初体験/リッジモント・ハイ(1982年アメリカ)

Fast Times At Ridgemont High

思春期を迎え、性に対する興味津々の高校生たちが織り成す青春の日々を、
後に映画監督としてデビューするキャメロン・クロウが群像劇仕立てで描いたコメディ映画。

当時、まだ音楽ライターとして執筆活動に勤しんでいたキャメロン・クロウが
本格的にシナリオ・ライターとしてデビューした作品でもあり、実際にリッジモント・ハイスクールに
潜入取材して、実在する高校生たちの青春の日常をドキュメントしたことが発端となっているらしい。

確かにこれは人目をひく題材の映画であり、
青春映画としてのセオリーを踏んだ作品とは言えますが、映画の出来としては驚く点はほとんど無い。

むしろ改善点が多く散見されてしまう映画であり、
野球場で年上の男性と初体験を済ませて、すっかり性に対して積極的になってしまった、
ジェニファー・ジェイソン・リー演じるステイシーと彼女に憧れる晩生(おくて)な男の子マークのロマンスも
映画の終盤ですっかり放棄してしまい、テロップだけで解決させるというのは、凄く勿体ない。

さすがにやたらとシャツを脱ぎたがるブッ飛んだ高校生を演じたショーン・ペンの芝居は光るが、
それでも彼の部屋に乗り込んでくる「アメリカ史」の教師との8時間に及ぶ補習授業のエピソードは
ほとんど割愛されてしまっており、せっかく面白くできる要素があったのに、これも勿体ないことをしたと思う。

それだけでなく、エイミー・ヘッカリングの演出も意外にマイルドなのが気になりますね。
キャメロン・クロウの趣味もあって、音楽はガンガン流れますが、賑やかなのは音楽だけ。
騒がしい青春時代を描いた映画なはずなのに、全体的に大人し過ぎるのが気になって仕方がありません。

やはりこの映画でエイミー・ヘッカリングが見せた最高の演出と言えば、
本作劇場公開当時から大きな話題となっていたという、フィービー・ケイツがビキニを外して、
突如としてトップレスになるシーンだという説は、あながち間違っていないのかもしれません(笑)。

残念ながらキャメロン・クロウのシナリオにしても、
まだこの段階では強く秀でた魅力を感じさせるには至らず、いろんなエピソードの断片を拾い集めて、
それを無秩序に並べただけという印象が強く、もっといろんなことが描けたと思うし、
何か一つでもいいから、訴求するファクターがあった方が映画がもっと魅力的になったと思いますね。

一見すると、ステイシーにしてもいくら性に対して積極的とは言え、
好奇心から妊娠にまで至ってしまうのですから、実はシリアスな要素を内包しています。
その相手が軽薄な男で、渋々、堕胎に同意し、ステイシーも「ありがと」なんて言ってしまうものですから、
確かに日本でもよくある話しではあるけど、この軽さと責任感の希薄さに呆気にとられてしまいますね。
(おそらくこれはキャメロン・クロウが取材した過程で、実際に起きたことなのでしょうね・・・)

やっぱり教育って大事なんですねぇ〜。
ある意味で、大きな教育にもなっているリンダが提案した復讐が印象的なのですが、
現実には人の一生を左右する可能性のある出来事なだけに、これだけでは済まないでしょうね。

そういう意味では、POPな青春映画で“お●カ映画”の要素もあるにはあるのですが、
強烈な皮肉の利いた、ティーンエイジャーの痛々しい側面も避けずに描いた作品と言えますね。
アメリカではティーンの堕胎問題が深刻化したからこそ、性教育の重要性が認識されたわけですからね。

しかし、ショーン・ペンもステイシーの兄貴を演じたジャッジ・ラインホルドも
既に20歳を超えていたのに、正々堂々とティーンの役を演じ切れるなんて素晴らしい映画ですね(笑)。

劇場公開当時はどうやらフィービー・ケイツのトップレスの話題ばかりが先行していたらしいのですが(笑)、
彼女よりジェニファー・ジェイソン・リーの方が1歳年上であるという事実にも驚かされちゃいますね。
(ちなみにジェニファー・ジェイソン・リーは早生まれなので、学年にすると2つ年上になる)

そのステイシーの兄貴を演じたジャッジ・ラインホルドの妄想シーンで、
フィービー・ケイツがトップレスになるのですが、その妄想のオチにトンデモないオチが付くのにも要注目。
男性としては実に恥ずかしいオチではあるのですが、リンダの行動も確かに軽率な部分はあるし、
ステイシーの兄貴は兄貴で、「そんなあからさまに行動に移すなよ(笑)」とツッコミたくなる始末。
(まぁ・・・その欲望を抑えられない感じが、確かにティーンらしいわけですが...)

但し、自分たちの世代あたりから、そういった問題が多く報道されるようになったように記憶しますが、
猟奇的な事件や様々な社会問題を10代の頃から抱えるようになってしまったためか、
今は本作で描かれたような単純な青春というわけではないのかもしれませんね。
ひょっとすると、これは日本だけではなく、アメリカも同じようなジレンマに陥っているのかもしれませんね。

今やカルト的な人気を誇る80年代を代表する青春映画の一本ではありますが、
前述した通り、映画の出来として特筆に値するものとは言い難く、本作以上の作品は他にいっぱいあります。

個人的には、全体的に軽過ぎる作風が好きになれず、
駆け足で映画を終わらせたような終盤の展開も、イマイチ好きになれませんでしたね。
この辺がキャメロン・クロウが自分で監督した方が、良い出来になっただろうと思えてならない点ですね。

まぁ・・・もう...こういう映画はウケないでしょうから、作り直すこともないでしょうけどね。。。

(上映時間89分)

私の採点★★★★★☆☆☆☆☆〜5点

監督 エイミー・ヘッカリング
製作 アート・リンソン
    アービング・エイゾフ
原案 キャメロン・クロウ
脚本 キャメロン・クロウ
撮影 マシュー・F・レオネッティ
音楽 アービング・エイゾフ
出演 フィービー・ケイツ
    ショーン・ペン
    ジェニファー・ジェイソン・リー
    ジャッジ・ラインホルド
    ロバート・ロマナス
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