています。
(ただ、こういう続編ともなると、無駄にVFX使うとか、変な横槍が入ることが多いから、嫌なんだけど・・・)

監督は『デアデビル』のマーク・スティーブン・ジョンソン。
『デアデビル』もアメコミの映画化でしたが、今回はマーベル・コミックのキャラクターから派生させたストーリー。
つまり、キャラクターだけ借りたマーク・スティーブン・ジョンソンのオリジナル・ストーリーなのですね。

どことなく安っぽい、サーカス小屋でのバイク・パフォーマンスのシーン演出など、
チープな雰囲気がたまらなく良く、ほとんどCGで表現し切ったアクション・シーンもそんなに悪くない。
唯一、マーク・スティーブン・ジョンソンがこの映画を撮る上で、抜け落ちていた点があるとすれば、
それは“元祖イージー・ライダー”である、ピーター・フォンダをバイクに乗せなかったことだろう(笑)。
僕も思わず、「せっかくピーター・フォンダを引っ張り出したのに、何やってんだ!?」と思ってしまいました(笑)。

これは主人公のバイクを見て、「おぉ、これはいいバイクだ」なんてコメントさせるだけでは勿体ない。
是非とも僕はピーター・フォンダが悪魔の姿で、バイクをカッ飛ばすシーンを観たかった(笑)。

それと、やはりピーター・フォンダが出演しているせいか、
『さすらいのカウボーイ』を意識してか、西部劇のイメージを活かしているあたりにも注目だ。
老カウボーイとしてサム・エリオットが出演しているのですが、実に渋くってカッコ良い。

そう考えていくと、意外にこの映画、アメリカン・ニューシネマ好きが喜ぶ作品かもしれませんね(笑)。
特に老カウボーイが主人公に「一緒に行こう」とバイクと馬を並走させて、疾走するのですが、
ある程度行ったところで、「あとはお前一人で行け。ワシは疲れてもうた」みたいなこと言って、
カッコいい去り際を演じるのが、無駄にカッコ良い(笑)。これは本作で一番、良かったシーンかも(笑)。

なんか、不思議とほとんど観てしまう、ニコラス・ケイジ主演作って感じなのですが(笑)、
今回のニコラス・ケイジも変な髪形をしていますが、同時期の『NEXT −ネクスト−』とかよりはずっと良い。
(前髪を下ろしたのか、ああいうカツラなのか分からないけど、随分と若作りした印象があるけど・・・)

結局、本人もまんざらこういうヒーロー映画が嫌いじゃないんでしょうね。
この前観た、『バッド・ルーテナント』のような映画で、キレた芝居をするのも魅力なんだけど、
本作のような映画でヒーロー的に登場するのも、彼の一つの楽しみなのかもしれません。

映画の尺の長さも丁度良い感じなのですが、
チョット残念なのは、映画のラストのまとめ方があまり上手くなかった点ですかね。

それはピーター・フォンダ演じる悪魔との駆け引きも含めて、
あまりに中途半端な感じで終わりますので、おそらくあれが続編への布石なのでしょうが、
それにしてももう少し上手くまとめて欲しかったというのが本音で、これでは“木”のメッセージも活きてきません。
こんなに違和感だらけのラストでは、映画が一向に締まらない感じで、印象を悪くしてしまいますね。

あくまでエンターテイメントという枠組みで考えれば、
あまり大衆ウケ、或いは万人ウケするタイプの映画とは思えないだけに、一流の仕事とは言い難いです。

しかしながら、好きな人は徹底して惚れ込むタイプの映画ではないでしょうかね。
好き嫌いが分かれてしまうと、ヒットしづらい企画になってしまいまい、微妙な位置づけになってしまうのですが、
あくまでカルトな映画という枠組みで考えるなら、僕はそこまで悪い位置づけにはならないのではないかと思う。

色々と調べてみたら、マーク・スティーブン・ジョンソンって、
98年に『サイモン・バーチ』を撮ったディレクターなんですね。全く毛色の違う作品で驚きです。
『サイモン・バーチ』はかつて高校生の頃に、芸術鑑賞で観たとき、ひじょうに丁寧に作られた印象があり、
殊にドラマ性という意味では、他作品に負けない味わいがあったと記憶しており、秀作と言っていい出来でした。
まるで方向性の異なる、本作みたいな映画が撮れるなんて、ひょっとするとかなり器用な人なのかもしれません。

映画の序盤にありますが...
主人公が“Xゲーム”のようなバイク・パフォーマンスに於いて、着地に失敗するシーンで、
自分が運転していたバイクに轢かれるシーンがあるのですが、これがスロー映像で観ると、
尚更、かなりヤバい轢かれ方をしていて、思わずビックリしてしまいました。

頭から思いっ切り前輪に轢かれており、あれは主人公の仲間が言うとおり、
死んでいても何らおかしくはない、むしろよく生きていたと言えるレヴェルの悲惨な事故です・・・。

(上映時間110分)

私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点

監督 マーク・スティーブン・ジョンソン
製作 アヴィ・アラッド
    マイケル・デ・ルカ
    ゲイリー・フォスター
    スティーブン・ポール
原案 マーク・スティーブン・ジョンソン
脚本 マーク・スティーブン・ジョンソン
撮影 ラッセル・ボイド
編集 リチャード・フランシス=ブルース
音楽 クリストファー・ヤング
出演 ニコラス・ケイジ
    エヴァ・メンデス
    ウェス・ベントリー
    サム・エリオット
    ドナル・ローグ
    ピーター・フォンダ
    マット・ロング
    ラクエル・アレッシ

2007年度ゴールデン・ラズベリー賞ワースト主演男優賞(ニコラス・ケイジ) ノミネート