ギャラクシー・クエスト(1999年アメリカ)

Galaxy Quest

人気TVシリーズ『スター・トレック』の熱狂的な人気をモチーフに、
架空のTVシリーズ『ギャラクシー・クエスト』に出演し、かつての栄光に頼るように、
『ギャラクシー・クエスト』のファン・ミーティングに時間を費やすキャストたちが体験する、宇宙戦争を描いたコメディ。

本作は全米でも、口コミからドンドンと上映映画館数を増やしていって、
最終的にはヒットと呼べるレヴェルの興行収入成績を残し、カルト的な人気を誇りました。

そんな事情もあってか、今となっては信じられないことですが、
僕は約20年ほど前に、本作の日本での劇場公開が終了した後に、札幌でDVD発売記念と称した、
ホールでの試写会が当たって本作を最初にスクリーンで観たという記憶があって、
通常のリバイバル上映とも違った、今の映画産業ではありえない企画があったことが懐古される作品です。

確かに当時、本作は根強い人気があって、その試写会もほぼ満員でしたし、
司会も煽ったせいか、上映終了時のエンド・クレジットでは拍手が起こったというほどでした。

また、本作に出演しているキャストたちも、劇中の設定とシンクロしているのも妙。
主演のティム・アレンは確かに、国際的には知名度が上がらないコメディ俳優であったし、
今となっては賛否がありそうな扱いだけど、シガニー・ウィーバーは当時の年齢からしても、
無理があるくらい胸を強調するファッションで、半ば“添え物”のような女性キャラクターでしかない。

まぁ・・・シガニー・ウィーバーは『エイリアン』シリーズでは、
女優としての華やかさとは対極するイメージを作って、エイリアンと対決する闘士だったので、
本作では敢えてその真逆で、紅一点という存在感にこだわるように役作りしたのかもしれませんね。

演じる彼らも開き直ったかのようで、特に硬派なイメージのアラン・リックマンが
トカゲ頭の特殊メイクで、舞台俳優としてのプライドから、嫌々仕事をしていながらも、
ナンダカンダでキャリアの中で最もヒットしたキャラだったせいか、結局は仕事に行く姿が印象的だ。
アラン・リックマンは2016年に残念ながら、ガンのため他界してしまいましたが、
ひょっとすると生前の出演作品の中で、本作は代表作の一つと言っても過言ではないかもしれませんね。

監督はディーン・パリソットで、彼はどうやらテレビの世界を中心に活動していたようだ。

本作自体は『スター・トレック』へのオマージュと言うべき内容ではありますが、
しっかりと『ギャラクシー・クエスト』の世界を作り出せており、コミカルでテンポ良くホントに上手かった。
宇宙船の中で“オメガ13”を探して、地球のマニアと交信しながらティム・アレンとシガニー・ウィーバーが
奔走するシーンが面白くって、“オメガ13”に辿り着くまでの幾多の困難を前に、シガニー・ウィーバーが
「こんな話しを考えた脚本家を恨むわ!」と言い放つシーンなんかは、コント的だけど面白かった。

個人的には映画の世界を、映画で描くのはどうしても甘さが感じられて好きになれないのですが、
本作はそういった甘さを逆手にとったような部分があって、まぁ・・・86年の『サボテン・ブラザーズ』と似た部分は
あるのですが、本作は俳優たちが不満を持ちながらも、SFの世界を体験するという奇想天外さが大きな魅力です。

まぁ、正直言って、描かれる宇宙戦争自体はそこまで困難な内容ではなく、
何故か過去に『ギャラクシー・クエスト』の出演者たちが経験した操作で、クリアできる程度の内容だったということで、
唯一、敵となるクリーチャーが狙っている“オメガ13”がどういうものであるのか、キャストたちも分かっておらず、
敵の狙いがよく分からないという点はありますが、まぁ・・・他のSF映画と比べると、たいした困難ではない(笑)。

どうやら、数年前に本作の根強い人気を受けて、Amazonが本作の続編を製作する予定が
あったらしいのですが、いざ撮影ってときにアラン・リックマンが亡くなった時期と重なったようで、
やはりアラン・リックマン演じるドクター・ラザラスは重要なキャラクターなだけに、立ち消えになったようですね。

実際、日本ではそこまでではありませんが、本国アメリカでは未だに『スター・トレック』シリーズは
“トレッキー”と呼ばれる熱狂的なファンがいっぱいいて、ファンの集いが未だに行われています。
『スター・トレック』は1966年にテレビ放映がスタートしており、映画化も1979年の出来事でしたので、
スタッフもキャストも他界しているのが現実ですし、ファンも高齢化が進んでいる中で、若いファン層も一定層増え、
上手い具合に世代交代が進んで、『スター・トレック』は確実に生き続けているというのが凄いですね。

日本では、このようなSFファンは『スター・ウォーズ』シリーズはいますけど、
さすがにアメリカのような熱量は感じられませんし、日本にはアニメ文化という先進的な評価を
得ている文化がありますから、日本人には“トレッキー”の熱狂ぶりは今一つピンと来ないかもしれません。

それでも、本作を観ていると、宇宙戦争に関しては実はまるで素人なキャストたちが、
いざ本物の宇宙戦争にかり出されて、見よう見まねで宇宙艦を操り、敵と闘う姿に心を動かされ、
映画のクライマックスでは“トレッキー”ばりに彼らを応援して喜んでしまうくらい、力強い作品だと思います。

なかなか通常では無い視点から撮った映画ですので、
現代のカルト映画と言えば、それはそうかもしれませんが、決してマニア受けする映画というわけではないと思います。

そして、映画は“トレッキー”のようなコアなファンを皮肉っているわけではなく、
むしろ彼らを肯定的に描いていて、映画の後半の展開では“オメガ13”を奪取するのに、
彼らのマニア精神が無ければクリアできないというエピソードもあり、次第に観客含めて、
『ギャラクシー・クエスト』のキャストを取り巻く人々が、全員で応援してつながっていくようなスタイルなんですね。
(そういう意味では、映画のエンド・クレジットで拍手というのは、ごく自然な反応なのかもしれません)

映画はアメリカン・ジョークも結構多いし、『スター・トレック』への本国アメリカでの
熱狂的な人気を知ってこその中身でもあるので、その辺を理解できていた方が楽しめる作りになっているのは事実。

故にそういった映画が苦手な人は、そこまで楽しめない可能性はあります。
でも、あまり気張らずにユル〜く観る感覚でいれば、案外楽しめるかもしれません。
映画全体がニュートラルな雰囲気ですので、「笑う」というよりも「ニヤニヤする」タイプの映画です。

そう事前に思って観れば、また映画の印象は変わってくるかもしれません。

(上映時間102分)

私の採点★★★★★★★★★☆〜9点

監督 ディーン・パリソット
製作 マーク・ジョンソン
   チャールズ・ニューワース
原案 デビッド・ハワード
脚本 ロバード・ゴードン
   デビッド・ハワード
撮影 ジャージー・ジーリンスキー
音楽 デビッド・ニューマン
出演 ティム・アレン
   シガニー・ウィーバー
   アラン・リックマン
   トニー・シャローブ
   サム・ロックウェル
   ダリル・ミッチェル
   エンリコ・コラントーニ
   ジャスティン・ロング