危険な動物たち(1996年アメリカ)

Fierce Creatures

88年に製作され、予想外の高評価を得た『ワンダとダイヤと優しい奴ら』のキャストが
再び結集して製作された、赤字に悩むイギリスの動物園を舞台にしたコメディ映画。

まぁ僕は『ワンダとダイヤと優しい奴ら』がとっても大好きで何度も観ているのですが、
正直、本作は評判が芳しくなかったようで、観る前の段階では不安でした。

ただまぁ・・・ある程度、覚悟して観たせいか、予想してたよりは面白かったかなぁ。
確かに『ワンダとダイヤと優しい奴ら』ほど映画の出来そのものが良いとは思わないし、
独特なスピード感やスペクタクル性には満ちていないし、テンションの高さも感じられない。
但し、別に映画としては腐っていないと思うし、相変わらずモンティ・パイソン@ャの毒々しさが
わずかに残っていて、思わずニヤリとさせられるシーンも多々ありました。

今回もジョン・クリーズが製作・脚本・出演の三役をこなし、
共演のケビン・クライン、ジェイミー・リー・カーチス、マイケル・ペリンは『ワンダとダイヤと優しい奴ら』と同様。

但し、キャスト・スタッフが勢揃いしていても、やはりパワー不足は否めない。
特にケビン・クラインは今回も一人二役で頑張ってはいますが、前作の怪演と比べれば、
インパクトとしてはかなり落ちてしまっていると感じますね。それはマイケル・ペリンにしても同様。

各々ギャグで映画のテンションを半ば無理矢理、上げようとしているみたいで、
今回は出演者たちのアクティヴな動きから、見い出される面白さに欠ける。
ジェィミー・リー・カーチスがお色気作戦で孤軍奮闘していますが、もう彼女だけではパンチに欠けますね。
そういう意味ではジョン・クリーズにも頑張って欲しかったですねぇ。

まぁ・・・映画の後半にある、宿泊施設の部屋のクローゼットに閉じ込められて、
暑さのあまりズボンを脱いで汗だくになって、ハァハァ言いながら出てくるシーンには笑ったけれど。。。

相変わらずシュールさを忘れてはいないギャグの数々で、この発想力には頭が下がります。
まぁモンティ・パイソン≠フスケッチほどシュールではありませんが、それでも最近の映画としては珍しいかな。

ただこれだけシュールで楽しめるギャグはあるのに、
次から次へとテンポ良く、各々のギャグを出せないのは作り手の力量の差かな。
キャストだけの力ではパワー不足なわけですから、そこからは作り手の力で引き上げないといけませんねぇ。
まぁフレッド・スケピシは92年に前代未聞のトンチンカン映画『ミスター・ベースボール』を撮った人ですから・・・。

映画の前半で動物園園長のロロ・リーが職員たちに、
本社から経営体質改善を命じられたことを説明するために、仰々しい紙芝居を使ったり、
アメリカ資本に対する過剰なまでの対抗意識をむき出しにする姿など、
かつて『空飛ぶモンティ・パイソン』を観ていた人には、思わずニヤリとさせられるシーンがあります。

そのロロ・リーが思わず映画のラストで、
ジェイミー・リー・カーチス演じるウィラのことを「ワンダ」と口走ってしまうのにもニヤリとさせられますが、
個人的には『ワンダとダイヤの優しい奴ら』の続編を作って欲しかったなぁ〜。
ジョン・クリーズなら上手いこと続編もやってのけたと思えるだけに、チョット勿体ない。

まぁ劇場公開時は『空飛ぶモンティ・パイソン』や『ワンダとダイヤと優しい奴ら』などのノリから、
畳みかけるような展開のコメディ映画を期待した観客が多かったようで酷評されていましたが、
さすがに酷評されるほどの駄作では、僕はないと思いますね。

この映画では動物園経営の危機を救うために、野蛮で危険な動物たちのみを残すという案が
実行されていましたが、これを観てチョット思うことがありました。

最近、北海道の旭川市にある旭山動物園が全国的な人気を呼んで話題となっていますが、
元々は来場者数の低迷に悩み、閉園までもが噂されていた動物園でした。
確かに動物園というアミューズメント(...と言ったら怒られるかもしれませんが...)は
戦後間もない頃のような需要が無くなり、半ばマンネリ化を招いていたのは否定できないと思います。

僕は元々、水族館が好きで魚の生態なんかを、特に何も考えずにボーッと見ているだけで
飽きない人間だったのですが(笑)、水族館が来場者へと見せ方の工夫はいち早く行なっていたと思います。
360°を覆い尽くす水槽のトンネルとか、まぁ言ってみればイルカのショーもそれに該当しますがね。

僕が水族館が好きだった根底には、そういった魚の生態をジックリ観察できたことにあると思うんです。
まぁ中にはショーにしてしまうことに否定的な人もいますが、知能の高さを証明するという役割もあったわけで、
ただ漫然と檻の中に閉じ込められた動物を見るという発想とは、大きく異なると思ったんですよね。

そこで旭山動物園が取り入れたのは、「行動展示」と呼ばれる形態で
中には動物たちとの直接的な触れ合いも織り交ぜ、動物たちのありのままの姿を見せるということに
価値があったと思うんですよね。それはホントにチョットしたアイデアの転換だったと思うんです。
まぁ世の中、アイデア勝負かと言われれば、僕は一概にそうとも言い切れない気がしてるんですが、
それでも何一つ工夫の感じられない、何一つ管理者たちの熱意の感じられないものを見せられるよりも、
ずっと進歩的かつ生産的なスタイルだと思うんですよね。

必ず成功の陰には、何かしらの努力と知恵があるものだ。

(上映時間93分)

私の採点★★★★★★★☆☆☆〜7点

監督 フレッド・スケピシ
    ロバート・ヤング
製作 マイケル・シャンバーグ
    ジョン・クリーズ
脚本 ジョン・クリーズ
    イアイン・ジョンストン
撮影 エイドリアン・ビドル
    イアン・ベーカー
音楽 ジェリー・ゴールドスミス
出演 ジョン・クリーズ
    ジェイミー・リー・カーチス
    ケビン・クライン
    マイケル・ペリン
    キャリー・ローウェル