プライド 栄光への絆(2004年アメリカ)
Friday Night Lights
なんって言うか...おそらく本作はスポーツ・ドキュメンタリー映画を目指したと思うんですよね。
まぁ実話の映画化とのことですし、決して悪い映画ではないとは思います。
しかしながら、この映画が今一つ突き抜けられなかったのは、結局はスポ根映画になってしまったことだろう。
かつてアメフトを題材にした映画はいっぱいありましたが、
やっぱりアメリカの人たちって、野球とバスケをアメフトには特別な思いがあるんですね。
単なるエンターテイメントを超えた、一つの文化とも言える風土として定着しているのでしょう。
それゆえ、小さな田舎町では閉塞的な空気が漂い、様々な問題があったというのが本作のテーマです。
僕はスポーツって、まず第一前提として、
何かしらの楽しみが無ければ取り組み続けられないものだろうと勝手に思っているのですが、
一方でギャンブル性があったり、勝負事だったりするわけですから、結果が付きまといます。
楽しさが条件であることは勿論のこと、一方で「勝たなければ面白くない」とも思っています。
だから難しいんですよね、勝ち負けに異常なまでに固執することが、
スポーツの本質かと問われると、答えに詰まってしまうというのが、正直なところです。
映画は閉塞的な環境にある田舎町では、
地元のアメフト・チームが優勝するか否かが大きな関心事であることから始まります。
なんか、これって一昔前の日本でも甲子園常連校なんかでは、あったのではないかと思える話し。
結果が伴わなければ、容赦なくコーチや監督をマスコミは批判し、
コーチや監督は家族を含めて脅迫行為に遭遇したり、過剰なまでのプレッシャーをかけられます。
選手にしても代々アメフト一家であることから、父親と比較されることへの劣等感や
DV(ドメスティック・バイオレンス)に悩まされたり、怪我により夢を諦めざるをえない悲劇など、
閉塞的な環境であるがゆえ生じ易い、行き過ぎた風潮が醸成された様子を描いているわけです。
但し、一つだけ擁護するのであれば、
DVは論外にしろ、若いときにしか掴むことのできない栄光を味わわせてやりたいとする、
周囲の思いだけは理解したい。それが時に、人生を狂わす原因にもなりうるのですが、
周囲の期待が高いということの背景には、こういう強い思いがあるということを見逃してはならないと思います。
まぁプロ・スポーツの監督なんかなら、誰もが一度は経験するであろう“壁”であって、
数多くの“目”に晒されながら仕事され、その仕事がすぐに細かなところまで評価されるせいか、
私たちには想像もつかない困難に毎日のようにぶつかっていく“壁”を描いているわけですね。
但し、映画としては様々な利害関係の中で
学生たちのチームを優勝させなければならない監督の苦悩を分析的に描きたいにも関わらず、
結果的にドキュメンタリー的手法とは相反するような、スポ根映画になったあたりはアンバランスだと思う。
確かに作り手の気持ちは分かるけど、選手の戦いにスポットライトを当てたいのか、
監督の苦悩を描きたいのか、これではよく分からない内容になってしまっているのです。
(僕はあくまで本作は監督を演じたビリー・ボブ・ソーントンが主役だと思ってるんだけどね・・・)
監督の苦悩を描きたいにしては、ラストでスポ根映画調の帰結にしてしまっているのが気になるし、
選手の戦いにスポットライトを当てたいにしては、ドキュメンタリー・タッチなのは冷め過ぎている。
スポ根映画なら本来的には、もっとフォーカスして主観的に撮った内容になるべきだと思うのですよね。
というわけで、映画の方向性がハッキリとしていないのはマイナス材料かな。
女性キャラクターがほとんど出てこない映画というのも珍しい気がします。
映画の序盤で、遊びたい盛りの選手たちがパーティーに繰り出すエピソードはありますが、
この手の映画で、恋愛のエピソードがメイン・ストーリーに絡んでこないのは、実に珍しいことです。
これはおそらく映画の軸のブレを心配してのことなのでしょうが、これは正解だったかもしれません。
欲張って、あれやこれやといろんなエピソードに手を出して、散漫にならずに済みましたね。
有名な俳優はあまり出演しておりませんが、
選手として出演している若手俳優たちは、試合のシーンも含めて、よく頑張っていると思いますね。
カメラ・スタッフの健闘もありますが、試合のシーンはほぼ申し分がありません。
臨場感はたっぷりで、衝突の激しさをよく表現できており、これは思わず感心してしまいましたね。
かつて数多くのアメフト映画がありましたが、本作はその中でも有数の撮影ではないでしょうか。
但し、俳優でもある監督のピーター・バーグの演出がまだまだですね。
最初の頃の監督作と比べれば、だいぶマシになりましたが、まだ突き抜けたものを感じません。
スポーツ・チームって、弱いチームを強くすることに面白味は当然あるんだけど、
本作のように強いチームを引き受けた人間が、如何に自分の個性を出しながら、
強いチームを維持させ、勝ち続けるかということもとっても難しくて、これは大きな“壁”だと思う。
僕も野球が好きで、幼い頃からプロ野球を追いかけていますが、
同様のプレッシャーを与えられながらもスポットライトが当たらず、悩みながら采配した指揮官は
かつて数多く存在したわけで、少しでも成績が落ちれば、容赦ない批判が浴びせられました。
世間はとても残酷なものです。本作を観て、主人公の監督の姿に複雑な思いを抱きましたね。
まぁこういうシリアスな側面を映したドキュメンタリーとしては評価に値しますが、
結果的に残ったのはスポ根映画という、何とも中途半端な出来が残念でならない作品です。。。
(上映時間117分)
私の採点★★★★★★☆☆☆☆〜6点
監督 ピーター・バーグ
製作 ブライアン・グレイザー
原作 H・G・ビッシンジャー
脚本 ピーター・バーグ
デビッド・アーロン・コーエン
撮影 トビアス・A・シュリッスラー
音楽 ブライアン・レイツェル
出演 ビリー・ボブ・ソーントン
デレク・ルーク
ジェイ・ヘルナンデス
ルーカス・ブラック
ギャレット・ヘドランド
リー・トンプソン・ヤング
リー・ジャクソン
ティム・マッグロウ