フライトプラン(2005年アメリカ)

Flightplan

まぁあくまでエンターテイメントとしての話しではありますが、
僕はこれはこれで及第点以上のはたらきをした、好感触な作品だと思いますね。

不慮の事故で夫を失ったカイルがベルリンからニューヨークへと向かう大型旅客機の中で、
うたた寝をしている最中に、隣で寝ていたはずの6歳の娘が姿を消し、
旅客機という密室内で探し回るも見当たらず、次第に精神的なバランスを欠いていき、
航空機内の安全を乱す搭乗客として、捜査官カーソンに拘束されてしまう様子を描いたサスペンス映画。

ドイツ出身の新鋭ロベルト・シュヴェンケのハリウッドでの初監督作なのですが、
シナリオはともかく、演出そのものとしては十分に良い仕事をしていると思いますね。
さすがにここまで大きな規模の映画で、ここまで一貫性を持った仕事をするのは、そう容易いことではない。

ジョディ・フォスターが久しぶりに大活躍している映画を観ましたけど、
さすがにまだまだ彼女の卓越した演技力は健在ですね。本作における彼女の貢献度は凄いですよ。

まぁ本作で彼女が演じたカイルは、突如として行方不明になった愛娘を探して、
つい取り乱してしまい、搭乗便の行き先まで変更させてしまうほどの騒ぎとなり、彼女は孤立してしまいます。

ここで本作の作り手の巧かったところは、カイルの精神状態を上手く利用したところですね。
必死に娘を探し回るカイルを不穏な存在として描くかのように、カイルの主張を虚言的に描きます。
それは夫の死をクロスオーヴァーさせながら描いているため、次第に娘の存在すら怪しくなっていきます。
この辺はひじょうに上手いですね。実にスムーズに物語の焦点をすり替えてしまいます。

それは実に根気強く、カイルが半ばヒステリーを起こしている姿を描き続けているからなのですよね。

精神的なバランスを欠き、ヒステリーを起こしている姿を描くことにより、
多くの観客は「彼女の証言も一概に信用できない・・・」という思いに傾いていきます。
本作のある意味での根気強さってのは、こういうところでキチッと活きていると思うんですよね。

この嘘か真(まこと)かという境界線を微妙に動かしながら、
上手く映画を構成できていたと思うんですよね。ロベルト・シュヴェンケは次の監督作に期待したいですね。

但し、彼の課題はここから。
本作は映画が後半に差し掛かり、クライマックスに突入する前までは良かったんだけれども、
騒動のカラクリ、そして登場人物の動きが激しくなってくるあたりから、映画は危うくなってしまう。
単刀直入に言ってしまえば、映画で描かれた物語のオチを付けるのが、下手としか言いようがないのです。
結論から言ってしまうと、完全にフライングと言っていいほど、騒動のカラクリを語り始めるのが早いですね。
もっとこの辺はジックリ描けるようになって、映画に安定感を持たせて欲しいですね。

こういう風にして終盤で映画の安定感が崩れてしまうというのは、二流・三流の仕事という感じですね。
(まぁ・・・この辺はキャスティングの問題も大きかったとは思いますが...)

そう、個人的にはカーソンを演じたピーター・サースガードの役に対するアプローチが間違っていたように思う。
勿論、これはこれで一つの考え方だとは思いますが、彼は“裏”の“裏”をかき過ぎましたね。
もうチョット単純なアプローチでも良かったと思います。色々と考えてしまうほど、彼の目線は怪しかった(笑)。

ただ、何度でも繰り返しますが、本作が中盤まで築いていたものは良かったと思います。
色々な要素を意図的に分散させながら紹介し、現実なのか虚言なのか分からなくなってしまう。
僕はここまで到達したことだけでも、十分に本作は評価に値するものだと思っています。

機長役を演じたショ−ン・ビーンは役得な感じでしたね。
どうやら彼は本作に出演する前までは、飛行機恐怖症だったらしいのですが、
本作で頼もしい機長を堂々と演じており、なんと現実に飛行機恐怖症を克服したらしいのです。
まぁその辺も含めて役得って感じで(笑)、本音を言えば、もっとメインストーリーに絡んで欲しかったですね。
予想してたよりも彼の出番が少なくって、やや拍子抜けって感じで、不発だった印象が拭えないですね。

随分とリッチな旅客機というイメージがありましたけど、
バー・ラウンジが設営されているというのには驚きましたねぇ。実際にあんな旅客機があるんでしょうか?

僕も生まれてから一度だけ、国際線にエコノミーで搭乗しましたが、
ウロチョロ客室内を歩き回ったわけではないとは言え、あそこまで豪華なアメニティは無かったですね。
チョット揺れたりしたら、商品であるお酒のほとんどが破損して価値を失ってしまう気がしましたね...。

とは言え、あそこまで精巧に再現したセットは立派ですね。
劇中の大半が客室内でのシーンになりますから、客室内の造詣はかなり重要な位置づけであり、
この辺をサボらずに、しっかりと作り込んだ姿勢についても、もっと評価してあげても良いと思いますね。

個人的にはロベルト・シュヴェンケの次の監督作に期待したいですね。

(上映時間97分)

私の採点★★★★★★★★☆☆〜8点

監督 ロベルト・シュヴェンケ
製作 ブライアン・グレイザー
脚本 ピーター・A・ダウリング
    ビリー・レイ
編集 トム・ノーブル
音楽 ジェームズ・ホーナー
出演 ジョディ・フォスター
    ピーター・サースガード
    ショーン・ビーン
    マーリーン・ローストン
    エリカ・クリステンセン
    ケイト・ビーハン
    グレタ・スカッキ